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私は白猫である。  作者: 堀河竜
私は観光客である
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空を飛ぶ




夜が明けて朝がやってきました。


アラームが鳴って想太朗くんが目覚めると、彼はシャワーを浴びにお風呂場に行きました。

シャワーを浴び終えると、歯を磨き、涼しげな服に着替えて、身支度を済ませます。


ケージの中にいる私にキャットフードを食べさせた後、その私と荷物を抱え、何やら楽しそうな表情でホテルの部屋を出ていきました。


これから想太朗くん達は、また一日ハワイ旅行を楽しんでくるのでしょう。

想太朗くんと一緒に観光できるなんて羨ましいです。


そう思いながら、私はベッドの下から這い出ました。

ベッドの下は埃っぽかったので軽く咳き込みます。


想太朗くんとの時間は過ごせなくなってしまいましたが、誰もいないホテルの一室を使えるようになりました。

これで心置きなく妖術を練習できるでしょう。


しかし私は、想太朗くんが身代わりの私にキャットフードを食べさせていたのを見て、はっと気付く事がありました。

私はそのキャットフードを食べれない訳ですから、朝ごはんも昼ごはんも抜きになってしまうのです。


その事実に気付いた時、私は頭を抱えました。

月見里神社で働いて得たお給料はありますが、食料を買いに行く事は避けたかった事です。


しかし、このままだと朝から晩までごはん抜きになってしまうので、私はお昼頃に一度買い物に行く事にしました。


昨日もあまり眠れなかったので妖力を回復しきれていませんし、食事を摂らない訳にはいきません。


昨日仕入れておけば行く必要がなかったのですが、泣く泣く行く事になってしまいました。


それはさておき、早速妖術の練習を始めましょう。


最初は空を飛ぶ術の前に、物を自由に浮かせる術から始める事にします。


空を飛ぶ術は物を浮遊させる術の応用なので、この術を練習すれば空を飛べるようになるのです。


だから何か軽いものから浮遊させる練習をしましょう。

ラジコンのヘリコプターを操縦するよりも上手く操れるようになってから、段々と重いものを浮遊させていきましょう。


まずは……そうですね、テレビのリモコンを浮遊させましょう。

急いで習得するには軽すぎるものかもしれませんが、まずは制御できるようになろうと思い、自分の妖力を行使し始めました。


テレビのリモコンは比較的簡単に浮かばせられました。

制御がまだ安定していませんが、浴室や玄関などに向かわせて部屋中を回らせたり、自由にリモコンを飛ばせました。


ここから更に制御を安定させ、リモコンから時計、鞄……と、どんどんランクアップしていきます。


制御が安定してからランクを上げているので、思っていたより順調に進んでいきます。


しかし、思い切って難易度が高そうな家具などを浮かばせようとすると、やはり重たくて思うように浮遊できません。


浮かばせる事すらやっとの事なので、今回の難所はこれからのようです。

時間は掛かりそうですが、急いで習得しましょう。


明日のジャスティンさんの告白までに習得する事を目標として、慌ただしく練習していきました。




----------------------------------------------------------




お昼になって、食事の時間がやってきました。

私が失敗して、ホテルの部屋から出なくてはいけなくなった時間です。


部屋から出た私は、歩きながら食べられるもの買い、時間を短縮するべく歩きながら食べ物を食べていました。


ホットドッグを買ったのですが、ボリュームは満点で、朝ごはんを食べれなかった私には満足のいく食事です。


急いでいるので煩わしい時間のはずでしたが、美味しいホットドッグを食べれて至福の時でした。


そうしてホットドッグを食べながらホテルに帰ってきた私でしたが、ここである試みをしようと考えていました。

今まで物を浮遊させる術を練習してきたので、どれだけ私が空を飛べるようになったのか、確かめてみようと思うのです。


方法は昨日行った事と同じく、5階の想太朗くんの部屋へと上るというものです。

勿論、不可視化の術も使うので、昼間だからといって人に目撃される事もないでしょう。

陣も砂浜の上に書くので安全です。


何も心配する事はないので、テストだと思って空を飛ぶ術を使う事にしましょう。


昨日と同じように人間から猫の姿に戻り、木の枝で陣を書くと、妖力を行使し始めました。

自分自身を浮かばせ始め、空を飛んでいきます。


あまり体重の事は考えたくありませんが、私は難題の家具に近い重さでした。

小さな棚よりは重く、テレビよりは軽いです。


ですから、やはり自分には、まだ空を飛ぶ術は難しいものでした。

妖力の行使に集中していないと、あっという間に失敗して落ちてしまいそうです。


それでも私はゆっくりと高度を上げていきました。

体勢を安定させながら、二階、三階、と上昇していきます。


昨夜は四階で体勢を崩して落下してしまったのですが、その四階も通り越せました。

あとは一階分上るだけです。


しかし、五階の高さに達して部屋のベランダにある手すりに手を伸ばした時、私は体勢を崩して前に倒れてしまいました。


歩いていて転んだ時みたいに、前方に倒れてます。

それでも何とかベランダの手すりを掴む事はできました。


倒れた拍子でお腹をホテルの壁にぶつけ、じんじんと痛みますが、どうという事はありません。

後は妖力と腕の力で上り切り、どうにか想太朗くんの部屋に辿り着く事ができました。


その時、私は大きな達成感に包まれました。


例えるならば、登頂の難しい高山に挑み、見事登り切った時のような感動があります。

実際にはそんな経験はないのですが、感覚では似たような達成感があったのです。


その達成感を握り締め、私は部屋の中に戻っていきました。


更に術を安定するべく練習を再開したのでした。





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