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ホラー

わたしを忘れないで

作者: 金銅才狸
掲載日:2026/08/16


 恋人とつきあう前に1つ約束をした。


『わたしを忘れないで』

 恋人は、その約束を覚えていない。




 ある週末の事、

 家に帰ると玄関に恋人の靴があった。


「ハハハハハハ」

 と


 わたしの家の中から笑い声が聞こえてきた

 わたしは一人暮らし。

 でも……恋人には合鍵を渡していた。

 もしかしたら……

 恋人が連絡無しで来ているのだろうか?


(来る前に連絡くらいすれば良いのに)


 そう思ったけれども、


(まぁいいや)

「お〜い。恋人様が帰って来たぞ〜」

 と……家の中にいる恋人にむかって声をかけた。

 が……


(む、返事が無い)


 返事をしない恋人。

 わたしは少しムッとして自分の家の中へ

 すると……

 部屋のリビングを見てギョッとした。

 リビングの床。

 大量の赤い血だまりがあったから。


 リビングに恋人が大量の血を流して倒れていた。


「ッ!!!」

 低い悲鳴を出して恋人に駆け寄るわたし

 

 いつもは温かい恋人の身体。

 それが……冷たい。

 恋人は、わたしの家で死んでいた。

 大量の血を流して死んでいた。


 わたしはパニックに……

 それでも救急車を呼んだ。様だ。

 自分でこの辺の記憶がだいぶ曖昧。

 家に帰ってからの記憶があまり良く思い出せないです。

 ショックが大きすぎたのもしれない。

 記憶がひどく曖昧。

 


 駆けつけてきた救急車と警察。

 恋人を病院へ運んでいった。

 警察からは事情を聞かれたけれども、わたしにも詳しい事は何もわからなかった。


 恋人はそのまま亡くなった。

 なので警察にありのままの事以外、何も答えることが出来なくて……

 一応わたしも恋人殺害の容疑者として疑われてしまった様だ。

 かなりしつこくイロイロ聞かれた。

 でも……わたしもパニックで何も答えない


 警察から取り調べを受けたけれども

 でもそれは……何でもなかった。

 それよりもイキナリいなくなった恋人。

 そちらの方が、わたしの心に痛みを与えたから。




 警察から解放されて家に帰る。

 家の中には恋人が流した大量の血で汚れた部屋がある。


 わたしは、その部屋を一人で掃除した。

 亡くなってしまった恋人が生きていた痕跡

 それを自分の手で拭き取る。

 白い雑巾が彼氏の乾いた血で染まった。


 業者を入れて掃除を頼むべきだったのかも知れない。

 しかし……

 わたしにはそれが出来なかった。

 どうしても他人の手で、恋人がこの世にいた痕跡を消されるのが嫌だ。

 わたしの心の痛みが他人の手で無かった事にされるのが嫌だ。


 だから……

 わたしは自分一人で血を拭き取る。

 ゴシゴシ雑巾で、リビングに広がった彼氏の流した血を拭き取る。

 雑巾を絞ると雑巾から血がながれる。

 恋人の身体の中から流れた血が……

 雑巾から流れる。

 タラタラと……


『わたしの事を忘れないで』


 死んだ彼氏の血を吸った雑巾を絞ると

 そんな音が聞こえた。




 

 その後、わたしの恋人を殺害した犯人

 その容疑者が何人か捕まった。


 警察の調べによると、わたしの恋人は、わたしが思っていた以上に悪い人間だった。

 麻薬、金銭トラブル、売春斡旋。

 わたしの恋人は沢山の人を泣かせていたらしいです。


 わたしの恋人あまりにも余罪が多すぎて、多方面から怨みをかっていたらしい。

 誰に殺されたか、わからないそうな。


 普通犯罪の容疑者を探すのが難しいから犯人がわからない。

 だけども、わたしの恋人は


「容疑者が多すぎて誰が殺したかわからない。」


 警察はそう言った。

 そんな状況だと警察から聞かされた。

 その時は頭がどうにかなりそうだった。


 恋人が、そんな人だとは思わなかった。

 わたしは恋人を愛していた。

 だから盲目になってイロイロ見えなくなっていたのかも知れない。

 それにしても、あんまりにも、わたしは馬鹿すぎた。


 恋は盲目。

 わたしも故意に盲目的に普段は絶対にしない、突拍子もない行動を、とっていたのかもしれない。


 殺人犯の動機は、わたしには理解出来ると同時に、とうてい理解不能の気持ち悪いモノ。

 なのでどうでも良かった。


(人を殺す異常者の動機なんて、わざわざ知る意味がない。

 異常者の考えなんて知りたくも無いし。

 知らないほうが良い。

 異常者なんて、どうでもいい)


 どうでも良くなかったのは、わたしの恋人が死んでしまった事。

 わたしのかわりに殺されてしまった様だ。

 





 わたしは相変わらず部屋を掃除し続ける。

 わたしの事を心配して駆けつけてきた両親

 彼等には、


「 掃除は業者に頼みなさい 」


 と言われたが知らない。

 わたしが自分でやる。

 他人の手で触られたくない。

 彼氏の痕跡は自分で後始末する。




 恋人の血を拭き取った雑巾。

 雑巾は真っ赤な血で染まった。

 彼氏の血を吸った、その雑巾は時間がたつと赤黒い雑巾に変わった。


 赤黒い雑巾を水に濡らすと、雑巾からたれる水は、薄い血の様な色に変わる。

 その濡れた雑巾を絞ると薄い血のような液体が雑巾から流れると共に……


『わたしの事を忘れないで』

 と、毎回雑巾を絞るたびに音がする。

 

 その音は、何処かで聞き覚えがある声。


「そうだ。まるで死んでしまったわたしの恋人と話している声の様」


 わたしはその事に気がついて、深く満足した。

 その時わたしには恐怖心は無かった。

 でも……


 



「 ねぇ。」


 わたしの事を心配して、最近ちょくちょく私の家へやってくる母親が、わたしにたずねる。


「なぁに?」

「 どうしてアンタ、雑巾を絞るたびに『私の事を忘れないで』とか言っているの? 」


 心配そうで、それでいて不審な顔をした母親から、そんな不思議な事を言われた。


 恋人の血を吸った雑巾を絞る。

 そのたびに聞こえてきた、

 『わたしを忘れないで』

 と言う、あの音。


( そうか。 あの音は。 わたしが呟いていた声だったのか…… なぁんだ。)


 腑に落ちた。





 恋人を殺した犯人は、いまだもって見つからない。


「数多い容疑者の幾人かは姿を消して見つかりすらしない」

 と警察は言う。


「容疑者の誰かが犯人だろうけども、誰が犯人か容疑者が多すぎて絞り込めない」

 警察も、お手上げだと嘆いていた。



 恋人を殺した犯人……この調子なら

 この先暫くは見つかることも無いだろう。



 でもコレで……恋人に浮気されて捨てられそうになっていたわたし。


 恋人に、ふられるくらいなら死んでやると思っていたわたし。


 わたしの元に恋人は帰ってきた。

 わたしが恋人の事を忘れない限り……

 コレで恋人は永遠にわたしのものだ


 『わたしの事を忘れないで』


 今でも……

 乾いてリビングに染み込んだ恋人の血を拭き取った雑巾。

 アレを絞るたびに、そんな音が聞こえる。

 わたしの口から……

 

 あの『音』聞こえて来る間は、口ずさんでいる間は……わたしは恋人の事をきっと、忘れない。

 恋人は、わたしの恋人でいてくれる。

 生きていようが死んでいようが関係無い。


 だからわたしは今日も彼氏の血を吸った雑巾を使用し口ずさむ。


『わたしの事を忘れないで。浮気しないで、私を捨てないで。わたしだけを愛して。わたしだけのものでいて』


「どんな時でも……わたしを忘れないで」


 たったそれだけの事を守ってくれれば、恋人がどんなに悪い人でも許せたのに……


 どうして、そんな簡単な事も守れない恋人、パートナーを裏切る恋人が……この世には多いのだろう?


 パートナーに裏切られたら、裏切り者を決してゆるさない。

 躊躇なく刺しに行く……

 男女を問わず……そんなわたしみたいな人もいる。

 その事を貴方にも知っていて欲しい。


『わたしの事を忘れないで』



 美形異性を見ると

 つい心がトキメク貴方。


 貴方、浮気しますか?

 好みの美形に言い寄られたら浮気しますか???


 恋人から刺されたく無いのなら

 恋人から嫌われたくないのなら……


 何よりも……

 恋人の心を傷つけたく無いのなら……


 『わたしの事を忘れないで

  出来れば貴方が浮気などせず

  貴方の恋人が幸せでありますように

  貴方が恋人に刺されたりしないように

  けっして……

  恋人に裏切られて恋人を刺し殺した


  わたしの事を忘れないで』



  未来で貴方に浮気されて

  貴方を刺した

  貴方の恋人より


 『行動次第で未来は変えられるよ

  だから……

  わたしの事を忘れないで』



  浮気者の貴方へ愛を込めて

     未来で貴方に浮気された恋人より



おもしろかったら下の星ポイント入れてください。お願いします \(^o^)/

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