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アルスレア  作者: ゆきつき
第四章 ラグノアの森

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ー7ー 森の中の村


三人は木々をかき分けるように森を抜け、先ほど感知された魔力反応の方角へと一気に駆け抜けた。

湿った土を踏みしめる足音と、枝葉を払う音だけが続く。


やがて、視界が開けた。


「……あ」


思わず、ロイが足を止める。


その先にあったのは、人気のない、寂れた村だった。

朽ちかけた家屋が点在し、倒れた柵や砕けた屋根瓦が、無言のまま時間の経過を物語っている。


「こんな森の中に……村?」


ロイは周囲を見回し、ぽつりと呟いた。


家々の外壁には、爪で引き裂かれたような傷が残り、地面には何かを引きずった痕跡もある。

ところどころに、魔物に荒らされた形跡がはっきりと見て取れた。


レイドは短く息を吐き、淡々と告げる。


「この村は、三ヶ月ほど前までは人が住んでいた」


一拍、間を置く。


「だが、魔物に襲われて……村民は全員、殺された」


「……え?」


ロイの喉から、掠れた声が漏れた。


脳裏に、あの日の光景がよぎる。

魔物の咆哮、悲鳴、引き裂かれた肩の痛み――自分の村が襲われた時の記憶。


もし、あの時。

アルスレアが目覚めなかったら……


ウガーノも、この村のように、何も残らず消えていたかもしれない。


背中を冷たい汗が伝った。


「……」


ロイは何も言わず、かつて傷を負った肩に無意識のうちに手を添えていた。

それを横目で捉えたレイドは、それ以上何も言わず、話題を切り替えた。


「サグロス。魔力反応はあるか?」


「んー……」


サグロスは軽く目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。


「この村にも、近くにもないな。さっきの反応はもう消えてる」


「……そうか」


レイドは顎に手を当て、村を見渡した。


「家屋の中に隠れている可能性もある。手分けして探すか」


「じゃ、俺あっち見てくるわー」


そう言い残し、サグロスは奥の家屋群へ向かってさっさと歩き出す。

二人に背を向けたまま、気楽そうに手をひらひらと振っていた。


「全く、あいつはすぐ好き勝手に行動する……」

レイドは眉間を押さえ、短く息を吐いた。


そしてすぐに表情を整え、ロイへ視線を向ける。


「魔物がいる可能性もある。お前は俺と来い」


「わっ、わかりました!」


二人は並んで村の中央へと足を進める。

足音だけが不気味なほど大きく響いた。


しばらく歩いたところで、ロイの胸に小さな疑問が浮かんだ。


「あの、レイド……さん?」


「なんだ?」


「お二人は、どうしてラグノアの森にいるんですか?」


一瞬、レイドの足が止まる。


「……依頼人からな。亡くなった祖父の置き時計を探してほしいと頼まれている」


「依頼人? お仕事、ですか?」


「ああ。いわゆる便利屋だ。俺たちは」


「そうなんですか……」


ロイは一度頷き――はっとしてレイドを見た。


「あっ、すみません! 俺、お仕事の邪魔しちゃってますよね?」


「気に病むことはない」


レイドは淡々と返す。


「俺たちの目的地も、この村だ。赤子を探しながら、置き時計も探す」


「……ありがとうございます」


ロイは、ほっとしたように小さく息を吐いた。


――


一方、サグロスは村外れの家屋に足を踏み入れていた。


「……」


崩れた扉を跨ぎ、静かに室内を見回す。


(魔物に荒らされた形跡は多々あるが……)


床や壁に視線を走らせ、眉をひそめる。


(襲われたというには、血痕が全然残ってないな……きれいすぎる)


棚も、机も、倒れてはいるが、不自然なほどに痕跡が少ない。


(全員殺されたというより……忽然といなくなったって方が、しっくり来るな)


棚に並ぶ瓶に手を伸ばす。


(どの家も、似たような薬ばかりだな)


風邪薬、胃腸薬、滋養薬。

どれも特別なものではなく、ごく一般的なものばかり。


一つの容器を手に取り、蓋を開ける。


「中身はなし……か」


軽く匂いを嗅ぐ。


(……決定的な証拠はなし。まあ、そう簡単に残すわけないか)


小さく肩をすくめた、その時――


カタン。


「……ん?」


どこかで、乾いた音がした。


魔力を探る。

だが、反応はない。


(気のせい……か?)


カタン。


今度は、はっきりと。


(……何かいるな)


サグロスは足音を殺し、音の発生源へと近づく。


隅に置かれた籠。

その中で、布がわずかにもぞもぞと動いていた。


(なんだ? 赤ん坊……か?)


だが、泣き声はしない。

その代わり――


カタン。


布の下で、乾いた音が再びした。


(……硬いものが、触れ合ったような音だ)


サグロスは息を殺し、静かに手を伸ばす。

そして――

布を、勢いよくめくった。


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