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アルスレア  作者: ゆきつき
第三章 蒼海の試練

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33/39

ー18ー悔恨の涯

――なにかが、頬をつついた。

途切れていた意識が、微かな刺激に引き戻される。


「……ぴゅ?」


かすかな声。続いて、小さな重みが胸にのしかかり、ざらりとした舌が顎をなめた。


「……ん……?」


ぼやけた視界がゆっくりと焦点を結び、ピンク色の丸い影が揺れる。


「……ミーオ……?」


「ぴゅお!」


ミーオは嬉しそうに跳ね上がり、救難艇の中をくるりと舞った。その拍動のような羽ばたきに合わせて、水面を揺らした柔らかな光が窓から差し込む。


夜が明けている――闇と恐怖の圧が、ふっと消えたように感じられた。


ロイはしばらく床に転がったまま、空虚な天井を見つめていた。


静かな波音。揺れる光。

心臓の鼓動だけが、自分が生きていることを確かに知らせていた。


どれほど時間が経ったのかはわからない。

だが、あの怒涛の日の出来事だけは、ゆっくりと脳裏に戻ってくる。


メデュラーゲ。

アルスレアの武器化。

エラストケロナ。

人造種。

体の奥まで震えた、あの鈍い爆発音。

そして――救難艇を呑み込んだ波。


ロイは息を呑み、腕で顔を覆った。


「……マルクさん、ティオさん、フェルドさん、オルフさん……ミネア……」


喉の奥が熱くなる。


「……くそっ……くそ……!」


声が震えた。

胸が痛いほど締めつけられ、うまく息が吸えない。


ようやく戦えたと思った。

初めて、ほんの少しでも皆の隣に立てた気がした。

錯覚でもよかった。そう思いたかった。


だけど、現実は――自分は最後まで、誰かに庇われるだけの存在だった。


守られて、逃がされて、何もできない足手まといで。

皆が命を張って戦っているとき、自分は何もできなかった。


顔のすぐそばに、ミーオが心配そうに降りてくる。


「……ごめん。ミーオ……ちょっと……一人にさせて……」


ロイは目を閉じた。

瞼の裏には、最後に見た皆の姿だけが焼きついて離れない。


――あのあと、彼らがどうなったのか。


考えようとするたび、最悪の情景ばかりが勝手に浮かんでしまう。


胸の奥のどこかが、ゆっくりと裂けていくような感覚がした――


静かな海を、救難艇が規則的な揺れを刻みながら進んでいた。どこまでも青く、ただ波紋だけが広がっていく水面の上に。


ロイはただ一人、果てのない海に取り残されていた――


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