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アルスレア  作者: ゆきつき
第三章 蒼海の試練

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ー16ー魔導砲発射

ミネアの指示を受け、仲間たちはそれぞれの役目へと動きを切り替えた。


迫る触手を槍で断ち切りながら、フェルドは甲板を駆け抜けた。

その勢いのまま船内への階段を跳び降りる。


背後では、ミネアの魔法が海水を巻き上げ、鋭い風刃となって触手を切り裂いた。


触手が裂けた反動で海水が弾け、冷たい飛沫がマルクとティオに降り注ぐ。


二人はそれを意に介さず、白と赤の軌跡を描いて甲板を駆け回った。


オルフは盾を解き、戦斧を構えた。


守りから攻めへ――その姿が雄弁にそれを物語っていた。

豪快に振り回した斧が、触手をまとめて薙ぎ払う。


戦場は一瞬たりとも静まらない。

潮と魔力の匂いが混ざり、光が散っては消えていった。


ーー


フェルドが船橋に飛び込むと、素早く魔導砲の準備に取り掛かった。


水晶パネルが揺れる光を放ち、文字が浮かび上がる。


《魔力充填:92%》


「……よし」


その横で、魔力感知機の水晶盤が警告色の光を走らせた。


波形が深く沈み込み、鋭い線が船底方向へと伸びている。


《敵影探知──深度1200以上。接近方向:真下》


「やはり……中尉の感知どおりか」


通常の魔導砲運用では、最大出力で撃つ際は“船の真下から外した位置”を狙うことが鉄則だ。

直下に撃てば、衝撃波を自艦がまともに受ける危険がある。


だが今、敵はあえて死角となる船底の真下から触手を伸ばしてきていた。

まるでこちらが撃つ方向まで読んでいるかのように。


「……つくづく厄介なやつだ」


フェルドは小さく息を吐き、指を迷いなく水晶パネルに走らせた。


最終魔力圧縮を開始する。

深度を1000メートル──いや、敵影はそれより深い。

深度設定をさらに下げ、俯角を70度へ設定。


魔導砲内部で、白金の光に赤橙の火流が絡みつき、脈動とともに船体全体へ重い魔力の音が響いた。


船首の砲門下部で厚い装甲板が重々しい音を立ててスライドする。

普段は閉ざされたままの船首下部が、砲身の可動域を確保するようにゆっくりと口を開く。


船首に据え付けられた鈍い銀色の砲身が、低く軋む金属音を響かせながら、ゆっくりと下方へ角度を変えていく。


やがて傾いた砲身の先端が海底の闇をまっすぐに指し示し、その輪郭を淡い金色の魔力光がうっすらと照らした。


そして、フェルドは船内全域に静かだがよく通る声で告げる。


「30秒後に魔導砲を発射する。総員、衝撃に備えろ」


その声は船の隅々まで伝わり、仲間たちの動きを瞬時に引き締めた。

ミネアの瞳が細く鋭く光る。


「衝撃に備えて、防御結界を張ります。皆さん、時間を稼いでください!」


ミネアは杖を強く握りしめ、全魔力を一点に収束させた。


その前方では、

オルフが雄叫びとともに斧を叩きつけ、マルクとティオが息を合わせた連撃で畳みかける。


三人の動きは極限まで研ぎ澄まされ、まるでこの瞬間にすべてをぶつけるかのように――最後の猛攻が炸裂した。


「天を巡り、万象を統べる風霊の導き手よ――

 流れを束ね、穏やかなる守護の環を成せ。

 迫り来る禍を打ち払い、我らを包み守れ。

 《アエリス・プラエシディウム》!」


フェルドのカウントダウンの声が響く。


「5」


ミネアの足元から広がった風の紋が、仲間たちへ、そして船全体を包むように伸びていく。


「4」


魔導砲の砲口に光が凝縮し、淡い金色の球体が海面を昼のように照らした。


「3」


過負荷に耐えきれず水晶パネルの表面に細かなヒビが入り、船全体がその暴威の魔力に悲鳴を上げる。


「2」


柔らかな光が風の紋と結び合い――淡く緑を帯びた透明な球体の防御結界が瞬く間に形成された。


「1、発射」


結界が展開されるのと同時に、砲口から莫大な魔力が海底へ向かって放出された――


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