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アルスレア  作者: ゆきつき
第二章 運命の始まり

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ー1ー 運命との邂逅

――世界は揺らめき、色が溶け合っていた。

赤や青、白や金が混ざり、どこからともなく光が滴る。

ここがどこなのか、わからない。


ただ、何かが――戦っていた。

大地が裂け、空が泣く。

炎のような光、砕けた刃、黒い波。

誰かの叫びが耳の奥で響く。

それは祈りか、それとも絶望か――


ひとつの影が見えた。

白く輝く何かを握りしめ、巨大な影に立ち向かっている。

その姿は滲み、見ようとするほど遠ざかる。


そして――巨大な影の奥に“目”があった。

形も、色も、距離さえも分からない。

けれど確かに、それはロイを見ていた。


視線が交わった瞬間、心臓を掴まれるような痛みが走った。

冷たいのか、熱いのかも分からない。

ただ、何かが――こちらを覗いていた。


これは夢なのか。記憶なのか。それとも――誰かの中に残された断片か。


ロイは息を呑み、目を開けた。


……見慣れた天井ではない。

木の梁と石造りの壁。

小さな窓から差し込む光が、白い布に淡く揺れている。

ここは――村の診療所か。


夢の内容は、指の間から零れ落ちるように薄れていった。

けれど胸の奥には、あの“目”の感覚だけが重く残っている。

見られていた――そんな確信だけが、現実のように息づいていた。


ロイは小さく息を吐き、ゆっくりと体を起こした。


「目が覚めましたか?」


不意に、柔らかな声が耳を打つ。


「!?」


ロイは反射的に声のした方に顔を向けた。

ベッドのそばには、淡い緑の髪を後ろでひとつにまとめた少女が座っていた。

軍服のような服を着ているが、年は自分とそう変わらないように見える。

陽の光を受けたその髪が、かすかに輝きを散らしていた。


「肩の痛みは、まだありますか?」


「……肩?」


ロイはぼんやりと呟く。

最初は何のことか分からなかったが、次第に記憶の断片が浮かび上がる。

祭りの夜。

叫び声。

魔物――そして。


「妹……と、村のみんなは!?」


ベッドがかすかに軋む。

少女は穏やかに言葉を続けた。


「その様子なら問題なさそうですね。

村の方々は軽傷の方が多く、今は元気にされています。

あなたの傷が一番ひどかったですよ」


「……そうですか。よかった」


胸の奥で、何かがふっと緩んだ。

安堵とも、まだ抜けない恐怖ともつかない感情。

そのまま数秒、ロイは静かに息を整えた。


改めて少女に目を向ける。

整った顔立ち、凛とした瞳、どこか大人びた雰囲気。

けれどその表情の奥には、淡い翳りが差していた。


「えっと……あの、どちら様ですか?」


少女は一瞬まばたきをし、わずかに姿勢を正した。

その動きに、訓練された兵の気配がある。


「申し遅れました。

私はミネア・ティレニス。

王都直属の第二観測隊に所属しています」


「……観測隊?」


聞き慣れない言葉に、ロイは思わず首をかしげる。


「我々は王命により、“太古の武器”と呼ばれる存在を探すため、世界各地の調査を続けています。

二日前、北方海域を航行していた際、フレイヴ山脈の方角から“莫大な魔力反応”を感知しました。

反応を追跡した結果、発生源はこの村であると判明しました」


ミネアの声は穏やかで、よく通る。

だがその瞳の奥には、揺るがぬ覚悟が宿っていた。


「ロイ・ウェールグ――」

彼女は静かに言葉を区切り、真っすぐ彼を見た。

「あなたは、“太古の武器――アルスレア――”に選ばれた者です。

どうか、我々と共に来ていただけませんか?」


「え……えっと……?」


ロイは思考を止めた。

まだ夢と現実の境目がぼんやりと霞む頭では、

“選ばれた”という言葉の意味を、まだ理解できなかった。

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