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この世界は俺に何を求める? -The Rising of the Suicide-  作者: 白ノオト
第一章 箱庭
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ep1.「惹く」

転生。とは救いなのか


自分が死に、異世界に転生。新しい世界に目を輝かせ、時に苦しみ、時に喜ぶ


しかし時にそれは己への最大の苦痛となる


生きることを諦めてしまったものに、転生は果たして救いなのか?

 もう死んだ・・・のか


 分からない、でも暗い、何も見えない。

 死後の世界なんて、端から求めていない。俺は何も感じたくない、考えたくないから終わらせた。自分の人生を、自分の意志で。


 それなのに、まだ感覚が残ってる。電車の衝撃、急ブレーキの音、鉄錆の味、駅の匂い、電車の眩しいライトが瞼の裏に張り付いている。離れようとしない。


 でも、もし生まれ変われるなら・・・。何もかも忘れて、今度こそひとりじゃない、生きる意味があるんなら。そのときは、笑っていたい。


 ◇◇◇◇◇


 あれからどれくらいの時間が流れた。分からない。でも、まだ感覚は残ってる。肌感覚、瞼の裏に若干の光を感じる。もしかして死後の世界、天国というやつなのか? やめてくれ・・・・・・・。もう行きたくないんだよ。もう嫌なんだよ。全部忘れたい、忘れてしまいたい。何で・・・・・・忘れさせてくれないんだよ。

 何度心の中で問いかけても、何も起きやしない。次期に意識が消えて無くなるか、記憶を消されて転生するかのどっちかだ。生き返るとか、実は生き残っていたなんて有り得ない。起きるはずない。これでいいんだ。このまま・・・。




 俺は浅はかだったのだろうか。いや浅はかだ。アニメや漫画で起こること、それがまさに自分に起こるなんて、考えもしなかったのだから




 ますます手の感覚が戻っている気がする。いや、自分の手ではない。自分の手にしては小さい。それに体全体の感覚も。いったい何なんだこれは。


「―――――――――」


 何か聞こえる。何だ? 自然の音じゃない。これは・・・


「―――――――――」


 人間の・・・声? い、いやおかしい。だって俺は消滅するか転生するはずだろ・・・。なあ、おかしいよな。


 自分が認めたくなくても、認めざるを得ない。これは・・・・・・


「―――――」


 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。やめて・・・・・・くれ、そんなの認めたくないっ! 何で俺なんだ!? 何で・・・・・・。




 こうして、最悪の形で俺は転生した。()()()()()()まま


 ◇◇◇◇◇


 俺が転生してから、どれくらい経ったんだ。分からない。見ず知らずの他人と一緒に暮らす感覚は不愉快だ。世話をされる感覚が気持ち悪い。何よりも、されるがままの自分に一番腹が立つ。

 今だ奴らの言っていることのほとんどを理解することはできない。何を話しているのか、何を考えているのかが全く分からない。ただ一つだけわかったことがある


「ルロス」


 それがこの世界での俺の名前らしい。ギリシャっぽい名前というか、中世の名前だ。家の中をいろいろ見たりしたが、中世という感じの家だ。

 だがどうしたというのだろう。俺の人生は既に終わったはずだ。もう・・・行きたくないのに、どうすればいいんだ? 何をするために生きていけばいいんだろう。少なくともここで俺を知っている人間は誰もいない。じゃあもう自由に生きればいいのか・・・・・・。


 もしかしたら、それでいいのかも知れない。前世で散々だった分、ゆっくりしろってことなのか。過去の俺を知っている人間は誰もいない。俺が前回よりも上手く生きればいい。目立たずに、ゆっくりと生きよう。




 それなら、もっと家の中を歩いてみよう。家の中には父親と母親しかいない。その二人に気を付けて抜け出せばいい。さっさと逃げてしまおう。


 いつものように母親が俺をベッドに寝かせる。そして俺から目を話している隙に逃げ出そう、とベッドから降りようとすると


「―――――――――――」


 振り返ると、目の前に父親が立っていた。どうやら逃げ出そうとしたことがバレてしまった。




 だが父親はそのまま俺を抱きかかえ、床にそっと俺を降ろす。これは・・・自分で行って良いってことなのか?

 言われるがままというか、何となく廊下をよちよちと歩く。そして何となくたどり着いた部屋、その前で止まった。そうしたら父親が部屋の扉を開けてくれた。


 中に入って見ると、そこには漆黒の刀身を持つ剣があった。それは誰もが惹かれる程の深い黒の剣。


 ◇◇◇◇◇


 あれから三年の月日が流れた。


「ルロス? またあの部屋に行きたいのか」


 二人の言葉がすっかり分かるようになって、俺も喋れるようになった。


「パパ、僕あの部屋がいい。何となく良い!」


 二人の目には、俺は無邪気な子供のように映っている。年相応に振る舞うのが一番良い。

 そして今日もあの部屋に向かう。あの剣がある部屋だ。


「ちょっと! いつもいつもルロスを武器庫に連れていって・・・。 ルロスは子供なのよ? 親として危ない場所には連れて行っちゃダメでしょ!」


まあ、普通はそう思う。ただやはりあの部屋が落ち着く。なんとなくだ、なんとなくあの剣のそばにいると落ち着く。


「いいじゃないか。こいつは危ないことはしない。お前も見てきたじゃないか」


母親は父親の言うことに反論ができずに居た。母親を見かねてか、俺は声をかける。


「大丈夫だよ。僕はあそこにただ居るだけだから、危ないことはしないよママ」


それでも母親の不安は拭えないのだろう。


「本当? ママと約束できる?」


不安そうに俺に聞いてきた。


「もちろん。絶対にしない!」


それを聞いてか、わずかながらに母親の表情が緩む。


「ならいいわ。ちゃんと守ってくれるなら私は見守るわ。その代わり! あなたもちゃんとルロスを見ていてね?」


と、父親の方に鋭い視線が飛ぶ。これは、俺を甘やかすなってことだろうな。


「も、もちろんだよ」


あんだけ強気だった父親が、おどおどしながら答えた。流石母親と言うべきか、妻と言うべきか。


そうして俺は毎日あの部屋でぼーっとしていた。時には家の書斎から本を引っ張り出してあの部屋で読んだり、時にはあの部屋で父親と話したりもした。




ともかく、俺は前世みたいなことは起こさせない。一度全てを諦めたんだ。じゃあ全てを掴んでみせる。才能も、運命も。

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