瞳の色
訓練校に行ってから数ヶ月が経った。
10歳の誕生日を迎えても、俺の目は未だ黒いままだ。
両親は次第に青くなると言ってくれているが
学校の同期はもう9割以上が開眼していた。
「おい、お前まだ開眼していないのか?ガキだな」
と馬鹿にされる日々が続いた。
それはそうだ。
開眼しなければ魔術も扱えない。
そして歴史を勉強しているうちに、この国には…いや
少なくとも敵国にも黒い瞳のままの人物はいないとされている。
ただ、成長が遅れているだけ。
きっと開眼する日が来る。
……そう思っていた。
シャーロイズ帝国、つまり俺のいる国は青い系統の目
ロッドスター国、よく戦争が行われている敵国は赤い系統の目
リーガ国、隣国は緑系統の目など…
濃さは違えど、その国のシンボルとなるカラーとして産まれるのだ。
たまに、違う系統の目を持つ子が産まれた場合は、スパイとみなされ
一族全員が処刑されてしまうという。
ミスカラーとして稀にグレー色の目を持つものが産まれる事があるらしいが
魔術は一切使えず、人権すら与えられない。
反逆者同等の扱いをされているのだ。
この世界において
目の色は生きて行く上で最も重要とされている。
訓練しても、勉強をしても
まだ俺は魔術を使えない事に焦りを感じていた。