第9話 直接対決
第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!
「終わりにしてやる……」
黒ローブが唱える呪文により、黒い霧の中から闇の魔物が次々と現れる。巨大な黒い影が、私たちを取り囲むようにして蠢き始めた。
「まずはあの魔物を片付けないと、先に進めないな」とレオンが剣を構える。
「俺が魔法で牽制する。アイリス、お前は未来視で動きを先読みしろ!」ルーカスがすぐに作戦を組み立て、皆を指示する。
「うん、任せて!」
私は集中し、未来視の力を解放した。視界がふっと揺れ、一瞬先の未来が頭の中に広がる。若干のモヤがかかってはいるが、かろうじて魔物たちがどう動くのかわかる。
「右側に一体、突っ込んでくる! エドガー、回避して!」
「わかった!」
エドガーはすぐに私の指示に従い、鋭い剣筋で魔物を迎え撃った。彼の動きは素早く、無駄がなくて、まるで彼自身が未来を読んでいるかのようだった。彼の背中に感じるその力強さに、思わず胸が熱くなる。
エドガーが振り返って、微かに微笑む。「君の指示があれば、何も問題ない」
その笑顔に、心臓がドキリと跳ねた。エドガーはいつも冷静で頼りになる存在だけど、こうして自信満々に笑いかけられると、胸が高鳴ってしまう。
(私はエドガーを信じている、未来は変えられる……)
戦いは激しさを増していった。
闇の魔物たちは次々と現れ、まるで無限に湧いてくるかのようだった。でも、私たちは力を合わせて応戦した。ルーカスが魔法で圧倒的な火力を見せ、レオンがその隙を突いて正確に一撃を加える。そしてエドガーは、その場の指揮を取りながら、私を守り続けてくれていた。
ふと見れば、ルーカスがレオンに少し寄り添いながら、「お前の剣、いつもながら正確だな」と軽口を叩いている。
「お前こそ、あの炎魔法、かなり強化されてるな」とレオンが少し照れたように答える。
「ま、まあな。お前に負けるわけにはいかないし」とルーカスが少し照れ隠しのように笑い返す。そのやりとりに、一瞬和やかな空気が漂った。
「おい、今は戦闘中だぞ!」とエドガーに言われ、二人は慌てて正気を取り戻したかのように前方に集中する。
「左からもう一体来るよ、気をつけて!」
「了解だ!」レオンが素早く剣を振るい、魔物を切り倒した。
「次は正面から、大きな一撃が来る!」
「未来視の本領発揮ってところだな!」ルーカスが笑いながら魔法を放つ。
「そうね、でもまだ油断しないで!」
私は一瞬たりとも気を抜けなかった。未来視の力は確実に戦局を有利にしているけど、敵の動きがはっきり見えているわけでもなく、私自身の精神力も消耗していた。
そして、最も強大な敵が動き始めた――黒ローブだ。
彼は静かに腕を上げ、暗い力を呼び起こした。その瞬間、空間が歪み、私たちの足元がぐらりと揺れた。
「何か……来る!」私はとっさに叫んだ。
「アイリス、未来視はどうだ!?」エドガーが私を見た。
「待って、また、ぼやけてる……!」私は焦りながら答える。
目の前にいる黒ローブがいると、未来視がなぜか明確に見えない。今まで感じていた違和感が、ここで頂点に達した。まるで彼が、妨害いるような感覚……。
「あなたは何者なの?」私は彼に向かって問いかけた。
「私は……お前自身の影だ」
その答えに、心臓が止まりそうになった。私の影……? 何を言っているの?
「意味がわからない! どうして私に関係があるの?」
「お前が未来を変えられないのは、お前自身の限界だ。聖女として与えられた役割は、未来をただ見届けるだけだ」
黒ローブの言葉に、私は震えた。ずっと感じていた不安、それは私自身の力に対する限界の恐怖だったのかもしれない。でも、私は……
「そんなの信じない! 私は、未来を変えるためにここにいる!」声を張り上げて叫ぶ。
「ならば証明してみせろ。未来を変えられるというのなら……」
黒いローブの人物が放った闇の波動が、私たちに襲いかかる。私は咄嗟に魔法障壁を張り、仲間たちを守る。
「エドガー! レオン! ルーカス! お願い、手伝って!」
「任せろ!」エドガーが私の隣に立ち、剣を構える。「お前は俺が守る。だから、未来を見てくれ」
その言葉に、私の心がふわっと軽くなった。エドガーがいてくれる。だから、私は大丈夫。
「未来は見えてる……ここからは私たちの力で変えるんだ!」
エドガーが盾のように私を守り、ルーカスが火花を散らしながら強力な魔法を放つ。そして、レオンがその隙をついて、一撃必殺の剣を振るう。私は未来視に集中する。
猛攻に黒ローブは姿勢を崩す。
その瞬間、視界が開けた。
未来視が再び鮮明になり、敵の動きが全て見えた。次に彼が何をするか、その一手先が見えた瞬間、私は叫んだ。
「今よ、全力で攻撃して!」
エドガーが剣を振り下ろし、ルーカスが強力な魔法を放つ。レオンの一撃が、黒いローブの人物を完全に捉えた。
「これで終わりだ!」
私たちの攻撃がすべて同時に黒いローブの人物に命中し、その身体が崩れ始めた。彼は最後に静かに呟いた。
「確かにお前は聖女のようだ……だが、その代償は覚悟しろ」
彼の姿が闇の中に消えていく。
私たちは息を整え、その様子を見つめていた。
これで本当に滅びの未来は変わったの?
でも、代償って……。
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