第8話 星空の下で
第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!
「ここに、答えがある……」
扉の奥に待っていたのは、闇だった。
暗闇の中、ぽつりぽつりと小さな光が浮かび上がる。まるで夜空に散りばめられた星のようだが、どこか不気味な気配が漂っていた。
「天井が星空みたい……さっきの部屋でもあったけど、この神殿は、なにか星と関係するものなのかな……」
まるでプラネタリウムのような光景に圧倒されながらも周りを眺める。
「なんにしても気をつけろ。何が出てくるか分からない」レオンが警戒心を滲ませて言った。
「そうだね。でも、進むしかない。ここに答えがあるんだから」私は小さく息を吐き、勇気を振り絞って一歩踏み出した。
広間の中央には、巨大な円形の祭壇があり、その周りには無数の古代の遺物や碑文が並んでいた。その中心には、古代の封印と思われるもの石碑が佇んでいた。
「これが……滅びの予言に関わる封印? 黒い霧や黒ローブにつながるヒントになるのかな」ルーカスが不思議そうに呟く。
「安易に触れないほうがいい」レオンが警告する。
私は封印に目を凝らす。瞬間、心臓がドクンと跳ね、未来視の力が静かに反応し始めるのを感じた。視界が揺らぎ、次第にぼやけていく――まるで別の世界に引き込まれるかのように、意識が遠のいていく感覚が私を包んだ。
未来が、また私に語りかける。
目の前に広がったのは、滅びの光景だった。黒い霧が街を包み込み、炎が上がり、人々が逃げ惑っている。そしてその中心には、あの黒いローブの人物が立っている。未来視で見たあの姿――でも、今は以前より鮮明に見える。
その人物が振り返り、私に向けて静かに語りかけてくる。
「聖女は、この世界の未来を見届けるだけの存在だ」
その言葉に、私は反発した。未来をただ見るだけじゃない――私はそれを変えたい。だけど、今目の前で崩壊する未来は、まるで既に決まった運命のように感じられた。
「未来は……変えられないの……?」
その瞬間、視界が真っ暗になり、現実へと引き戻された。目を開けると、仲間たちが心配そうに私を見つめていた。
「アイリス、何があった? 顔色が悪いぞ」
エドガーが私の肩を支えていた。彼の手の温かさは、冷え切った私の体にはとても温かく感じる。
「……また未来が見えたの。今度はもっとはっきり……でも、あれは……まるで変えられない運命みたいだった」
その言葉に、皆が黙り込む。ルーカスでさえ、冗談を言わずに真剣な顔をしていた。
「黒ローブに未来は変えられない、って言われたの。私の役目はただ見届けるだけだって……」
言葉が詰まり、胸が締めつけられる。この未来を変えるためにここにいるのに、見えたのは絶望的な光景だった。
「そんなこと、あるわけないだろ」エドガーが強い声で遮った。「君がここまでやってきたのは、未来を変えるためだ。見届けるだけの存在なんかじゃない」
「でも、もし本当にそれが定められた運命だとしたら……」
不安な気持ちを素直にエドガーに伝える。
「運命なんてものは、自分の意志で打ち破れる」
エドガーは私の目をじっと見つめた。その目には迷いも不安もない。彼は、信じている。私が未来を変えられると。だからこそ、こうしてまっすぐに私を見てくれる。
「君は特別だ、アイリス。自分の力を信じろ。未来は、君の意志で変えられる」
彼の真剣な眼差しに、私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。私が迷った時、エドガーはこうして力強く「自分を信じろ」と言ってくれる。それが、どれだけ私を支えているか、彼には伝わっているのだろうか。
「エドガー……ありがとう。私、絶対に諦めない」
そう言いながら、私はエドガーの手を握り返した。彼の手のぬくもりが、私の心まで届く。彼がいてくれる――それだけで、私はもう負ける気がしなかった。
ひときわ目立つ不思議な石碑を調べていたルーカスがみんなを呼ぶ。
「なあ、この石碑、なにか封印されていたみたいだ。でも大分古いものだし、今はなにも封印はされてないみたい」
なにも封印されていない……?
すでに封印は解かれてるってこと……?
みんなで封印の石碑の前で悩んでいると、黒い霧が周りを囲む。
「気をつけろ!」レオンが鋭く叫んだ。
次の瞬間、黒ローブが再び姿を現した。
「またお前か……!」ルーカスが素早く身構え、魔法の準備を始める。
「滅びの神殿までたどり着いたことは褒めてやろう。だが、もうここには何も残ってはいない」
冷たい声が神殿に響き渡り、黒ローブが何かを唱え始める。周囲の空間がねじれるように歪み、地面が裂けるように揺れる。
「何も残っていない? あなたがいればそれで十分! みんな、一気に行くよ!」
全員で黒ローブに立ち向かう。未来は変えられる――それを証明するために、私たちは戦いを挑んだ。
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