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第7話 滅びの神殿

第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!

 滅びの神殿の内部は、外の冷たさとはまるで別の異質な世界だった。


 外の冷たさが肌を刺すような物理的な寒さだとすれば、この空間では不吉な気配が寒さとして押し寄せてくる。


 足元の石畳はひんやりとしており、歩くたびにかすかに響く音が、広くも狭くもない不思議な空間に反響する。その音が、静寂の中でますます異様な緊張感を引き立てる。明かりがないはずなのに、天井からはぼんやりと青白い光が漏れている。


「アイリス、大丈夫か?」


 隣を歩くエドガーが心配そうに声をかけてきた。


「少し不安で……未来視で見たのは本当にこの神殿であっているのか……」


 正直な気持ちを口にすると、エドガーは少し微笑んで、私の肩にそっと手を置いた。


「君は自分の足でここまで来た。それだけでも十分頑張っている。そんな自分の、聖女の力を信じろ」


 エドガーの言葉に、私は少しだけ気持ちが軽くなった。彼の言葉にはいつも強さがあって、私を引き上げてくれる。


「アイリス、もしもの時は俺が守る。君は前に進むことだけを考えろ」


 エドガーの瞳が真剣に私を見つめていた。鋭いけれど、どこか温かいその視線に、不意に胸が高鳴るのを感じた。


「ありがとう、エドガー。あなたがいてくれて、本当に心強い」


 思わず口にしてしまった言葉に、自分で驚く。でも、エドガーは微笑みながら軽く肩を叩いてくれた。その瞬間、ほんの少しだけ体が温かくなった気がする。


 少し歩くと、古代の遺物がずらりと並び、壁には不思議な文字が刻まれている部屋に着いた。それは、私たちが使う言葉ではないが、見ているだけで不思議と理解できるような感覚があった。ルーカスが早速興味深そうに近づいて、古代文字を読もうとしている。


「へぇ、こんな文字は初めて見るな。アイリス、何か読めるか?」

「うーん、全然読めない……」


「そりゃそうか。お前がこんな古い文字を知ってたらびっくりだ」ルーカスは冗談めかして笑う。


「でも、前の世界の知識と照らし合わせれば、何かわかるかもしれない」と私はふと思いつく。科学や歴史の知識を生かせば、この古代の神殿にも何か共通点が見つかるかもしれない。


 私は壁に近づき、文字の配置や形状をじっくり観察する。何かに気づく……いや、思い出す感覚があった。そうだ、これは周期的な図形を表している。まるで星の周期のような……。


「この文字は星の動きを表しているんじゃないかな? 古代の人々が空の星を観測していた証拠だと思う」


「星か……そういえば、滅びの予言にも『星の暗い輝き』が関係しているって言われてたな」とレオンが後ろから言う。


「星の暗い輝き……」私はその言葉を繰り返した。もしかしたら、この神殿に隠された情報が、未来を変える鍵になるかもしれない。


 突然、神殿全体が低く唸りを上げた。


「なんだ⁉ 地震か?」ルーカスが驚いて周囲を見回した。


「何か……起こる!」


 次の瞬間、神殿の床が光り輝き始め、まるで生きているかのように魔法陣が私たちの足元に浮かび上がった。明るい光が渦巻き、空気が震える。私は反射的にエドガーの腕を掴んだ。


「大丈夫だ。俺がいる」


 エドガーは冷静な声で私を落ち着かせるように言った。彼の力強い手の温かさが、私を冷たい現実から引き戻してくれる。


「これは……魔法装置!」私は思わず叫んだ。


 私たちは光に包まれ、視界がぼやけていく。すると、私はまた未来視の世界に引き込まれた。次の瞬間、あの黒ローブが目の前に立ち、静かに私を見下ろしていた。


「お前がここに辿り着くとはな……しかし、未来は変わらない」


 冷たい声に私は震えながらも、負けじと睨み返す。


「滅びの未来は私が変える!」私は意を決して叫んだ。


 黒ローブは一瞬、静かに私を見つめたが、薄く笑ったような気がした。その笑みが、不気味で心に冷たさを残して消える――その瞬間、光が再び強まった。


 光が収まると、私たちは神殿の深奥に転送されていた。


 冷たく、静寂に包まれた場所だった。神秘的で、息をするのも少し重く感じる――まるでこの場所自体が私たちを圧迫しているかのようだ。目の前には、巨大な石の扉が鎮座していた。そして、その扉の前には古びた石碑が立っており、淡く光る古代文字が浮かび上がっている。


「これで扉を開くのか……?」


 エドガーが石碑に手を触れる。その瞬間、彼の手が石碑に触れた場所が光り、扉がゆっくりと開かれていく。冷たい風が吹き抜け、奥からは得体の知れない気配が漂ってくる。


「アイリス、覚悟はいいか?」エドガーが静かに問いかける。


 私は深呼吸をして頷いた。「うん。行こう」


 エドガーもまた、優しく微笑んで頷き返す。その瞬間、彼の手が私の背中にそっと触れた。その小さな接触が、言葉以上に「一緒に行く」という決意を感じさせてくれる。胸が高鳴るのを感じながら、私は再び前を向いた。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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