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第6話 新たなる旅立ち

第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!

 私は宿のバルコニーから広がる風景を眺めながら、心の中でつぶやく。


「この平穏が、ずっと続けばいいのに……」


 魔物の大群を退けてから数日が経ち、街には穏やかな空気が戻っていた。街の人々の笑顔、露店の賑わい、そして仲間たちとの和やかな日々――すべてが心地よかった。


 でも、その平和がずっと続かないことも、どこかでわかっていた。霧の中で感じた不安、黒いローブの人物の正体がまだつかめていないこと。そのすべてが、私の心に影を落としている。


「アイリス、また考え込んでるのか?」


 後ろから声をかけられ、振り返るとエドガーが立っていた。彼の鋭い青い瞳が、私を心配そうに見つめている。真面目で厳しいところがあるけど、こうして私のことを気にかけてくれる彼の存在が、今では本当に大きい。


「うん、ちょっとね……これからのことを考えてた」


 エドガーは私の横に立ち、同じ景色を見つめながら静かに言った。


「魔物の大群は退けたが、あの黒ローブにしても霧にしてもまだ謎が多い。厄介なことになった」


 そう、私は黒いローブの人物と対峙したけれど、その正体や目的までは突き止められなかった。あの戦場では未来視が安定しなかったし、何か大きな壁に遮られた感じがした。今の私でも見えないものがある……それが不安でならなかった。


 それにしても……


「エドガー、さっきの“黒ローブ”って……」

「君の言う“黒いローブの人物”っていちいち長いだろ?」


 エドガーがフッと笑いながら言う。


「たしかにそうかもね」


 でもそれ以上にエドガーのいつもと違う顔が見えたのが嬉しかった。


 ――――――――――


 次の日、私はギルドにいた。


 ルーカスやレオンも一緒だ。彼らは、私の次の行動について相談するために集まってくれた。ギルドマスターも交えての会議だった。


「その“黒ローブ”については、情報がほとんどない」とギルドマスターが深く息をつく。

「ただ、古文書に記されている『滅びの予言』に似ているという話を聞いた」


「滅びの予言?」私はその言葉に反応して尋ねた。


「そうだ。伝承によれば、黒い霧が世界を覆い尽くし、魔物たちがすべてを飲み込む――そんな最期の光景が描かれている。しかし、まさかそれが現実になるとは誰も考えていなかった」


 それを聞いて、私の胸の奥がざわついた。未来視の力は強力だが、見えているものが必ずしも変えられるわけではないということも知っている。私が見た未来の通り、現実が「滅び」に向かっているとしたら……?


「じゃあ、私たちはどうすればいいの?」少し焦りながら、私は問いかけた。


「一つだけ確かなことがある」とギルドマスターが続ける。「滅びを回避する鍵は『聖女』にあるとされている。つまり、お前さんだよ、アイリス」


 一瞬で場の空気が変わった。全員の視線が私に向けられ、その重みを感じる。心臓が高鳴るのを抑えきれない。


「私が……?」


 私にはその重責が大きすぎるように感じられた。だけど、未来視の力を持つ私しかこの運命に立ち向かえないなら、どうにかしなければならない。胸の奥で不安が渦巻くが、今は立ち止まることができない。


 ――――――――――


 その夜、私は再び未来視の力に頼ることにした。


 ギルドの訓練場の片隅で一人、目を閉じて未来を見ようと集中する。滅びの予言。私がその鍵を握っているのだとしたら、何が起こるのかをもっと深く見なければならない。


(未来を……教えて……)


 瞑想に入ると、目の前が一瞬揺れた。次の瞬間、私は暗い神殿のような場所に立っていた。そこに現れたのは、またしてもあの黒いローブの人物。そして、その後ろには広がる無数の魔物。


「また……あなたなのね」


 彼がゆっくりと口を開く。


「お前が全てを救うことはできない。未来は既に定められている……」


 その言葉に胸が締めつけられる。定められた未来? そんなの、私には信じられない。私の力で、未来は変えられるはず……!


 未来視から戻った私は決意を新たにした。


「私は、絶対にあの未来を変える……!」


 ――――――――――


 数日後、私たちは新たな冒険に向けて準備を整えた。


 目的地は「滅びの神殿」――未来視で見た神殿とはここではないかと予測がされた。ギルドマスターの話では、神殿は北の山脈に隠されており、「滅びの予言」に関する秘められた知識が残されているという。今回の旅は黒ローブの正体を探り、滅びの未来を回避するために、その神殿で手がかりを探すことだ。


「北の山脈って、本当に行くの?」ルーカスが冗談交じりに笑う。「寒いの、俺はあんまり得意じゃないんだけどな」


「文句を言うなよ。お前がいると心強いんだ。役に立ってもらわなきゃ困る」レオンが彼の肩を叩きながら、にやりと笑った。


「まあ、聖女様の頼みなら仕方ないか」ルーカスはわざとらしくため息をつきながらも、どこか楽しそうに見えた。


 私は微笑みを返しながら、彼らのやりとりを見ていた。確かに、仲間たちがいるなら、どんな危険な道も乗り越えられる気がする。でも、心の奥にはまだあの未来がちらついている。黒い霧に包まれた王都、滅びへと向かう世界――それを変えられるのか、本当に自信があるわけじゃない。


 ――――――――――


 旅は、想像以上に険しかった。

 王都から離れると、道は次第に荒れ果て、北に向かうほど冷たい風が吹きつけてきた。日本の冬は寒いけれど、異世界の寒さはそれ以上だ。山の麓にある村まで馬車で行き、そこからは歩きだ。山中に入ると足元の雪が厚く積もり、視界を遮る吹雪の中を進む。


「こんな時、スノーブーツがあればいいのに……」ふと口に出してしまった。


「スノー……ブーツ?」レオンが不思議そうに聞き返す。


「あ、えっと、前の世界ではね、寒い場所で使う靴があって、それを履いていれば雪の中でも楽に歩けたの」

「へぇ、便利なアイテムだな!」ルーカスが笑う。「でも、今はその靴がないから、せいぜい転ばないように気をつけてくれよ」


 ルーカスの冗談に、私たちは笑いながら進んだが、心の中には「現代の知識」がまだ活かせる部分があると気づかされた。異世界での生活にも、何か新しい技術や知識を取り入れられるかもしれない。


 ――――――――――


 ついに、北の山脈のふもとに到着した。


 凍りついた空気が肌を刺すような感覚。目の前に広がるのは、神秘的な「滅びの神殿」。そして、その奥には……何か得体の知れない気配が漂っていた。


「これが、滅びの神殿……」


 私はその荘厳な姿に思わず息を飲んだ。

 ここで、あの未来を変えるための答えが見つかるかもしれない。私が背負う使命、そして仲間たちの未来を守るためにも、この場所で何かを掴まなくてはならない。


「行こう、アイリス。未来を変えるために」とエドガーが私の隣で静かに言った。


「うん、そうだね……」


 私は彼の目を見て、深く頷いた。未来を変えるための戦いが、ここから始まる――。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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