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第5話 王都防衛戦

第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!

「何か、変だ……未来視が出来ない……」


 戦場に立ちながら、私はずっと感じていた。黒い霧に包まれた魔物の大群が、じわじわと王都へ迫ってくる。空気は張り詰め、霧の冷たさが肌を刺すようだった。この場に立つだけで、背筋がぞくりとする。けれど、その寒気の原因は魔物だけじゃない。何か見えない力が、私の未来視を邪魔しているような、そんな感覚。


「アイリス、どうした? 集中しろ!」


 エドガーの鋭い声が響く。彼の声に私はハッとし、何とか気持ちを引き締める。今は動揺している場合じゃない。私の役目は未来を見て、仲間を導くこと。けれど、この不安がなかなか消えない。


「うん、大丈夫……」


 そう答えたものの、内心は不安でいっぱいだった。未来視の力は、ソラウス村やギルドでの訓練を通じて少しずつ使いこなせるようになってきた。でも、今この決定的な瞬間に、まるで霧に遮られるように未来が見えない。まるで、何かが私の力を封じ込めようとしているみたいに。


 そうしているうちに、戦いが始まった。


 エドガー、レオン、ルーカス、そしてギルドの仲間たちが次々と魔物に立ち向かっていく。エドガーの剣が魔物を薙ぎ払い、ルーカスの魔法が雷鳴のように響く。レオンは冷静に指揮を執り、前線で戦っている。それなのに、私はまだ動けずにいた。


(何をしてるの? 今こそ未来を見なきゃ……)


 焦りばかりが募るが、視界は何も変わらない。ただただ魔物たちが迫ってくる現実が広がるだけだ。


「アイリス!」


 突然、リーフの叫び声が耳に飛び込んできた。振り返ると、リーフが村から避難してきた仲間たちと一緒に走っていた。しかし、何体もの魔物がその背後に迫っている!


「行かなきゃ……!」


 走り出すと同時に、手を伸ばして魔法を放つ。目の前の魔物が黒い霧をまといながらこちらに向かってきた瞬間、私の魔法がその霧を貫き、魔物は地面に崩れ落ちた。ギルドでの訓練が役に立ってる……そう思うと、胸が少し軽くなった。


「リーフ、大丈夫⁉ 怪我はない?」

「う、うん! ありがとう、アイリス!」


 リーフの無事を確認して、私はほっとした。しかし、すぐに次の魔物が迫ってくる。魔物たちはこれまで以上に組織的に動いている。やはり、あの未来視で見た黒いローブの人物が指揮しているに違いない。


 その時だった――視界が揺らいだ。


 急に頭の中が真っ白になり、今度こそ未来が見えた。今までとは違う鮮明な未来。黒い霧が一気に広がり、町全体を覆う。そしてその霧の中から、黒いローブの人物が現れる。彼は何かを呪文のように唱え、さらに強力な魔物を召喚する。


「アイリス、どうした?」


 エドガーの声が聞こえるけど、私は未来の映像に囚われたままだった。視界が白黒に反転し、耳鳴りがする。まるでこの未来視の力が、私自身を飲み込もうとしているような感覚。それでも、私はその未来を見届けなければならないと思った。


 そして――気づいた。


 「黒いローブの人物……あれは、人間じゃない」


 あの人物はただの敵ではない。何かもっと異質で、強力な存在だ。私たちが相手にしているのは、ただの魔物じゃない。


「みんな! 黒い霧に気をつけて! 魔物たちを指揮しているのは、人間じゃない……!」


 私の声は戦場のざわめきの中でもしっかりと届いた。エドガー、ルーカス、レオンが一斉に振り向き、驚きの表情を浮かべたが、すぐに戦士としての冷静さを取り戻していた。それぞれが私の言葉の意味を咀嚼しているのが、表情から伝わってくる。


「人間じゃない……? 一体何者なんだ?」レオンが剣を構えながら叫んだ。

「わからない。でも、あの霧が広がれば、全てが終わる……! 私がなんとかするから、皆はできるだけその霧に近づかないで!」


 私の言葉にルーカスは苦笑しながら肩をすくめた。「おいおい、聖女様。まさか一人で全部やる気かよ?」


「ルーカス、冗談言ってる場合じゃない!」レオンが厳しい声でたしなめる。


「わかってるさ。ま、聖女様が言うなら俺たちも従わざるを得ないってところだな」


 私は深く息を吸い込み、決意を固めた。――これが私の役目だ。未来視で見た破滅の未来を、私が変えなくてはならない。今までの訓練、すべてがこの瞬間のためにあったんだ。


 私は黒い霧に向かって走り出した。


 足元から風が巻き上がり、霧の中に飛び込む。全身が冷たく、まるで何かに飲み込まれそうな感覚が押し寄せる。霧の中は暗く、何も見えない――でも、私はただ一つの存在を感じ取っていた。


 黒いローブの人物。目の前に、ぼんやりとその影が浮かび上がる。


「あなたがこのすべての元凶……」


 未来視はもう不要だ。私は今ここで、この人物を倒さなければならない。手を伸ばし、心の中で魔法を呼び起こす。これまでの訓練、仲間たちとの時間、そして戦場での経験すべてが、私を支えてくれている。


「あなたの思い通りにはさせない……!」


 呪文を唱え、力を解放する。白い光が私の手から放たれ、黒い霧を切り裂いていく。霧の中で闇が崩れ始めた。そのまま黒いローブの人物にも魔法を飛ばすが、それは防御される。しかし、その瞬間――未来が見えた。


 今までぼんやりとしか見えていなかった未来が、今はすべてクリアに見える。この戦いをどう進めれば勝てるのか、そして黒いローブの人物の次の手が、鮮明に頭に浮かんだ。


「これが……私の力……!」


 黒いローブの人物が何かを呪文で唱えようとした瞬間、私はその動きを予見し、魔法で彼の攻撃を防いだ。彼が驚きの表情を浮かべるのが見えた。


「もう、あなたの思い通りにはならない!」


 私は再び光を放ち、黒い霧が完全に消え去っていく。その瞬間、魔物たちはまるで糸が切れたかのように動きを止めた。空気が一変し、戦場に静寂が訪れる。


「ここまで出来るようになっていたか……こちらも準備を急ぐか……」


 黒いローブの人物は霧と共に消えてしまっていた。


 戦場の空気が緩み、仲間たちが周囲に集まってくる。


「君が、やったのか?」エドガーが信じられないという顔で私を見た。


「……うん、たぶんね」私は少し照れくさくなり、肩をすくめながら笑った。


 ルーカスは大笑いしながら近づいてきた。「やっぱり聖女様はただものじゃないってことだな!」


「そうだな」と、レオンも微笑んで剣を鞘に収める。


 彼らの安心した表情を見て、私もようやく肩の力が抜けた。

 この戦いは終わった――まだやるべきことはたくさんあるだろうけど、この仲間たちと一緒なら、どんな困難にも立ち向かえる気がする。

読んでいただきありがとうございます!


今回の話、面白いと感じたら、下の☆☆☆☆☆の評価、ブックマークや作者のフォローにて応援していただけると励みになります。


今後ともよろしくお願いします。

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