第16話 未来への一歩
今回で第1部は終わりです。案はあるので、人気が出れば続きを書きます。これまで読んでいただきありがとうございました。
私たちは祭壇にある、次元の裂け目を生み出す魔法陣を壊すために動き出す。
ルーカスとレオンが協力して、巨大な魔法陣を作り上げ、私はその中心に立って魔力を注ぎ始めた。
「これで次元の裂け目を閉じることができる」
手が震える。だけど、その時、エドガーが私の手を握る。その手は温かく、強く、私の不安を静かに取り除いていく。
「大丈夫だ。自分を、俺たちを信じろ」
彼の声に、私の心は揺れ動いた。エドガーの言葉が、どれだけ私を支えているか。彼の存在が、どれほど私にとって大きなものになっているのか。
「ありがとう、エドガー……」
思わず、彼にそう告げた。彼は微笑み、私の手を握り返した。その瞬間、胸が熱くなる。今なら、できる気がする。彼がそばにいてくれる限り、私は負けない。
魔力が流れ込み、魔法陣が輝きを放ち始める。私は必死に魔力を注ぎ込み、次元の裂け目が閉じるように祈る。
「俺の力も使え!」
エドガーが力強く言いながら、自らの魔力を私に送り込んでくる。そして、私たちの魔力が一つになると、次元の裂け目の魔法陣はしずかに消えていった。
「魔力の反応はもうないよ! 魔法陣は完全に消えた!」
ルーカスが嬉しそうに言うと、空にあった次元の裂け目が徐々に閉じていく。
しばらくすると裂け目は完全に閉じて、空に明るさが戻る。私たちの長い戦いが終わりを迎えたのだと実感した。
「やった……」
私はその場にへたり込みそうになった。体は限界だったけど、裂け目が消えたことにほっと息をつく。これで王都は、世界は救われた。私はやっと、この長い戦いに終止符を打ったのだ。
エドガーが私の肩を優しく支えてくれる。「やったな、アイリス。君の力がなければ、全てが終わっていた。君は本当に聖女だ」
彼の声に、私は微笑んで頷いた。
遺跡の冷たい空気の中、戦いが終わった静寂が、まるで世界を新たに生まれ変わらせたように感じられた。影との決着がついた今、私の心も軽く、未来視の力が戻ってきたのを感じた。
すると、私の視界がぼやけ、未来の光景が鮮明に現れた。
「未来が……見える!」
静かな草原で手を取り合う私とエドガー。彼が私を優しく抱きしめ、耳元で囁く「君と一緒に歩んでいきたい」という声。彼との穏やかで温かい未来――それは、私がずっと心のどこかで願っていたものだった。
「アイリス……?」
エドガーが心配そうに私を見つめている。彼の手は、まだ私の手を包んだままだ。未来視で見たその光景が、心の中で大きくなり、言葉が自然と口からこぼれた。
「エドガー、私もあなたと一緒に未来へ歩んでいきたい」
彼の瞳が一瞬驚きに見開かれ、次に柔らかな笑みが浮かんだ。
「君がそんな風に思ってくれていたなんて……」
彼の声には、嬉しさと安堵が混じっていた。私の心があたたかいもので満たされ、彼の手をしっかりと握り返す。
「これからも、君と一緒にいたい、ずっと……」
そう言うと、彼はしっかりと私を抱きしめてくれた。私はその胸の中で、未来視で見たその光景が現実のものになっていくのを感じた。
「取り込み中のところ悪いが、アイリス、もう一度その力でこの国の未来を見てほしい」レオンが少し申し訳なさそうに声をかけてきた。
影との戦いが終わり、これからの世界がどうなるのか、私たち全員にとって気になる瞬間だった。
私は頷き、集中して再び未来を見た。未来視は私に、明るい光を見せた。国の繁栄、平和な時代――そして、聖女の役割を果たしながら、エドガーと共に未来を築いていく私自身の姿が浮かび上がる。
「平和が……戻ってくるわ。この国は明るい未来に向かって進んでいける」
仲間たちの顔に笑顔が広がった。これまでの戦いが報われ、私たちの頑張りが国を救ったのだという安堵が広がっていた。
――――――――――
その夜、私たちは戦いの疲れを癒すため、静かな場所にキャンプを張った。夜空には星が瞬き、心地よい風がそっと吹き抜ける。私はエドガーの隣に座り、星空を見上げた。
「これから、私たちの未来はどうなるんだろう?」私は彼に問いかけた。
彼は私を見つめ、少しだけ考え込んだあと、笑みを浮かべて言った。
「未来視で見たんだろ? でも、俺はどんな未来でも君と一緒にいたい。それだけは、確かだ」
その言葉に、私の心が大きく動かされた。彼のまっすぐな言葉が、私の胸に深く響く。どんな未来になろうと、彼が私のそばにいるなら、怖くないと感じた。
「うん、私も同じ、エドガー……」
そう答えると、エドガーはゆっくりと手を伸ばし、私の頬に触れた。彼の手の温かさが、私の心をさらに柔らかく包み込んだ。
「アイリス……君とならどんな未来でも乗り越えられる」
その言葉と共に、彼の顔がゆっくりと近づき、私たちは自然と唇を重ねた。心臓が早鐘のように高鳴り、彼の温もりがすべてを癒してくれるように感じた。
――――――――――
未来視で見た通り、エドガーと私は共に新たな未来を歩んでいく。彼と一緒に笑い合い、支え合いながら歩む日々――それがこれからの私たちの物語だ。
「一緒に、新しい未来を創っていこう、エドガー」
「もちろんだよ、アイリス。君となら、どんな未来だって楽しみだ」
彼の言葉に、私は強く頷いた。未来視の力が戻り、私はこの世界で新たな平和を築く手助けをする。そして、何よりも大切なのは――私が愛する人たちと、笑顔で過ごす未来だということだ。
影との戦いが終わり、平和が訪れた。私は聖女として、今度はエドガーと共に、真実の愛と希望を胸に、これからの未来を切り開いていく。
読んでいただきありがとうございます!
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