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第15話 聖女の影

第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!

 私は一歩前に踏み出し、彼女に向き合った。「あなたを倒して、世界を守ってみせる!」


「ふふ……世界を守る? それもいいでしょう。しかし、私はお前の一部だ。私を倒せば、お前自身の一部を失うことを意味する」


 彼女の言葉が私の胸に突き刺さる。自分の一部を消す――それは自分を不完全にしてしまうかもしれない。でも、もう迷っている暇はない。この戦いは避けられない。


「それでもいい。私はこの世界を守るために戦う!」私は決意を込めて叫んだ。


「アイリス、無理をするなよ!」エドガーが再び私の横に立ち、強い決意を持った瞳で影を睨んでいた。


「これは私自身の戦いだから。私がやらなきゃいけないの」

「しかし……」

「エドガー、大丈夫。あなたたちがそばにいてくれる。それだけで、私は十分心強いから」


 彼の瞳が揺れ、私の言葉を理解してくれたのか、少しだけ口角が上がる。


「わかった。だが、何があっても、俺たちは君を守るからな」


「それならば始めよう。光と影の決戦を」


 影がそう言い放ち、黒い魔力が彼女の周囲に渦巻き始めた。まるでこの遺跡全体が彼女の魔力に呼応しているかのように、足元の石が揺れ、地面が震え始める。


 私は彼女の前に立ち、目を閉じて集中した。彼女を倒さなければ、未来視の力は戻らない。いや、それだけじゃない――私が本当に自分の力を取り戻すためには、この影と対峙しなければならない。


「さぁ、かかってこい、聖女よ!」彼女はそう叫び、黒いオーラをさらに強くしてきた。


 私は深呼吸し、彼女に向かって一歩を踏み出した。胸の中に渦巻く不安も恐怖も、今は全て押し殺して、彼女との決着をつける。


 影との戦いは熾烈を極めた。エドガーたちも影の放つ魔法に苦戦している。こちらが魔法を放っても防がれる。彼女の動きは私と同じ、いや、それ以上に鋭く、まるで私のすべてを見通しているかのようだった。


「お前は私だ、だからすべてが分かるんだ!」彼女の声が響く。


「それでも……あなたに負けない!」


 私の魔力と彼女の闇の力が激しくぶつかり合い、周囲の空気が燃え立つようだった。けれど、心の中にはもう迷いはなかった。私を支えてくれる仲間たちが、私に力を与えてくれる。


「この世界は……壊させない!」私は全力で彼女に向かって魔力を放つ。闇の中で私の光が一瞬強く輝いた。


 その瞬間、影が一瞬だけ怯んだ。それが私にとっての決定的なチャンスだった。


「今だ、アイリス!」エドガーの声が響いた。


「こんのぉぉぉっ!!」


 私は叫び、彼女に向かって全力の魔力をぶつけた。その瞬間、強烈な衝撃が遺跡全体を揺るがした。まばゆい光が広がり、影の黒いオーラを打ち破っていく。


「なんだと……?」


 影の声に驚愕が混ざった。彼女は後退し、私の光に押し戻されていく。私は一歩前に進み、彼女に向かって言った。


「私は影があることを受け入れる。でも、それに飲まれることはない。私は私自身として生き続ける。光と影があるからこそ、私は強くなれるんだ!」


 すると、影の顔に微かな笑みが浮かんだ。それは、悲しげであり、どこか安らぎを感じさせるものだった。


「そうか……お前は強いな、佐藤彩花。いや、アイリス・フォン・ルクス……」


 影は力尽きたようにそのまま倒れ込む。そこへ私たちは囲むように駆け付ける。


「アイリス、聞いて……」彼女が静かに口を開く。

「な、なに……?」

「ここは、最初の聖女が生まれた場所。お前が『光』として召喚されたのと同じように、彼女もまた光の力を授かり、この世界を救うために選ばれてきた。しかし、聖女の光が強ければ強いほど、影もまた強くなる。ここは、光と影が生まれた最初の場所だ」


「最初の場所……」


「そうだ。そして私はここで目覚めた」


 彼女の声は冷たい。


「私の心は世界への恨みつらみでいっぱいだった。この遺跡には『滅びの神殿』に封じられている“魔物を操る黒い霧”や“次元に裂け目を作る魔法”など、闇の力に関する記録が残されていた。私はそれを利用して世界を壊そうとした」


 そこまで話すと、今までとは変わり穏やかな声で語り掛ける。


「でも、負けちゃった……このままあなたの前世での悪い心は持っていくわね……」

「あ、あなたは……私の負の感情なんでしょ、それは私の一部じゃない!」

「聖女様にはいらないものでしょ。さあ、私はもう消えるからあなたは魔法陣を壊して次元の裂け目を閉じなさい」

「でも……」

「この気持ちまであなたに取られたら、私が生まれた意味の否定になる……これだけは私がもらっていくわ……」


 彼女は穏やかに微笑みながら、ゆっくりと消えていった。


「言いたいことだけ言って、それで消えちゃって……!」


 私は彼女の消えた場所をじっと見つめていた。少し悲しい気持ちもあるが、彼女は街を混乱させた張本人だ。消えて良かったんだ――自分にそう言い聞かせた。


「これで終わったんだよな……?」ルーカスが私に聞いてくる。


「うん……終わった」


 ルーカスがホッと息をつき、レオンも静かに剣を収めた。


「いろいろ思うこともあるかもしれないが、まずはあの魔法陣を壊さなければ!」

「レオンの言う通りだね。みんな力を貸して!」

読んでいただきありがとうございます!


今回の話、面白いと感じたら、下の☆☆☆☆☆の評価、ブックマークや作者のフォローにて応援していただけると励みになります。


今後ともよろしくお願いします。

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