第12話 王都動乱
第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!
黒ローブが放った王都の地下に潜む魔物は退治した。結局、黒ローブ本人はいなかったけど、これで滅びの未来への道はひとつ潰せたはず。これからも戦いは続きそうだ。
「アイリス、ちゃんと休めているか?」
エドガーの声に、私はハッと我に返った。気づけば、エドガーが私の隣に立っていて、心配そうにこちらを見ている。彼の鋭い視線は、いつも私の心を見抜くかのようだ。
「うん、大丈夫だよ」
「なにかあったらすぐに言えよ。俺がついてる」
エドガーはそう言いながら、そっと私の肩に手を置いた。
「そうだ、気が付いたことがあって、黒ローブがいると未来視が安定しないみたいなの」
「そうなのか……。だとしたら、やつがいるときは絶対に俺がそばにいよう」
彼の言葉はいつも力強くて、どこか温かい。エドガーのそんなところに、私は惹かれているんだって改めて感じた。
「ありがとう、エドガー。そのときは頼らせてもらうね」
私が笑顔を見せると、彼も微笑んでくれた。
――――――――――
次の日、ギルドに戻った私たちは、改めて王都の異変について情報を集めることにした。
「地下であの巨大な魔物を倒したのに、どうして未だに王都全体が落ち着かないんだ……?」
ルーカスがギルドの受付に資料を求めながら、少し苛立った様子で呟く。
「地下での異変だけじゃなくて、他の地方でも魔物の出現が増えているらしいわ」私はギルドマスターから聞いた情報を思い出しながら話した。
「つまり、あの魔物はただの序章だったということか……」レオンが腰につけた剣の柄を指でなぞりながら考え込む。
これも黒ローブの計画というのなら、このままでは、未来視で見た滅びの未来が訪れてしまう。
「過去の予言や文献をもっと調べる必要がありそうだな」とエドガーが言った。
「アイリス、君は未来視を使って、なにか手がかりになるものが見えるか試してみてくれ」
「うん、そうしてみる」
私はギルドの一角に座り、深呼吸をして心を落ち着けた。未来視は万能ではない。見たい時に見たいものが見えるわけでもない。でも、この状況を変えるために、少しでも未来のヒントを掴む必要がある。
未来視が反応した瞬間、私の視界に映ったのは――崩れかかった遺跡だった。
薄暗くはっきりとは見えないが、崩れかけた石畳に大きな石柱、祭壇が見える。そしてその中心には魔法陣が浮かび上がっている……。
「あの魔法陣は……まだ生きてる……?」
私ははっとして目を開けた。
「どうした? 何か見えたのか?」エドガーがすぐに駆け寄ってくる。
「祭壇のある朽ちた遺跡……そこに何か手がかりがあるかもしれない」
「遺跡か……そんな場所あったか?」ルーカスが首をかしげた。
「いや、確か王都の北の外れに古代の遺跡があると聞いたことがある」レオンが思い出したように言った。
「みんな、来てくれ! 街の北部で異変が起きている!」
ギルドマスターが慌ただしく部屋に飛び込んできた。彼の顔には焦りの色が浮かんでいる。
「異変?」私は急いで立ち上がり、エドガーもすぐに剣を手に取った。
「どうやら黒ローブが再び姿を現したらしい。強力な魔法を展開しているそうだ」
私たちはすぐさま王都の北部に向かった。そこには、これまで見たことのない異様な光景が広がっていた。地面が裂け、空気が震え、まるで世界そのものが歪んでいるかのようだった。
「これが……黒ローブの仕業なの?」私は呆然と立ち尽くし、目の前の光景を見つめた。
「そうだろうな。だが、ただの攻撃じゃない。あの光、まるで空間が歪んでいるような……」
エドガーが険しい表情で空を見上げる。その視線の先には、まるで裂け目のような異空間が広がり始めていた。裂け目の向こうは漆黒の空間が広がり、小さな光がぽつぽつと星が瞬くように光っている。
レオンが目を凝らして言う。「あの裂け目の向こう……夜空のようにも見えるあれはなんだ」
「……これって、次元の裂け目かもしれない」
昔アニメで見たような異次元へとつながる裂け目。創作ではなく現実に異空間が目の前に広がる。異世界からの力が流れ込み、現実世界に影響を与えているような……。この異空間が完全に開けば、何が起こるか予測できない。
「裂け目を閉じる方法を探さないと……!」
そこに突然黒ローブが現れ、私たちに強力な魔法を放ってきた。
「これが世界の終わりだ、もう邪魔をするな」
エドガー、レオン、ルーカスが彼の魔法を防ぎながら、私はその裂け目を閉じるための手がかりを探した。
そこでふと思い出す。
「遺跡だわ! あの裂け目を維持するための魔法陣が隠されている!」
私は未来視で見た祭壇に描かれたぼんやりと見える魔法陣の存在を思い出した。
「アイリス、よくやった! よし、こいつを倒して、魔法陣を破壊する!」エドガーが叫び、黒ローブに剣を向ける。
しかし、ますます闇が広がっていく。
「これが、すべての終わりだと言ったはずだ」
またしても、黒いローブの人物の冷たい声が響いた。彼の姿は薄暗い霧の中に消え、代わりに現れたのは、霧から溢れ出した強大な存在――闇の魔神だった。
「まずい……! これは……!」
近くにいたレオンが私を守るように立つ。
巨大な魔神が咆哮を上げ、地面が震える。その圧倒的な存在感に、私たちは一瞬動きを止めてしまった。
「アイリス、まずはあいつを倒すぞ!」エドガーが剣を握りしめ、私に力強く叫んだ。
彼の言葉に、私は心を奮い立たせた。彼となら、この危機を乗り越えられるはずだ――そう信じて。
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