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第11話 地下に潜む魔物

第1部全16章38,000文字となっています。評価していただければ続き書きます。ダメそうなら新作頑張って作ります!

 王都の地下水路に現れるという魔物。その調査をするために私たちは、地下に続く薄暗い階段を慎重に降りている。足元の石段はひんやりと冷たく、どこか湿っている。この場所の空気は重く、まるで私たちにのしかかってくるかのような圧迫感があった。


 ――今回の事件も、あの黒ローブが言っていた「代償」と無関係じゃない。

 私の未来視でもここになにかあることがわかっている。ただ、それが何かは暗くてよく見えなかった。


「みんな、足元に注意しろよ」


 エドガーが先頭を歩き、慎重に周囲を警戒している。彼の頼もしい背中が私の前にあって安心する。


「アイリス、何か見えるか?」


 エドガーが振り返り、鋭い瞳で私を見つめる。


「今はまだ何も……でも、近づいてる感じがする」私は深く息を吸い込み、少しでも集中しようとした。


「そうか。君の力、頼りにしてる」


 未来視の力は確かに便利だけど、だからといって万能ではない。見える時もあれば、見えない時もある。そんな時、彼の一言が私の支えになってくれる。


 地下の空気はさらに重く、息苦しいほど冷たい。


 湿った石の壁に沿って灯された松明が、ちらちらと揺れている。そこから漏れるわずかな光だけが、私たちの進む道を照らしていた。足音が反響し、その音が不気味に響く。


「……なんか、気味が悪いな」ルーカスがぼそっと言った。「こんな場所に、ずっと何かが潜んでるなんて、想像もしたくない」


「でも、私たちがここで解決しなきゃいけないのよね」と私は少し息を整えながら答えた。


 その時、突然未来視が反応した。頭の中で、映像が揺れ始める。未来が見えた――いや、まるで何かに強制的に見せられているかのような感覚だ。暗闇の中で、巨大な影が蠢いている。そして、その傍らに立つ一人の男……黒ローブだ。


(やっぱり黒ローブの仕業だったんだ……!)


「アイリス、どうした?」エドガーが私の異変に気づき、すぐに駆け寄ってきた。


「見えた……黒ローブがここの魔物を使役してる……!」


 その言葉に皆が緊張を走らせた。エドガー、レオン、ルーカス――全員が一瞬で表情を引き締める。


「また奴がいるのか……?」レオンが静かに剣を抜いた。


「とにかく、慎重に行こう。奴が再び現れたなら、俺たちの力が試されることになる」エドガーが短く指示を出す。


 地下の奥に進むにつれ、空気はさらに重くなっていった。

 時折、遠くから何かが這うような音が聞こえてくる。ルーカスが魔法で周囲を探るが、その音の正体はまだ掴めない。


「本当に不気味な場所だな……」ルーカスが眉をひそめる。


「大丈夫だよ、ルーカス。私たちならやれる」私は彼に微笑んで、少しでも安心させようとした。


「お前がそう言うなら、やれる気がしてきたよ。でも油断するなよ、アイリス」ルーカスが肩をすくめる。


 その瞬間、未来視が突然「爆発」するように反応した。視界が一気に開かれ、すぐに危機が迫っているのがわかる。


「来る……! 危ない!」私は思わず叫んだ。


 すると、壁の向こうから闇の波が押し寄せ、巨大な魔物が姿を現した。それは、地の底から湧き出したかのように蠢く、無数の触手を持つ怪物だった。


「下がれ! アイリス!」エドガーがすかさず前に出て、私を守る。


「そんな……こんなに大きな魔物……」


 闇の怪物は、まるで地下そのものが形を取ったかのような存在感だ。私はすぐに魔法で防御を展開し、仲間たちのために時間を稼ごうとした。


「皆、準備はいい? ここからが本番よ!」


 エドガーは剣を振り上げ、ルーカスが魔法の詠唱を始め、レオンもその隙を逃さずに攻撃態勢に入った。


 巨大な魔物がうねるたびに地下全体が揺れる。私は未来視を使って仲間たちに指示を出し、エドガーやレオンがそれに応じて戦っている。けれど、この魔物は手強い。何度も触手を切り落としても、すぐに再生してしまう。時間が長引けばこちらが圧倒的に不利。


「このままじゃ、キリがない……!」ルーカスが焦ったように叫んだ。


「アイリス、何か策はないか?」エドガーが私を見つめる。


 策……そうだ、前の世界の知識。何か、再生能力を無効化する方法がないか考えなきゃ。


「この怪物、細胞を高速で再生させてる……つまり、何かでその再生を妨げれば……!」


「何かって、何だ?」エドガーがすぐに応じる。


「再生を止めるには……凍らせれば抑えられるかも!」


「なるほど、氷か! なら俺がやってやる!」ルーカスが笑顔を浮かべ、両手を掲げた。「俺の魔法で、こいつを凍らせてやる!」


 私はルーカスに頷いて、氷の魔法を強化するための魔力を送り込んだ。巨大な冷気が魔物に放たれ、触手が凍り付く。魔物は大きな叫び声を上げ、再生する力を失っていく。

「今だ、レオン!」エドガーが指示を出す。


「行くぞ!」レオンが一瞬の隙をついて、剣を魔物の中心部に突き刺した。凍りついた魔物の体が崩れ落ち、地下には静寂が戻った。


「やった……倒したんだよね……」


 全身が疲れ切っている。でも、私たちは勝った……未来視の力と、みんなの力で切り抜けたんだ。


 私はその場にへたり込み、重い息を吐いた。エドガーがすぐに駆け寄ってきて、私の手を取りながら優しく微笑んだ。


「君がいなかったら、俺たちはもっと苦戦していただろうな」

「ありがとう、エドガー。でも、あなたが守ってくれたから……」


 彼の手の温かさが、また私を包み込む。今まで何度も彼に助けられてきた。その度に、私の心は少しずつ彼に惹かれていく。気づけば、彼の存在が私にとってどれだけ大きなものになっていたのか、今改めて感じている。


「アイリス、君は強い。だが、それでも俺に守らせてくれ」

「うん……」


 いつもそばで支えてくれる彼に、熱い気持ちが込み上げた。


 少し離れたところでは、ルーカスとレオンが仲良くやり取りをしていた。ルーカスが照れくさそうに「おい、王子様、俺の氷魔法、かなり効いてただろ?」と、レオンをからかっている。


「まあな。次の戦いでも調子に乗らずちゃんとやれよ」と、レオンは少し照れくさそうに返事をしている。


「おいおい、信じてくれよ、俺の腕を!」ルーカスが冗談っぽく肩をすくめ、レオンと笑い合っている。そのやり取りを見て、私はほっと安心した。


 仲間たちとなら、どんな未来も乗り越えられる。私はそう信じて、立ち上がった。

読んでいただきありがとうございます!


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今後ともよろしくお願いします。

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