世界廻転2
〔ルシフェル〕、〈ミカエル〉、{アイ}、で分けています。逆に分かりにくいかな⋯⋯
十三達は地下に下りると息を切らしながらアイから得た情報を正源に報告した。
「⋯⋯これが今まで世界を破滅と再生に導いてきたルシフェルとミカエルの勢力でないなら一体誰が⋯⋯
何にせよ魔法に詳しくないワシには魔法の影響は正しく読めん、紫暮に連絡をしようとしとったところじゃ、丁度良いわい」
十和呼のスマホからまさに緊急連絡を取ろうとしていたのでそのまま報告をする事にした。
通話の音が鳴ると直ぐに紫暮がでた。
「そろそろかかってくると思っとったわ、正源」
「なんじゃかかってくるのを待っとったんか? じゃあかけて来ればええじゃろ」
「この事態やで、忙しいんよ」
「まぁええわい⋯⋯今の騒動の情報は何か得ておるのか?」
「さーっぱりやわ、あんな規模の魔法。
何度転生しようと私には無理や」
「こっちは情報得たぞ」
「!? どうやって⋯⋯あぁ⋯⋯大賢者さんやろ」
「よう分かっとるの」
「で? 内容は?」
正源はアイから得た情報をありのまま伝えた。
「【概念魔法】に【星魔法】かいな⋯⋯そんなお伽噺でも無理なもん誰が発動させたんやろね⋯⋯」
「それはアイ殿にも不明じゃと、ただ⋯⋯ルシフェル殿が言っていた十三の中に二人を押し込めた黒幕、その線が濃厚じゃとは思っとる」
「今ある全ての情報からやとそこしか怪しいとこあらへんもんなー」
「何にせよ魔王、大天使と呼ばれる転生魂を捕獲し操り埋め込んだ何者かは存在する。
今回同様、正体不明の術を使ってな」
「人には無理、人外は祠、ダンジョンには存在しとるけどそこまでの規格外は想像つかん。
おるかも分からん神やとしてもその意図は?」
「月を魔石に変えてまでも地球に魔素を満たす意味か⋯⋯分かるわけなかろう」
「最近起きとったダンジョンのさらに深層からの地震とゲートから漏れ出た魔物の件、関係あるんかもしらんね」
「全て憶測の域を越えん、これから何が起こるのか全く分からん事態に対処せねばならんぞ」
「忙し思ってた状況が子供の遊びレベルまで落ちそうやわ、かなわんわほんま」
「手伝ってやりたいがここを離れる訳にもいかん、踏ん張れよ」
「言われんでも分かっとるわ、あんたこそぶっ倒れなや、こんな忙しい時に葬式なんや行ってられへんからな」
「お互い様じゃ」
「あー後な、あんさんどうせいつも携帯持ってへんやろ、持っときや、緊急連絡時に携帯探すとか借りるとかせんときや」
「うっ⋯⋯」
「バレてますねお義父さん」
「妖怪オババ⋯⋯」
「あぁ!? なんか言うたか!?」
「分かっとるわい言うたんじゃ」
「他の年寄り達には報告しといたるから感謝しーやほんま」
「素直にそれはありがたいのぅ」
「ほななんかあったらすぐ電話よこしや、後で会議開くから十和呼さんにオンライン参加手伝ってもらうんやで」
「分かっとるわい」
「ほなな」
何だかんだ言いながらも気を回してくる紫暮はプツリと電話を切った。
「さて、ワシは祠の中に変化が無いか調べねばならん。
十和呼さんはこっちを頼む、スマンが美沙さん手伝ってくれんかのカーバンクルの柘榴殿と一緒に」
「分かりました、いざの時の柘榴の次元魔法での帰還の為ですね」
「あぁ、そうじゃ」
「何があるか分からんからの」
さすがの正源もゲートが閉じてしまうと戻ることも出来ない、非常事態の為の保険が必要だった。
「あと一人⋯⋯」
「じゃあ私が」
「いや、月穂さんはダメじゃ、十三のストッパーじゃろ?」
月穂が立候補するも即座に断られる。
「じゃあ私が行くわ」
「那波か、良いじゃろう」
長女の那波が同行を許可された。
十三と月穂が突出し過ぎているがこの中では十和呼と美沙に続く年長、経験者である。
「お姉ちゃん気を付けてね」
「もちろんよ朱里」
春菜が無言で拳を突き出すと那波はそれに応えて拳をコツンと合わせた。
「お爺ちゃんいるから大丈夫だと思うけと気を付けて」
「分かってるよ?そっちは宜しくね春菜」
「うん」
「15分後で準備を終えてここに再集合じゃ、良いな」
「「はい」」
美沙と那波が準備を整えに地上へと上がって行った。
「私達は交代で外の様子を見る組と家の中でメディアやSNSから情報収集と休憩をする組に分かれるわ。
十三と月穂さん、私とは春菜と朱里ね。
お義父さん達が戻って来るまで2時間交代で、夜中通してになると思うから仮眠はしっかりとること。
まずは十三と月穂さんで外をお願いね、アラーム忘れないように」
十和呼の指示で地上へと戻り、そのまま十三と月穂は外のベンチに座って当番をする。
「とんでもない事になったね」
「全くだ、実はさっきからルシフェルがゲームの時間だと中でうるさいんだよ、ちょっと1回表に出すからなだめるの手伝って欲しい」
「分かった」
十三が目を閉じる。
「いいぞ出てきて、でも今回体は渡さないからな」
ゆっくり目を開けると赤黒い瞳が現れる。
〔十三このやろう! ゲームの時間じゃねーのかよ! ふざけんな!〕
「待てって、非常事態なんだよ」
〔関係あるかそんなもん! 今すぐ入れ替われ!〕
「ちょっとルシフェルさん、聞いて!」
〔あぁ!? 女は黙ってろ!〕
「ちょっ! ヒドイよそれは! って聞いたけどあなたも女性じゃない!」
〔だから何だってんだ? とりあえず黙っとけ、んな事よりゲームだって言ってんだろ!〕
{ルシフェル様、外気と月を見て下さい、異常事態の原因がそこにあります}
〔うるせーよ石ッコロ! 割るぞ!〕
事態の収集を図る為、現状を確認してもらおうとしたアイから魔素が漏れた。
{敵意、害意とみなし契約不履行の魂への消滅プロトコルを発動させますが宜しいですか?}
〔おわーっ待った待った!! 苛立ってただけだって、本気じゃねーよ!!〕
{警告は1度のみです、警告に従わない場合、状況によっては再度確認無しで実行に移します}
〔分かったって! 気をつけるからやめろ!!
ふーっ⋯⋯全く冗談も何も通じない奴だな、こんなんで魂散らされるなんてたまったもんじゃねーぞ〕
ブツブツ文句を言いながらルシフェルは渋々言われた通り月を見てみる。
〔あ? 月から魔素が流てねーか?〕
{何者かの夜空を埋め尽くす極大魔法により月は1つの魔石へと創り変えられました}
〔は? 月を作り変えただと?〕
{はい、文字通りです}
〔マジか、 誰だこんな面白ぇことやりやがったのは? 俺にも無理だぞそんな規模〕
「今世界は魔素を扱えない人達が皆昏倒してパニックに陥ってます」
〔ブハハハ、ダセェな! 魔素に当てられたくらいで脆弱すぎるだろそいつら〕
{この時代は昔と違い魔素がありません、人々の魔臓器は覚醒していないのです}
〔気合いが足んねーんだよ〕
「気合いでどうにかなるもんじゃないだろ⋯⋯」
〔んなこたーどうでもいいんだよ! ゲームやらせろっつってんだろ!〕
「この異常事態で出来るわけないだろ! 俺達は二交代制で外と中で情報収集や異変調査しないといけないんだよ!」
〔は? ふざけんな! そんな事で俺の時間を潰す気か!?〕
「悪いが人類だけじゃなく地球上の生物にとったらそんな事で済まないんだよ。
ていうか分かってるのか? 今のままだとゲーム出来なくなるどころか飯もヤバくなるかもしれないって事が」
〔な!? 飯もだと!?〕
「ゲームを運営し、ゲームをする為の電力を供給し、ゲームを継続する為の資金を循環させ、それを支える人達の食料を生産し、販売し、流通させ、生活を安定させているのは誰だ?」
〔人間共だろ⋯⋯あ⋯⋯〕
「な? 今のこの世界はお前が満足しようと思うと魔物じゃなく、残念ながらお前の嫌う人間の生活が安定してないと不可能なんだよ」
〔ぐぬぬ⋯⋯〕
「たぶん今、ゲームのログインも出来ないはずだぞ」
〔⋯⋯誰だ〕
「ん?」
〔誰の仕業だこりゃ⋯⋯〕
「お前やルシフェルを俺に押し込んだ奴じゃないかと俺は思ってる」
〔黒幕野郎か⋯⋯〕
「憶測でしかないけどな」
〔いや案外合ってるんじゃねーか? この俺とミカエルを出し抜いてお前に詰め込んだ奴だ、何が出来ても俺は驚かねー〕
「可能性として考えとこうぜ」
〔潰しに行くぞ〕
「え? どうやって?」
〔おい、アイ! ちゃんと名前で読んでやるから協力しろ! 調べつくせ!〕
{すでに行っていますが今の所不明です、行使された魔法の残滓、その震源、電磁波や魔素の流れ、様々な方向から逆算探知をしても掴めません}
「アイが何も掴めないって、どんな奴なの⋯⋯」
{クソッ⋯⋯ここはいっちょ俺が派手に暴れたら尻尾出すんじゃねーか?}
「やめてくれ、世界が滅ぶ」
{じゃあどーすんだよ!}
月穂がスッと息を吸って静かに話始めた。
「恐らくこれから世界中の人類の組織が動く、その動向は組織に属する正源さんや紫暮さんが掴むはず。
今回の状況を得て伝えたのはアイの能力、アイを組織にさらに売り込んで活動すれば最前線の情報が裏組織とアイから入るんじゃない?」
「凄いこと考えつくな月穂⋯⋯」
「個人が表立って動いても時間の無駄にしかならないもん、裏組織には入りたくないけどそれくらいしか最短の道は思いつかないよ」
〔ちまちましたやり方だがお前ら人間は群れるととんでもねー事やりやがるからな。
情報収集ってんなら組織を利用しない手はねーってか⋯⋯
いいぜ女⋯⋯その線進めろ〕
「いい加減名前で呼んでくれないかな? お母さんにハンバーグ作るの辞めてもらってもいいんだよ」
〔なっ!? 汚えぞ! ググッ⋯⋯くっ⋯⋯そ、その線で進めろ⋯⋯⋯⋯月穂〕
「分かったよルシフェル」
「黒い人だ⋯⋯黒月穂だ⋯⋯」
振り向いて片目をつむって十三に微笑むも、ドス黒いオーラが流れている様に見える月穂に十三は身震いした。
(座った目の笑顔で圧力で怒るタイプだ⋯⋯気をつけよう⋯⋯)
月穂への認識を少し改めた十三だった。
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