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世界廻転

溢れる程の星、天の川、どこまで行けば見えるのかな。

宇宙から見た夜の日本が安物のネオン装飾みたいに光っててもう何処にもそんな場所は無いんじゃないかって思う。

 全員の思考が止まる。


 その間も夜空を埋める魔法陣は形を変え、数を変え展開されていく。

 一同は見ているだけしか出来なかった。

 初めて見る夜空を覆うオーロラを見つめる様に。


「何⋯⋯コレ⋯⋯?」


 ようやく月穂(ゆえ)が声を漏らす。


「私だけじゃなくて全員見えてるのね?

 皆集まって手を離さないで、何が起こるか分からないわ!」


 十和呼の声により、あまりの光景に体が竦むように上手く動かないながらも皆で手を繋いだ、お互いを失わないように。


「こんな規模⋯⋯魔法陣を星を使って描いてる⋯⋯?」

「人間が可能な業じゃないわね」

「まさか十三の中の二人!?」

「いえ、家の中からは何も感じないし魔素も無いのに流石に無理よ」

「じゃあ一体誰が⋯⋯」


 思考を何とか進めてる内にも夜空の魔法陣は複雑さを増して構築されていく。


「見ているだけしか出来ないなんて⋯⋯」


 月穂はまるで自然災害を目の当たりにしているような感覚で圧倒的な天体ショーを見ているとふと感じた。


「この感覚⋯⋯魔素!?」

「間違いないわ、この少し甘く冷たい空気⋯⋯魔素よ」

「どこから!? 祠!?」


 ほぼ無意識に月穂は魔素の流れが見える魔眼を展開させていた、意図していなかった発動だが魔素があるから発動できていた。


「これ下から⋯⋯大地から立ち昇ってます!」

「やはり祠!? 見に行くわよ!

 那波(ななみ)朱里(あかり)と春菜を連れてお義父さんを呼んできて下さい! 月穂さんと美沙さんは私と祠へ!」


 十和呼の支持でふた手に別れ行動を開始する。


「一体何が起ころうと言うの⋯⋯?」


 高知の人知れない山村が慌ただしくなっているのと同時に、それは地球全体で起こっていた。


 大地から、海から⋯⋯

 この星から魔素が溢れでている⋯⋯


 テレビやSNSは夜空を埋める魔法陣の映像で埋め尽くされており、宇宙人、魔法、世界の終わり、ドローンショー等、色々な憶測やコメントで溢れかえっていた。


 しかし徐々に内容は世界の終わりへと収束していった、何故ならバタバタと人が倒れ始めたからだ。

 外傷もなく突然倒れ始める人々。

 その原因は魔素、大地から漏れ出ている魔素に当てられているのだ。

 十三達と違って呼吸法を会得しておらず魔臓器も覚醒していない人々は魔素に当てられた瞬間にバタバタと昏倒していったのだ。

 まずは外にいた人々が最初に倒れた、直接大地から溢れ出る魔素に当てられて。

 家や建物内にいた人々は外気から離れていた為ほぼ被害は無し、しかし、テレビやSNSで直ぐに騒がれたのを見て外を除くとそこら中に人が倒れているのが見えパニックに陥った。

 事を察知し、動くことができた人間は裏の人間を含めごく僅か。

 病院や警察、公共期間には朦朧とした意識の人々がなだれ込み続ける。

 世界中には続々と夜空の魔法陣と倒れる人々の映像で溢れ更なるパニックを生み出していた。


 三姉妹は客間、寝室など探し回ってやっと道場の倉庫を片付けている正源を見つけた。


「お爺ちゃん大変!! 外に来て!!」

「なんじゃ騒がしいのぅ、外がどうした?」

「夜空一面に魔法陣が!!」

「魔素も大地から漏れてきてる!!」

「なんじゃと!? まさか十三の中の二人か!?」

「たぶん違うみたいだってお母さん言ってた、とりあえず祠を見に行くって美沙さんと月穂さん連れて」

「とりあえず外に出るぞ、十三も連れてきてくれ」

「分かった!」


 三姉妹は十三を連れに部屋へ向かい、道場から出た正源は息を飲んだ。


「魔素⋯⋯本当に流れておるわ⋯⋯大地から放出されておるのか? いやそれよりもあの地球を覆うようなおびただしい魔法陣⋯⋯人の業ではない。

 何にせよ先ずは祠を確認して紫暮に連絡とらんとな」

「な!? なんだこれ!?」

「十三か、祠へ行くぞ」

「あ⋯あぁ⋯⋯そうだアイ!! この状況何か分かるか!?」

「既に解析を行ってはいますが該当する魔法、魔法陣、効果、術者候補、対象、どれも不明のままです」

「アイ殿でも分からずか⋯⋯ミカエル殿とルシフェル殿は?」

「既に心層にてコンタクトを取り確認済みですが何の情報もありませんでした」

「ふむ⋯⋯とりあえず祠へ行こうか、皆が下で待っておるじゃろう」


 底知れない恐れを夜空の魔法陣に抱きながら十三は正源について三姉妹と共に祠へと降りて行った。


「お義父さん!」

「十和呼、美沙さんも月穂さんも大丈夫か?」

「はい、私達も祠も大丈夫です、ゲートが空いている訳でもなくただ魔素が流れてはいますが」

「魔素が流れている以外は変わり無しか。

 十和呼さん携帯は持っておるか?」

「はい」

「紫暮の緊急連絡先にかけてくれんか」

「分かりました」


 携帯をかけている十和呼の横にいた月穂に十三は声をかけた。


「月穂、大丈夫か?」

「うん大丈夫だよ、空の魔法陣⋯⋯不気味だね」

「だよな、一体誰の何の魔法なんだ?」

「あんなの人に出来る領域を超えてるよ、神様の魔法だって言われたら納得いくレベル」

「神様か⋯⋯信じてる訳じゃないけどアレを見ると否定出来ないよな。

 アイ、神様はいるか知ってるか?」

「私が存在してから現在まで、その存在は確認されていません、神と呼ばれる程の魔法を使う者や能力を持つ存在はいますが神と呼ばれる存在とは別物です。

 この規模の魔法、近いとすれば太古のミトコンドリアとのエネルギー再契約時の魔法です」

「爺ちゃん俺は外で様子みとくよ、あの魔法まだ発動してないんだろ? 発動時に何があるか分からないし」

「うむ、では美沙さんと月穂さんとで上を頼む、何かあれば直ぐに知らせてくれ」


 十三は頷いて月穂と美沙と共に地上へと向かった。

 上に出ると夜空にはまだ魔法陣が蠢いてた。


「ほんとなんて複雑で壮大な魔法⋯⋯」

「こんな規模の魔法なんて誰も抗えないだろ⋯⋯発動したらどうなるんだよ⋯⋯」


 そう言っていた瞬間、複雑に蠢き構成されていた魔法陣がピタリと止まった。


「「「!!??」」」


 世界が息を飲んだ。


 夜空を覆っていた魔法陣が月へと収束されていく。


「月!?」


 全ての魔法陣が月へと吸い込まれるように集まり、大きな光を放った。

 それと同時に大地から漏れ出ていた魔素に加えて緩やかに月の光と共に魔素が大気から舞い降りてきた。


「なんだ!? 魔法が行使されたのか?? どうなったんだ??」

「月を解析しました」

「!?」

「少々驚きました。

 地球の衛星、月は一つの【魔石】へと変貌を遂げています」

「な!? 月が丸ごと魔石に!?」


 地球と共存とも言える関係の月、太陽系でも他に類を見ない特殊な衛星【月】は岩石で構成される天体では無く巨大な魔石へと創り変えられたらしい。


「誰がどうやってそんな事を⋯⋯」

「影響は!? 魔素が流れているのは分かるけどどういう魔法だったの!? 引力とか大丈夫なのかな?」

「現在出ている影響ですが、大地からの魔素と月から提供されている魔素により徐々に地球での濃度が上がってきています。

 呼吸法の体得、魔臓器の覚醒が済んでいない人間は全員昏倒しており全世界がパニックに陥っています」

「世界中がパニック⋯⋯」

「⋯⋯他に影響は?」

「今の所、月の変化と魔素以外は影響無いようです。

 恐らくですが理論上存在する【星魔法】や【概念魔法】ではないかと推測します」

「【星魔法】【概念魔法】?」

「はい、世の理、現象、事象、いわゆる世界を構成する原則ルールに関わる【概念魔法】。

 そして星の配置、動き、サイクルなどの法則を媒体に長き時間をかけ、年単位から万年単位をかけて空の星の動きを使って描き出す【星魔法】です。

 どちらも人の業ではまず不可能です」

「そんな⋯⋯神様がやったとでも?」

「この規模と内容、否定は出来ません」

「⋯⋯この事実、アイがいる俺達だけじゃないのか知ってるの?」

「とりあえず爺ちゃんに報告しよう」

「それがいいわね、行きましょう」


 世界で恐らく自分たちだけが知り得た情報を伝えるべく十三達は地下へと戻っていった。

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