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星見アイス

今回の話に入っている【惑星直列】、実は現実の今日である1月21日に実際に起こる天体ショーです。

現実には魔法陣は夜空に描かれませんのでご安心下さい。


たぶん⋯⋯

「これがいつも十三(じゅうぞう)君が食べていた料理の数々!!」


 目の前に並ぶ色とりどりの料理に爛々と目を輝かせているミカエルの口からはヨダレが垂れている。


「ちょっと大天使様、ヨダレヨダレ!」

「っとこれは失礼、でもこの光景を見ては止まるものも止まらなくなるわけで⋯⋯」

「見てないで食べちゃいましょう、ね」

「では先ずはこのスープから」


 春菜に突っ込まれ促され先ずは味噌汁に手を付ける。


「ズズッ⋯⋯」

「⋯⋯」


 最初の一口に皆がミカエルに注目してしまう。


「う⋯⋯うぅ⋯⋯ウマー!!」


 良かった⋯⋯と全員が胸を撫で下ろす。


「何だこれは!? 塩辛さと甘みと野菜と⋯⋯全部ウマー!!」

「衝撃で語彙力が⋯⋯」


 続いて白米をフォークですくい一口食べる。


「あっつ! でもほくほくウマー!! 昔の麦とかと全然違う!!」

「お米美味しいですよね、愛情注いで作られたこの村の田んぼで取れるとびきりのお米なんですよ」

「愛の味! 素晴らしい!!」


 次に目をつけたのはルシフェルも絶賛していた美沙のハンバーグ。


「これをルシフェルはとんでもなく気に入ってたな」

「和食ではないですが皆の好物ですから、お米にも合う味付けですし」


 パクリ


「!!!?」


 目を見開いたと思ったら涙を流し始めた。


「うわ! 大丈夫ですか!?」


 突然の涙に驚いた朱里(あかり)が問いかける。


「お肉ってこんなに美味しくできるんだな⋯⋯

 昔食べてた肉は基本的に固くて筋張ってて臭みがあって⋯⋯」

「そうだったんですね、今は餌や環境、育て方など色々な改善をご先祖様から繰り返してきた結果なんですよ」


 十和呼は歴史が紡いできた結果だとミカエルに答えた。


「素晴らしい! 魔物の肉の方が美味しくて人気


「最高級は竜種、ドラゴンの肉だね。

 見た目とは裏腹の柔らかい肉、臭みもなく何より味は他を寄せ付けない」

「むふーっ! 食べてみたいよミカエルさん!」


 鼻をフンフン言わせながら古のドラゴンの肉を所望する無謀な三女。


「残念ながら持ってないよ、朱里さんがもう少し大きくなってダンジョンで活躍できるようになったらドラゴン倒して食べちゃって」

「無茶言いますねミカエルさん」


 静かに那波(ななみ)が突っ込む横で静かに食べていた正源が口を開いた。


「竜か、確かにあの味は唯一無二じゃの」

「「「え!?」」」


 サラリと竜食を果たしていた事を暴露してまたモクモクと食べ始める。


「おじいちゃん竜食べたのー!!? どんな味どんな味!?」

「む? んー⋯⋯何というか⋯⋯うぅむ⋯⋯」


 朱里が目をキラキラさせながら質問するが、答えようとするも未知であろう味の説明の難しさを瞬時に悟って唸ってしまう。


「難しいですよねあの味を説明するの⋯⋯」

「該当する単語が無いんじゃよな、何と説明していいのか分からんわい」

「ブーッ、残念」


 ふくれる朱里を見て皆が笑い、また箸を動かし始めた。


「ルシフェルさんも言ってたけど、昔のご飯てそんなに美味しくなかったんですか?」

「美味しい国もあったんだけど基本的に味付けの種類がそんなに多くなかったかな、素材の味を活かすと言えば聞こえは良いんだけと、昔の店で食べる料理よりこの料理達のほうが断然美味しい」

「あらあらそんなに褒めてもらっちゃうと次回奮発しちゃいますよ」

「ですよね、気に入ってもらえそうな人気料理は日本には山程あるから何を出すか選ぶの大変になりそう」


 十和呼と美沙が嬉しい悲鳴をあげる。

 色々な話で盛り上がりながら気付くと余るくらいのはずの料理が全てキレイに無くなっていた。


「もう無理だ⋯⋯お腹限界⋯⋯」


 前回、ルシフェルが食べすぎてお腹が妊婦さんのようになっていたが、今回も同じくらい膨れ上がっている。


「十三⋯⋯大丈夫かしら⋯⋯」


 見事な膨れっぷりに十三の体が持つのか心配になってくる。


「皆さんありがとうございました、本当に楽しい食卓と信じられない美味しいは一生忘れません。

 あぁもうダメだ⋯⋯十三君⋯⋯返すね⋯⋯おやすみ⋯⋯」


 満腹感と満足感から急に襲ってきた眠気に抗えずミカエルはそのまま十三に意識を返した。


「う⋯⋯うぅん⋯⋯う⋯⋯ウップ!?」


 意識が戻ると同時に強烈な満腹感が襲ってきた。


「何だこれ⋯⋯って、うわー!!

 またお腹が妊婦さんみたいになってるップ⋯⋯デジャブ⋯⋯」


 周りを見ると同情の目で皆からみつめられていることに気付く。


「ルシフェルも⋯⋯ミカエルも⋯⋯人の体を何だと思って⋯⋯るんだ」

「南無兄蛇仏、耐えるのだ」

「拝むな⋯⋯何だ南無兄蛇仏って⋯⋯」

「信じる者は救われるんだよ」

「宗教⋯⋯間違ってね⋯⋯?」

「はいはい、片付けるから那波は十三部屋まで持ってって」

「えぇ!? また私!?」

「月穂さんや美沙さんにさせる気?」

「最近、長女使いが荒くなってきてない?」

「頼りにしてるのよ」

「毎回この役をしろと⋯⋯理不尽だ、お小遣いの値上げを要求する」

「考えとくわ」


 ヨシ! と少し心の中でガッツポーズをする那波を見て春菜が呟く。


「チッ⋯⋯お姉ちゃん上手く交渉の場使ったな」


 お小遣い値上げを狙い続けて常に失敗している春菜はつい舌打ちをしてしまった。


「あ、そういえばニュース見た? 天体ショーの」


 ふと思い出した那波が皆に問いかける。


「あぁ、惑星直列だっけ? 今日?」


 スマホのニュースで流れてたのを見てた春菜が答えると朱里が食いついた。


「何それ面白そう! 皆で見る?」

「彗星とかと違って肉眼で見えないよ」

「なんだ残念」

「まぁでも皆で星空眺めながらデザートのアイス食べても良いかもね」

「それ良い賛成ー!」


 見えない天体ショーを見ながらのデザートタイムが決定した。

 片付けが終わると皆で夜空を見上げながらの甘味を楽しむ為、小さなクーラーボックスに入れたアイスを持って前日に陰陽師の総司と壮大なバトルをした小高い丘に、十三と正源を除いた女性陣が歩いていった。


「綺麗⋯⋯天の川まで見える」


 溢れて落ちてきそうな程の星に圧倒される月穂。


「綺麗なんだけど生まれた時から見てるとそれがもう普通になっちゃった」


 春菜が感動している月穂と美沙を少し羨ましそうに見ながら答えた。


「何時だっけ惑星直列?」

「んー、時間は⋯⋯あ! もうあと5分だ」

「ギリギリだったね、ってまぁ見えないんだけど」

「さぁ皆アイス取って」


 十和呼がクーラーボックスを開けながら皆にすすめる。


「やったー! 柚子きな粉アイスだ!」

「柚子きな粉? 初めて聞いたアイスの味だよ」コレ

「んふふー、お母さんの手作りで美味しいんだよ」


 月穂は棒のついたアイスを一つとって味見してみる。


「うわっ美味しい! 好きな味だこれ」

「でしょー、やみつきになっちゃうよ」


 過度の甘味のない上品な味わいのアイスに一気にファンになった。


「あ、もうそろそろ時間だよ」

「皆で見上げながらの星見アイスだー!」

「良いね星見アイス」


 見上げていた星空を楽しみながらのアイスパーティーがその時間を迎えると一気に変わった。


 星を繋いだ夜空を埋める魔法陣が現れたからだ。

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