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電光石火と壁画の人


「いくぞアイ!」

「はい、アナライズ終了済みです。

 『弱点看破』の結果、首の下に魔石反応ありマーキングします」

「よし、電気属性発動させての高速戦闘をまずは試してみる」


 アイの持つ電気属性付与の恩恵がどんなものか、先ずは身体能力強化の可能性を試してみる為に魔素と電気を混ぜるイメージで練り込み身体に流す。

 バチチチ! と体から電気が迸る。


「おぉ! カッケー!」


 グッと踏み込んでデッサン人形の後ろに回り込もうと一歩踏み出した。

 それと同時にズガン! と激しい音が響き渡る。


「キャッ! 何!?」


 十三が居た場所は抉れて電気がバチバチと燻っている。

 月穂がふとデッサン人形の方を見ると砂埃にまみれて十三が壁にめり込んでいた。


「あがが⋯⋯」

「えぇ!? 何でそうなってるの!?」


 何とか自力で壁から崩れ落ちるとフラフラと立ち上がった。


「は⋯⋯速すぎ⋯⋯る⋯⋯」

「思考加速との併用をおすすめします」

「先に⋯⋯言ってく⋯⋯れ」


 ドサリ⋯⋯と十三はその場に崩れ落ちた。


「アイ! 魔法代理行使であのゴーレム倒して」

「分かりました」


 アイは直ぐに魔法陣を展開するが、いつもの平面円系の魔法陣ではなく立体球状の魔法陣を展開しそのまま魔法をデッサン人形に放った。

 放たれたのは大きな黒い弾、ゴーレムは避けようにも吸い寄せられ受け流せずに触れてしまうとそのまま圧縮されて消えた。


「すごっ⋯⋯何今の⋯⋯重力玉?」


 その威力に呆気に取られそうになったが直ぐに十三の事をを思い出して側に駆け寄り治癒魔法をかけた。


「うぅ⋯⋯ありがとう月穂」

「消えたと思ったら古代の壁画の人みたいになってたからビックリしたよ」

「なりたくてなったんじゃないけどな⋯⋯」

「それにしても凄い速さだったね、カミナリみたいだったよ」

「失敗したけどこれ制御できたら残像だけ残して消えるのできそうだな」

「またそんなこと考えて、壁画になっちゃうよ?」

「次は思考加速も使うから大丈夫、だよなアイ?」

「はい、問題ありません」

「な?」

「はいはい、成功するの楽しみにしてますよ」

「後まだ試してない能力は何だったけ?」

「戦闘不能時の生存優先代理戦闘、『大賢

者モード』です」

「それは流石に試せないね」

「じゃあこのまま最下層までいって帰るか」

「うん、そうしよう」

「それまで思考加速と電気属性の練習だ」

「私もやるよ、いざの時必要だろうし」

「それがいい」


 少し進むとデッサンゴーレムが二体佇んでいた。


「いくぞ」

「うん」


 バチチチチッ! と音を弾かせて二人は消えた。

 その瞬間、思考加速の中で時が止まったかの様な世界を進んでいた。


〘おおぉ、これが時間圧縮! あのスピードがまるでゆっくり歩いてるみたいだ。

 この違和感⋯⋯慣れるまで結構かかるぞ〙

〘横に並んで駆け出した十三が超スローモーションで遊んでるみたい、これ気をつけないと身体の方がおかしくなっちゃうなー〙

〘身体も属性強化されてますのでスピードによる衝撃や反動には耐性が出来ていますが全てはカバー出来ません、多様は禁物です〙


 二人とも瞬時にゴーレムの後ろに立つと十三がそのまま両手で後ろから二体の首元を撃ち抜く。

 砕けた首元から魔石が転がり落ちるとゴーレムも崩れさった。


「ほんと瞬殺だな」

「う⋯⋯もう体痛い」

「月穂はもうちょい体鍛えないと連続は厳しいかもな」

「むー、何か方法考えよう」


 そのまま進んで幾度かの戦闘を瞬殺で終えて行くとボス部屋まであっという間だった。


「これダンジョン移動短縮もできるよな、ってイテテテ⋯⋯足が⋯⋯」

「治癒かけるね、いつも長時間ダンジョン潜りっぱなしになるから時短は素直に嬉しいな」

「戦闘は自己研鑽の為に経験積んで移動時だけアイに頼むのありだな、空いた時間で色々他の事できるし」

「うん、ありだと思う」

「このままボス部屋まで突っ切って終わらせてゆっくり風呂に入りたい」

「さんせーい」


 そこからはまさに電光石火の如くゴーレムが現れては打ち砕き、高速で移動し驚くほどの早さでボス部屋にまで到達した。


「いでででで⋯⋯身体が⋯⋯特に足が⋯⋯」

「うぅ⋯⋯治癒かけるからちょっと待って」

「ありがとう、さて、前回はゴーレムVer戦乙女だったよな、今回も同じかな?」

「バージョンがあるって事は他のもありって事だよねたぶん」

「あー、確かにそうだな」

「どんなタイプだろ⋯⋯」

「考えても変わらないし行こうか、今回はアイがメインだし」

「お任せ下さい」


 十三は扉に手をかけるとコゴゴ⋯っと開き、中に明かりが灯るとボスの姿が見えた。

 中央に佇むその姿は『魔法使い』、石の三角の帽子とマントを纏った魔女だった。


「ダンジョンから吸収したデータによると、このゴーレムは『ゴーレムVer魔導乙女(アークウィッチ)』、魔法メインの戦闘ゴーレムです」

「厄介そうだな」

「魔法タイプもいるんだ、じゃあ私の出番かな」

「任せた、危なかったら割って入る」


 スッと一歩前に出た月穂は直ぐに魔法陣を構築し、得意の光魔法を放った。


『穢れ無き太陽の力を集め放て⋯⋯【光牙】』


 届くかと思った光線は直前で光る魔法陣に遮られた。


「やっぱりこんなのじゃ効かないよね、ていうか向こうは詠唱なしか⋯⋯」

「いえ、詠唱は行われています、魔導乙女の身体の表面を見てください」

「んー⋯⋯あ、なんか小さいのが蠢いてる」

「古代文字を身体に素早く浮き出させる事によって詠唱の代理としています、プログラムを書き出して発動させているようなものです」

「そんな方法で⋯⋯まぁ声とか出せないもんね」

「毎回アルゴリズムを変えてくるので私でも全ては読み取れません、魔法陣が発動されるまでは魔法の内容はほぼ不明です」

「アイでも分からないんだ⋯⋯見てから対処するしか無いってことか」

「来ます!」


 魔導乙女の身体に文字が蠢くと魔法陣が展開される。


「あの陣形、水系です」

「分かった!」


 直ぐに月穂も魔法陣を展開し魔法を発動する。


『壮大な父なる大地よ 穿たれる事なき地の誇り 抗う小さき者に護りを⋯⋯【地創壁】』


 バキバキと音を立てて月穂の前に土の壁がせり上がる、と同時に回転する水流が壁に激突した。

 銃弾の様に螺旋回転をしながら水流が壁を削ってゆく。


 ピシッ! と壁に大きな亀裂が入ったところで水流は相殺された。


「うわ、ギリギリだよ」


 間髪入れずに魔導乙女の身体に文字が刻まれていく。


「次が来ます、使われている文字数と魔素が先程とは違いかなり増加しています」

「アイお願い」

「お任せ下さい」


 魔導乙女の正面に複数の魔法陣が展開されていき放たれた魔法は複数の氷の槍。


「二重複合魔法の氷!?」


 水と風を同時融合させる中級魔法の氷による複数同時攻撃。


『【地焔壁】』


 アイが同時に燃え盛る石の壁を半円状に展開し氷の槍を防いだ。

 それと同時に月穂は水魔法を放つ。

 

『星を包む母なる水よ 立ち塞がりし遮る扉 水零破岩の清水にて 流渦奉天 全てを穿つ 収束せよ⋯⋯【螺旋水弓】』


 弓矢を放つように構えた手に集まる様に三本の水の矢が現れ、弾丸の如く回転しながら放たれる。

 それとぶつからないようにタイミングを少しずらしてアイがもう一つ魔法を放つ。

 魔法陣から炎が渦巻きそこから炎で創られた龍が放たれた。


 ゴーレムは渦巻き回転する半円形の豪風と水が混合した壁を纏い、水の矢と炎の龍をいなして防御した。


「すげー⋯⋯魔法合戦」


 間髪入れずに応酬される魔法の激突にあっけにとられて見ているだけだった。

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