富士『龍ノ塒』
手首の神経トンネルの手術をした為、日常生活が少しの間不自由で投稿期間がが少し開いたりするかもしれません。
出来うる限り週に二回は投稿キープしたい。
時を同じくして場所は富士山。
国が所有管轄している日本最大の祠『龍ノ塒』がそこにはある。
この星の大陸プレートが複数重なる世界有数の特異地点から生成される火山であり、そこは地脈、龍脈とも言われる星の力が流れ集まる最大の地の一つ。
そこは昔から常に『夢袖』の守りに特化特務部隊『護宝』が守護を担っている。した
パキンッ⋯⋯
小さく何かが割れるような音が響き、同時に地面が少し揺れる。
「最近多いな⋯⋯地震」
「噴火とか洒落にもならんからやめてくれよ」
「300年単位で噴火してる霊山だぞ、もう前回の噴火から300年越えてるんだ無いとはいえんさ。
噴火からここを護る為にも俺達は常駐してるんだから気にすんなよ、周りの都市や住民は大変だが」
「そっちは自衛隊の仕事だろ? とりあえず定期の計測器チェックしないとな」
「あぁ頼む」
祠のある空洞の隅には生活に困らない程度の家が建てられており、三人の隊員が交代で常駐している。
様々な計器などが設置されている施設と併設されており、有事の際はダンジョンへの次元を少し開いて魔素を開放し、次元結界を展開してここを護る任を任されている。
特殊訓練を積み、『夢袖』の中でも次元結界魔法に特化した上級魔法使い一人、中級魔法使い二人の猛者達だ。
計器をチェックしに施設の中を見に行った中級隊員の一人は既に計器をチェックしている人物がいるのに少し驚いた。
「矢倉隊長!? どうされたんですか? 計器チェックは俺達がしますよ!」
「ん? あー、さっき少し嫌な揺れがあっただろう? 気になってな」
特殊な術や世界でもまだ数少ない上級魔法を使えるエリート、『護宝』の第八部隊隊長の矢倉は小さな歪が割れるような音と揺れを感じた気がして計器を見に来ていたのだ。
「何か異常はありましたか?」
「震源はこの真下、マグマ溜まりやプレートではなくさらに深い部分からだった」
「そんな深いところから?」
「魔素計測器は⋯⋯僅かな濃度上昇⋯⋯か」
「誤差の範囲ですか?」
「いや、誤差では無く上昇を記す値に近い」
「空間に歪が!?」
「可能性はある、調べるぞ」
「はい!」
「魔素に当てられないよう呼吸法を忘れるな」
矢倉を先頭に施設を出ると立ち止まった矢倉に部下がぶつかる。
「いでっ! 隊長⋯⋯急に立ち止まらないで下さいよ⋯⋯って⋯⋯隊長?」
矢倉は立ち止まったまま部下に動くなと後ろ手に制止する。
矢倉が見つめる先にあるのはもう一人の部下、とその肩から腕に噛み付いている大きな蛇の様なモノ。
「ガハッ! 隊長⋯⋯すみ⋯ま⋯せん⋯⋯」
「次元の歪から這い出てきたか⋯⋯龍種」
「龍!?」
この富士の祠『龍ノ塒』のダンジョンはその内部にいる魔物はほぼ全てが龍、もしくは竜に属する種族。
危険度区分S級のダンジョン。
通常、隊長クラス三名以上で挑まければ逃げる事もままならない超難関ダンジョンだ。
「見たことない種類だな、そのサイズ⋯⋯幼体か? まぁ流石に魔素のまだ薄いここで全力は出せないだろうが」
「サポートします!」
「あぁ、直接手は出すなよ」
龍はグイッと噛み付いている獲物を前にぶら下げる。
「人質ってわけか? コスいことするじゃないのか⋯⋯」
矢倉は右手の指を二本、クイッと左へ曲げた。
ズドン!
と龍の横っ面に衝撃がぶつかり、その質量に吹っ飛ばされた。
龍はキョロキョロと周りを見るが何も無い、一体何がぶつかったのか皆目見当もついていない顔のその下顎をさらに衝撃がかち上げる。
噛み付いていた顎が浮くとさらに正面から顔面に衝撃が走り吹っ飛んだ。
(今だ!)
その隙をついて矢倉の後ろにいた隊員
「さて、俺の部下を人質になんて舐めがもう一人を助け出した。
たマネしてくれたお礼はキッチリしねーとな」
龍は体を起こし咆哮する。
その威圧で部下二人は体が硬直するように萎縮してしまった。
咆哮後、吐いた息を吸い込むように仰け反るとブレスを放った。
「臭せー息かけんじゃねーよ」
手を前にかざすだけでブレスは見えない障害物にぶつかった様に弾けて霧散した。
ブレスを防がれた龍は予想していなかったのか動きが止まった。
「なんだアレで俺が消し飛ぶとか思ってたのか? 相手の力量も分からない雑魚か⋯⋯興醒めだ、去ね」
人差し指を横に軽く薙いでくるりと後ろを向いて施設へと歩き出す。
するとゆっくりと首から紫色の血の筋が走り、首が胴からズレ落ちた。
「止血と応急手当をする、お前は『光宝』に連絡して治癒師を呼べ」
矢倉は施設の中にある救護室に運ぶ前に、写真を取る前に指でフレームを作るように左右の親指と人差し指をL字にして四角を作り、そこに患部が収まるよう囲って唱えた。
『剥離結界』
噛みつかれた部分を四角い結果が覆う。
「患部を周囲から隔離した。
それで治癒師が来るまで出血や感染を抑えるから動くなよ」
「ありがとうございます⋯⋯隊長」
(最近の深部からの地震の多さと今回の歪⋯⋯ダンジョン内で何か起きてるのか?
調査⋯⋯いや、討伐を視野に入れた隊の編成を上に打診しとくべきか)
安心したのか眠りについた部下を見やると、そのまま横でレポートと調査討伐隊編成の書類を作成し始めた。
その日の夜、レポートと隊編成の申告を受けた本部は直ぐに会議を開いた。
日本の最重要地点、富士『龍の塒』での戦闘を含む報告を受けてオンラインで緊急
の場を設けたのだ。
夢袖東京本部の本部長 【苗村 鳴海】
報告者『護宝』隊長 【矢倉 結太郎】
夢袖最高幹部『色袖』 【紫袖の伏見 紫暮】と【赤袖の久世 正源】
「龍が這い出てきよったか⋯⋯」
「記録上だと前回は1707年の宝永噴火前、1704年の富士鳴動の時だと書物にはあります」
「此度の龍による負傷者は一名、現在は『光宝』の治癒師による治癒魔法で回復しています。
龍の種類は不明、恐らく新種の幼体だと思われます」
「正源、あんたんとこの件といい今回といい⋯⋯」
「正源様の件?」
「あぁ、矢倉、あんたら隊長にはまた追って話すわ」
「⋯⋯分かりました」
「定期調査はまだ一月後ですので、特務として調査討伐隊を編成し早急に潜るべきだと矢倉と共に判断しました」
「原因不明の深層の地震と同時発生ともあり300年以上ぶりの異常事態、Aクラス隊員精鋭を三名以上で編成し調査に向かうべきだと進言します」
「せやね、調査は明日にでも入れるよう隊を組みなさい。
一人はうちの総司を行かせるわ」
「お孫さんを? 宜しいのですかこんな調査任務に」
「あの子の実力は私の折り紙付き、特に予定もなかったはずだし明日には富士に向かわせるわ」
「あー⋯⋯その総司じゃが、ワシんとこにおるぞ」
「なんやて!? あの子あんたんとこで何しとるん?」
「手合わせの約束を強引に果たさせに来おったぞ」
「昨日ちょいとワシの孫とワシとで相手してやったから今はまだ寝とるわい」
「わざわざ高知まで⋯⋯あの子の執念も大したもんやなー」
「えぇ迷惑じゃわい」
「ほな迎えやるから来たらそのまま放り投げてやったって」
「分かったわい」
「ではあとは『光宝』から治癒師、矢倉の所『護宝』から護りを一人、『闘宝』『魔宝』からも1人ずつの五名で編成し向かわせます」
「護宝からは自分が行きます」
「隊長のあんたが行くなら調査隊長も兼任しとくれ」
「はい」
「では明日の15時を目処に集合させ調査に向かいます」
「頼んだぞ」
会議を終えた三時間後、ヘリコプターが総司を迎えにくると正源は眠ったままの総司を放り投げてから何事もなかったように朝食をとりに客間へ向かっていった。
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