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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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交差する視線

 その晩、また夢を見た。どうやら今回の夢は前回の続きのようだ。


 ●■▲と▲●■は第三の星界殿と呼ばれるピラミッド状の建造物に入ってゆく。

 飾り気のない細い回廊を抜け少し開けた部屋に出た。祭壇のようなものが中央にあり、その後ろの壁には門の形をした石枠がいくつか嵌め込まれているが、壁にあるのでもちろん通れるものではない。


 ●■▲は祭壇に手をかざして壁の門に紫色の石を投げる。すると弾かれずにトプンと波紋を描いて吸い込まれた。


「さて、行くか」


 と▲●■の手をとって壁にできた波紋に向かって歩き出し吸い込まれて行った。



 二人の抜けた先は薄暗い洞窟。

 恐らく先程の祭壇は投げた何かの石が鍵となる古代のセキュリティドアか転送装置かだろう。どちらにしろ現代科学には無い代物だ。


「ここは最深部一つ手前だから面倒な戦闘はできるだけ避けて進もう」

「うん、そうだね、ソナーかけとく」


 フワリと▲●■を中心に円盤状の薄い光の波が放たれる。敏感な者ならば波紋には気付くだろうが向こうからこちらの位置取りを知られることは無い。


「オッケー、位置は掴んだわ」

「よし、行くぞ!」


 一つ下の最深部に向けて最短距離を走る。

 目的地の階段まで半分ほどのところ、T字路を右に曲がろうとするところでソナーにはかからなかった何かがいた。


「チッ! 湧いたか!」


 ここ地下迷宮では最深部にある力の中心に向かって重力があるように魔素が流れ溜まる。故に、深層へ行くほど濃くなりそれに影響された遺骸、遺体、生物、まれに鉱石や他の無機物までもが異能、異形の変化を遂げる。


「ワーム系か? 酸と毒液に気を付けろ!」


 長く細い影が見えた。


「分かってるわ! 障壁を展開するわよ!」


 ●■▲が視界に捉えた瞬間にその長いものがムチのように襲ってきた。


「グッ!」


 障壁に当たり軽減されても強い衝撃を受ける。その際に見えた姿はワームなどではなかった。

 見えたのは長い尾を持つ黒茶の竜種。


「なんだ!? 前回こんな系統のやついなかったぞ! 竜か⋯⋯まさかここ、龍まで湧くとかないだろうな?」

「新生だねこの竜種、まだ知能や経験も乏しく動く物に対応しただけのはず。連携して翻弄すればついてこれないはずよ!」

「よしっ! じゃあ援護頼む!」


 ▲●■はすぐに魔力を練り込み複数の支援と妨害の魔法をその指に展開させる。


 キラキラと光る銀髪をはためかせながら青い目が静かに開かれる。

 そのまま瞬時にして魔法陣と共に発動された足元の拘束魔法、顔の高さに目晦ましの光魔法、●■▲に敏捷と力を上げる支援魔法、そして再度、物理障壁。

 下位魔法といえど高難度の同時展開を一瞬で行う▲●■は規格外である。

 通常は二種、魔法に秀でたもので三種同時、それ以上に扱えれば将来の賢者候補にもあがるチャンスがある。

 多属性の同時発動は●■▲の十八番。まだ二つの属性を合わせた複合属性魔法の重複同時発動はできないが時間の問題だと周りからは言われている。

 頼もしい支援を得た●▲■は気分良さそうにニヤリと笑う。


 一方経験も何もない新生竜は目と足を潰されて嫌がるように阻害魔法に意識を向ける。

 その隙を●■▲が逃さずに胸と顎に掌底を叩き込む。外傷は無く、まるで中から破壊された様に血を吐き倒れ込む。


「なんで剣使わないの?」


 と▲●■が尋ねる。


「抜くの面倒、硬かったら結局後で殴らないとだし、手入れもしないとだしさ」

「まぁ⋯⋯結果が変わらないならいいけどちゃんと使ってあげなよ、拗ねちゃうんじゃない?」

「必要な時は抜くさ。とりあえず今は時間短縮! ちょっと勿体無いけど遺骸は時間ないから置いてくぞ」

「はーい」


 予想外の対処で少し時間を取られた為さらにスピードを上げて最短を進む。

そこからは他の魔獣や魔物には遭遇せずに最深部へと降りる階段に辿り着いた。


「前回この下の最深部では何も見つからなかった。こんな最深部だ、そんな訳は無い。

 本当に単に何もないのか、見落としがあったのか。

 ただ何か頭の隅に引っかかったんだ、絶対に何かがあると」

「今回は私もいるわ、あなたには出来ない違うアプローチから調査してみましょう」

「あぁ、助かるよ。じゃあ行こうか」


 ●▲■が先に階下へ降りていく。

 階段を降りた先には円形にくり抜かれたドーム状の部屋があった。二人で中心まで来るとグルリと見回した。隙間もなくキレイに施工された見事なドームだ。それ以外何もない。


「ほんと何もないわねここ。前回は壁も天井も床も調査したんでしょ?」

「あぁ、目に見える所は全て調べた」

「ソナーや魔素濃度は?」

「もちろん調べたよ。何の反応もなかった」

「私に出来てアナタに出来ないことは属性波長域での反応調査、魔素遮断と後はまの増幅反応かな?」

「じゃあ早速、遮断と増幅から頼む」

「じゃあ私に背中を合わせておいて、背後のチェックをお願いね」

「まかせろ!」


 ▲●■は虚空に両手、両指を個別に動かして一瞬で魔法陣を書き出す。まるで滑らかに高速でキーボードを叩いているような、もしくはピアノを連弾しているかのような美しい動きだ。

 青く光る魔法陣に魔素が吸い込まれていく。

 この世は全てあらゆる場所に魔素が含まれている、もし何か魔法の仕掛けがあるのならそれを遮断した場合、何らかの違和感や外部からの魔素の流れが見える可能がある。


「う⋯⋯体が重い」


 魔素をエネルギーとして取り入れ生活している人々にとって、それが存在しない空間は身体能力に影響がでる。


「我慢してね、もう終わりよ。

 んー⋯⋯何の変化も流れも感じないわね、じゃあ次は増幅反応」


 今度は両手で魔法陣を反転させる、吸収された魔素が開放されていくと同時に、魔素を増幅活性させてゆく。その密度が飽和して壁にミリミリと圧力をかけてゆく。


「おお、すげー」

「こっちも何も反応ないわね⋯⋯じゃあ属性波長の調査に入るわ」


 両手の指を広げその指一つ一つに異なる属性波長の魔素を展開していく。

 左手に基礎属性のうちの【地】、【水】、【火】、【風】、【光】

 右手に複合属性の【時】


 こんな軌跡のような緻密なコントロールと操作が出来るのはこの世界でも10人といない。

 全ての属性を使えるわけではない、▲●■は闇属性が全く使えないし無属性は灯すのみ。得意は光と水と創と時。他は使えるがその四つほど突出したものではない。

 それぞれの属性をソナーのように全体に波動を飛ばし波長に変化がないか調べる。

神経を尖らせ些細な変化も見逃さないよう目を閉じる。


「!」


 光と時の波長が交わる所に変化が表れた。

 そこにその二属性を集中させると接点を基軸に床から波打つ鏡のようなものがせり出してきた。

 警戒しながら見つめているとその鏡面に何かが映り始める。


(なんだこれは? 人影が二人⋯⋯異国の者?)


 手に荷物らしきものを携えた見たこともない服を着た黒い髪の少年と、同じく見たこともない服を着た栗色のセミロングの髪の少女が、大きな赤い石の門が連なる道を歩いている。

 大きな木の緑と青い空がとてもキレイにコントラストを描いている。その後ろには異国の社のような建造物が見える。かなり年代がたっているようだ。

 ふと急にその二人が振り返りこちらを見つめる。


(え? 見えてるのか? 何の映像なんだこれは?)


「●▲■これ何? あ、見られてた? 見たこと無い服装だけどどこの国かな? キレイな場所だねー」

「わからない、なんかこっちに気付いた感じがしたけどどっかと繋がってるのかこれ? おーーい! 見えてるかー?」

「あ、向こう行っちゃった。見えてるわけじゃないんだね。じゃあ何だろ?」

「お、消えた。なんだったんだろうな? 記録はしたか?」

「もちろん、抜かり無いわよ」

「ならOKだ、じゃあもう少し調べてから帰ろうか」

「うん」



 ハッ! と十三は目が覚めた。


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