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陰陽師と地下の天使

作品はまだ夏ですがメリークリスマス!

 十三と総司の治癒の為、ダンジョンに入った一行は直ぐに治癒魔法で治療を始めた。


「説明、お願いしますねお義父さん」

「うむ⋯⋯」


 正源は少し前にあった手合わせの約束の件から順に話し始めた。


「陰陽師⋯⋯紫暮様のお孫さんだったんですね」

「陰陽師って実在したんだ」


 アニメや映画の世界だと思っていた存在が現実にいる事に月穂は少し驚いた。


「それにしてもお義父さん、ここまでボロボロになるまで相手して⋯⋯」

「やらんとやられる程の実力を備えておったんじゃ、この若さでとんでもない奴じゃよ」

「十三の左手の不思議な傷と肋骨は?」

「これ? これは総司に召喚された『青龍』にやられたよ」

「『青龍』!? って四神の!?」

「そう、四神の」

「よく生きてたわねあなた⋯⋯」

「左手の毒草みたいなのが生えてきてるのは?」

「怒った青龍のブレス⋯⋯毒だったんだよ」

「⋯⋯とんでもないもの貰ったわね、治癒だけじゃなくて解毒もしないといけないじゃない」

「治癒は私がかけれますけど、解毒はまだ覚えてないのでお願いします十和呼さん」

「四神青龍の毒? 私に消せるかどうか⋯⋯」

「青龍の放った植物毒ですが四神という高位の存在の術式の為、通常の解毒魔法では困難だと思われます。

 私が解析しますので十和呼様は上位精霊のウンディーネであるアクア様の召喚を、月穂様はドライアドの翠葉様をコン様に呼んでもらって下さい」

「アイ、手伝ってくれるのね。

 そっか、植物毒なら木の精霊ドライアドと治癒魔法の得意なウンディーネなら何とかなりそうでだね」

「流石は大賢者アイちゃん! すぐにアクアを呼ぶわね」


 召喚魔法でアクア、コン、翠葉を呼び出すと十和呼と月穂はそれぞれに事情を説明し始めた。

 アクアは少し難しそうな顔をするがコクリと頷いてアイと翠葉の毒解析を待つことにした。


「じゃあ私は陰陽師の人の治療に入ります」

「お願いね月穂さん」


 月穂は総司の元へといき症状を見る。

 顔から上半身にかけてはあまり傷はないが他の部分は何を受けたらこうなるのか、痣、裂傷、出血、骨折⋯⋯様々な負傷が見られる。


「骨折の部分を重点に治癒をかけたほうがよさそうね、アイどう? 他に重傷箇所はある?」

「重傷箇所は腕と右足の骨折と、左足の粉砕骨折です、出血は酷くありませんので粉砕骨折ヶ所を重点に行って下さい。

 治癒補助が必要ならばいつでも言って下さい」

「ありがとう、大丈夫よ。

 自分の修練のためにも可能な限り自力でやるわ」


 まだ拙いながらも月穂が必死に治癒を施していると約五分後に翠葉とアイの解析の報告かはいる。


「毒の解析が終わりました、契約魔法を応用して契約書式に情報を書き込み直接内容を送り込みます、よろしいですかアクア様?」


 自分の情報を全て覗かれてしまう魔素でのニューロリンクを必要としないアイの提案にコクリと頷いて応える。

 アイは契約魔法同様、魔素で構成された契約書をレポートの様な内容に変更してアクアの額の前に展開させると、パラパラとめくられてアクアの額に吸い込まれていった。

 毒の構成成分を理解したアクアは直ぐに解毒魔法を構築し十三の腕にかけ始めた。

 ジュウッという音と共に十三の腕から煙があがると、傷口から生えていた奇怪な植物が暴れ始める。


「ぐああぁ!!」

「我慢しなさい十三、それだけ厄介な毒なんだから」


 普通にスッと魔法で消えるのかと思っていたらまさかの激痛に悶絶した。


「解毒まで少し時間かかりそうだね」

「マジか!? 勘弁してくれ!」


 十三が悶ていると治癒途中の総司が目を覚ました。


「グッ⋯うぅ⋯⋯ここは⋯⋯」

「ここは地下のダンジョンです、治癒魔法を使うために降りてきてるんですよ」

「天⋯⋯使が⋯⋯見える」

「え? 大丈夫ですか? ちゃんと見えてますか?」

「ここは⋯⋯天国⋯⋯か」

「ここは地下ダンジョンです、天国じゃないですよ」

「ダンジョン⋯⋯ダンジョンには⋯⋯天使がいたの⋯⋯か」

「頭打ったのかな、幻覚みてるみたい⋯⋯」


 徐々に総司は少し頭がはっきりしてきた。

 しかし目の前に見えているのは蒼い輪郭の瞳の天使のままだ。


(夢か? 現実か? どちらにせよ何て美しい人なんだ⋯⋯)


 体の痛みを感じるのも忘れて心地良い治癒を受けながら天使を見つめる。

 そして意識はまた薄れていった。


「あ、寝ちゃった⋯⋯」

「完治まではまだ時間がかかりそうだから寝かしておいてあげなさい」

「そうですね」

「それにしてもお義父さんが少し本気出すくらいなんて、とんでもない若者がいたものですね」

「血と才能、優れた師と尋常ではない努力。

 全てを注ぎ独創性をも組み込んだ秘術と能力、人外と言われても納得するレベルじゃったよ」

「そこまでですか⋯⋯頼もしい若い世代ですね」

「あぁ、道を間違えずここまできたのは紫暮の存在じゃろうの」

「あの方の元なら横道に逸れる事は難しいでしょうね」

「アレの前で愚行を犯すバカはおるまいよ」

「お義父さん以外はね、フフフ」

「うるさいわぃ」


 その後、約十分ほど十三は解毒の苦痛に叫び、総司の治癒にはさらに十分ほどかかった。

 皆で地上へ戻ると総司を来客用の寝室に寝かせ、それぞれ自分の部屋へと戻り、十三以外は眠りについた。


 十三は着替えた後また直ぐに地下へと降りなければならなかった、魔王と大天使のVRゲームの時間だからだ。

 地下に置きっぱなしにしてあるVRデバイスの前にくると、傍から見ると変な奴確定だが自分にの中にいる二人に声をかけた。


「おーい、今日はどっちが先にゲームするんだ?」


〈僕だよ、ミカエルが先!〉

〔毎回コイツと絡むのめんどくせーから順番に1日ずつ先後変えることにしたんだよ〕

〈絡むのめんどくさいとか言うな! 普通にヒドイぞ!〉

〔だからめんどくせーって言ってんだよ〕

〈何をー!!〉

「はいはい、喧嘩は無し!

 モメるならゲーム時間は無しだからそのつもりで」

〈ウワー! だめだめ! 喧嘩なんてしてないから!〉

〔さっさとプレイして来いガキ天使、俺は自分の番まで寝る〕

〈ガキ天使⋯⋯〉

「オッケーオッケー、じゃあミカエル準備はいいか?」

〈いつでも!〉

「じゃあ俺は心層に引っ込むから、攻略頑張れよー」


 十三は目を閉じると直ぐにミカエルが表に出てくる。


「今日は十三君大変だったね、中から見てたけど強かったよあの術士の子。

 出てくるんだよね時代の節目にはああいう傑物。

 第五の太陽の終わりは思ってるより近いのかもね⋯⋯」


 これまで見てきた第四の太陽までの滅亡と再生、その経験則からみてもその境界は目の前に迫ってるようだとミカエルは感じていた。


「っと、今ここで出来る事は何もない。

 僕は僕の今出来る事をやらないとね!」


 と言ってVRゲームを起動させるミカエル。

 誰かが見ていたら確実にツッコまれる状況なのは間違いない。


「前回はボロボロにやられちゃったけど今回はそうはいかないから! 待ってろよースライム! 狩り尽くしてやる!」


 ちゃんとチュートリアルを受けたルシフェルと違い、スキップしていきなりの初心者クエストのスライム討伐でボロボロにされ、顔面を地面に突っ伏したままログアウトしていった影像が掲示板から拡散されている事をミカエルは知らない。


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