表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/120

再会、隻眼ウサギ

 地下のゲートを通って着いた先は以前と変わらない洞窟回廊だった。

 このダンジョンは入る人物、人数によって形を変えるらしい。

 同じメンバーで入ったから前と同じ構造のままなのか、それとも内容が変わっているのかはまだ分からない。


「前と一緒かな?」

「どうだろうな、見た感じ変わってないけど、とりあえずゆっくり進んでみよう」

「あっ、その前にコンちゃん呼ばないと」

「そうだな、頼むよ」



 月穂(ゆえ)は手をかざして魔法陣を形成すると詠唱をする。


『契約者 月穂の名の元に顕現せよ⋯⋯《コン》』


 地面に落とされた魔法陣が光り、ゆっくりと片手を頭の支えにして寝転がっているコンが現し世に召喚される。


「コンちゃん久しぶり! ん? 久しぶり?」

「ははは、つい先日だけどなんか前の事に感じるよな、ってか暇だったのかコン⋯⋯その登場の仕方⋯⋯」


 スッと空いている片手で挨拶をする大根コン。

 面倒臭そうに立ち上がると魔法陣を形成して翠葉を呼び出した。


翠葉(すいは)ちゃんも久しぶり! じゃなかった先日ぶり!」

「はは、何だろうなホントこの久しぶり感覚は?」


 翠葉は頭の葉っぱを嬉しそうに振り回しながらジャンプしている。


「アイの魔素補給でこれから頻繁にダンジョン来るから宜しくな。

 もし嫌だったら言ってくれよ」


 コンが頭を横に振りながら親指を立てる。


「相変わらずどっちか分からんそのリアクションどうにかならないのか⋯⋯」


 空いているもう片方の親指をグッと上げる。


「いやだから分からないっての」

「あははは、コンちゃん面白い」


 十三(じゅうぞう)は諦めて肯定と受け取って話を進める。


「前みたいに数日かけて踏破とかはしないから、時間内に進めるところまで行ったら帰るからな」


 今度は翠葉も真似して親指を立ててきた。


「翠葉まで⋯⋯コンのようにはならないでくれよ」


 それを聞いてコンが十三にゲシゲシと蹴りを入れる。


「痛てー! 加減! 加減!」

「あはは、今のは十三が悪いよ」

「痛ってー⋯⋯探索に支障でるぞホント」


 コンはそのままフイッと向き直り回廊を進み始めた。


「待ってよーコンちゃん」


 トタトタとコンの後ろを走って行く月穂を見ながらフーッと息を吐き出して気を引き締め直し歩き出した。

 少し進むと前回も戦ったカブの魔物が地面から二体現れた。


「同じ魔物ってことは前と同じダンジョン構成なのかな?」

「みたいだな」

「それだと道も知ってるから分かりやすくていいね」

「前回と一緒だと後で昆虫祭りになるけど大丈夫か?」


 その言葉を聞いてコンと月穂が硬直する。


「おーい! 戦闘入るのに硬直するなよ!」

「ハッ! 戦闘直前にそんな事言うからだよ!」


 飛びかかってきたカブをギリギリで避けるコンと月穂が恨めしそうに十三を見る。


「ゴメンゴメン!」


 十三が誤りながらカブ二体に蹴りを入れて倒した。


(アイのステータス魔法で見た前回の内容だと御神木を倒してたぶんレベルかなり上がってたみたいだから余裕だな)


久世 十三(20)He/Him

《レベル》31

《種族》 人族(契約の子孫)

《HP》 320(+50)

《MP》 75(+50)

《力》  136(+50)

《防御》 103(+30)

《敏捷》 114(+50)

《運》  95

《属性》

地、光、闇、無

《装備》

不落の羊の毛(防御+30)、AI魔石・大賢者

《称号》

天魔の飼い主、魔闘気使い、魔功術使い、久世古流武術・師範代

《スキル》

真呼吸Lv6、気功術Lv7、久世古流武術Lv7、魔闘気Lv1、魔功術Lv3、魔瞳術Lv2、地魔法Lv1、光魔法Lv1、闇魔法Lv1、無魔法Lv1


 以上が前回のステータス。

 恐らくカブの魔物は高くてもレベル2か3、相手にもならない。


「魔石の経験値、少ないだろうけど分配で割るから」

「うん、いいよ」

「ドロップの野菜はマジックポーチに入れといて」

「分かった」

「とりあえずボス部屋までサクサク行こう」


 その後幾度かカブと人参の魔物と戦い、時間もかからずボス部屋まで到達した。


「前はムキムキ隻眼ウサギだったな、戦闘後にとどめを刺さずに再戦約束して立ち去ろうとしたら経験値魔素を譲渡されたんだったよな、まだいるかな?」

「経験値譲渡してだいぶ縮んじゃってたからこれからが大変そうだったよね」

「あれだけの戦闘センスもあったんだ、また強くなってるよあのウサギは」


 扉に手を当ててグッと押すとゆっくりと開き、ボボボッと壁に火が灯る。

 警戒しながら中に入ると一匹のウサギの影が見えた。


「よう、元気そうだな?」


 姿は小さいままだが隻眼のウサギがそこにはいた。

 ウサギはかつて破れた相手、十三だとすぐ気付き軽く跳ねながら十三の前まで走ってくる。


「どうだ? また強くなったか?」

「キュ!」


 と返事をするが今の十三を見て驚いた表情をする。

 何があったのか分からないがとんでもなく強くなっている十三に驚嘆の表情を浮かべたのだ。

 まだまだ届かないどころか離された実力を目の前にして少しうなだれる。


「あの後さ、とんでもない奴らと戦ってきたんだ。

 お前もまだまだ強くなるんだろ?」


 ウサギに向かって力こぶを作る。

 うなだれていた頭をあげてウサギは強い意志のこもった目で頷く。


「なぁ、良かったらお前も一緒に来るか? コン達みたいに」


 ウサギは何を言っているのか分からないと言わんばかりに首を傾ける。

 コンがウサギの所まで行って肩を叩き手を取る。

 それで意図を察したウサギは戸惑った。

 負けて再戦を約束した敵と行動を共にする? 何でそうなる? でも一緒に行けばあの強さに追いつけるかも⋯⋯

 と困惑しながら思案を巡らし、決断をする、この階層にいても追いつけない、限界は超えられないと。

 頷いて十三の元へ歩み寄り拳を突き出すと意図を汲み取った十三も拳を合わせた。


「もちろん再戦も忘れないさ」


 かくして一行に隻眼のウサギが加わった。


 人間二人(魔王と天使付き)大根、木の精霊、ウサギ⋯⋯


 端から見ると何があったらこんな構成になるのか一ミリも分からないパーティーが出来上がっていた。


「ウサギじゃアレだし名前どうしようか?」

「んー、隻眼だし強そうな『正宗』とか? 独眼竜」

「おー、強そう! どうだウサギ?」


 名前とかよく分からないウサギはそのまま頷いた。


「じゃあ宜しくな正宗」

「宜しくね正宗ちゃん」


 パーティーそれぞれと拳を合わせて地下二階へと降り立った。

 恐怖の階層、昆虫階層へと。

もし少しでも興味があればブックマークや下の星評価を頂ければ励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ