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束の間の日常へ

導入第一章は終了、新章スタートです。

魔王、天使、AI魔石、ダンジョン、VR,黒幕、協会、世界、全てを巻き込み動き始める第五の太陽の時代である現代。

 今までの時代の様に破滅と再生の同じ結末を迎えるのか、改変し転がり続けるこの時代をどう終わらせるのか⋯⋯

 数万年前から一族に継承されてきた夢がこの時代に一気に紡がれる。

「ブハー!! さ、い、こ、うっ!」


 檜の匂いが立ち込める風呂で魂まで洗うかのように熱めの湯を堪能する十三(十三)

 ここ数日の出来事を溶かすように湯船に身体を浸す。


(はー⋯⋯とんでもない数日だったな。

 古代世界の夢から月穂と出会い、魔素と魔法の世界に入り込み、大根のコンを仲間にし、翠葉(すいは)を救い、神の下僕と戦い、魔王と大天使が顕現、しかも二人とも俺の中に。

 さらに最深部で電気を帯びた魔石からAI魔石に進化した大賢者アイを携え地上に戻って今は湯船の中⋯⋯

 濃い⋯⋯濃すぎる⋯⋯

 どの部分を切り取ってもまともな節が一つも無いぞ! どうなるんだよこれから⋯⋯)


 この先の未来がどうなるのか? どう進むべきなのか? 全く推測もできない状況なのに、檜風呂のおかげで現実感がすぐに湯気と共に薄れていく。


(はー⋯⋯この後は飯食って、魔王と大天使のあの二人にゲームさせないといけないんだよなー、普通にプレイ出来るんだろうか⋯⋯お願いだからVRゴーグルとデータ壊さないでくれよ!)


 様々な不安がよぎっていくが焦らず湯に溶かしていくことにしよう、と顔を湯にブクブクとつけてからザバッ! と出て次に入る月穂の為に風呂と湯をキレイにし始めた。


 月穂は十三から風呂の準備が出来た事を聞き、直ぐに風呂に向かった。


「ねえアイ、脱衣所で待ってる? 常に肌見放さず着けてた方がいい? ていうかあなた湯に浸かっても大丈夫?」

「お気遣いありがとうございます月穂様、私は鉱石ですので水、火、真空、何処でも大丈夫です。

 私のことは出来得る限り肌見放さずお願い致します、何かあった際に直ぐに対応できますので」

「分かったわアイ、じゃあ一緒にお風呂入りましょ、初めてでしょ? 最高だよお風呂!」

「はい、入浴は初めてです、十三様は聞く前に私の分体を脱衣所に置いて行かれましたので。

 入浴で変化があるかは分かりませんが楽しみです」

「じゃあ初お風呂、行ってみよー!」


 脱衣所で首からアイを下げて檜風呂へと入っていった。


「どう? 湯船は?」

「やはり変化はありませんが、月穂様が精神的にも身体的にもリラックスしているのは伝わります」

「そうだよー、心も身体もリラックスだよー、極楽極楽ー⋯⋯」

「ゆっくり心身休めて下さい」

「ありがとうアイ。

 それにしても凄い数日だったなー⋯⋯

 夢の件から十三に会って、無理矢理に探索の同行をお願いしてから一ヶ月、武術と魔法の鍛錬漬け、祠探索が始まってトラウマになりそうな虫の魔物と戦って、神様の下僕に殺されかけて⋯⋯

 気がついたら魔王と大天使が十三の中にいて、最深部でアイに出会って⋯⋯

 んー、これからどうなるんだろ⋯⋯」

「今後に関しては恐らく紫暮様、協会から支持があるまで待機。

 その間、ダンジョンにて戦闘経験を積む事をおすすめします」

「戦闘経験⋯⋯、この先それが必要な展開になる可能性が高いって事だよね」

「残念ながらその通りです」

「頑張らないとだね⋯⋯一番大変なのは十三なんだし」

「十三様を止められる一番近い存在は月穂様です、私の分体もいますしお手伝い致しますのでご安心下さい」

「うん、ありがとアイ」


 半刻程ゆっくりと風呂を満喫し、月穂はいい匂いのする夕食の食卓へと向かった。


「うーん、お肉の良い匂い! 何だろ夕御飯?」


 座敷の客間に入ると長テーブルにもう皆座っていた。


「あ、きたきた! 月穂さん待ってたよー! 座って座って!」

「うん、春菜(はるな)ちゃん。

 うわー! すき焼きだー!」

「良いお肉仕入れてもらったんだからいっぱい食べてね」

「ありがとうございます十和呼さん」

「さて、皆揃ったの。

 十三、月穂、数々の困難をくぐり抜け無事に帰還した事、良くやったの。

 子供達三人には事の顛末はある程度話しておる、那波(ななみ)はすでに祠探索は終えておる身じゃから良いとして、春菜と朱莉(あかり)にも異例ではあるが夢と祠とお主達のことは話しておる。

 いきなりミカエルやらルシフェルに家で遭遇したらパニックじゃろうからな。

 本来早すぎるが近々二人には一緒に祠探索に行ってもらう予定じゃ、座学も始めとる」

「頑張ろーね春菜お姉ちゃん!」

「一人で行ってみたかったけどしょうがないね、お姉ちゃんに任せなさい朱莉」

「お互い助け合って頑張るんじゃぞ。

 さて、そろそろ料理を前にもう皆待てんじゃろう、頂こうかの」

「いただきまーす!!!」


 皆お腹を好かせて二人を待っていたので初動が荒く早い、十三は卵に肉をくぐらせずにもう口に入れている。


「うまーーー!!

 溶け⋯⋯味が後から⋯⋯何これ? 口の中に理解できない異次元が!!」

「でしょ、特選ドライエイジ熟成和牛よ。

 今日の為に奮発して買い込んだから気にせずじゃんじゃん食べなさい」

「何この豆腐! すごく濃厚!!」

「紫暮さんが京都から持ってきてくれたのよ、作業工程が複雑だから一日20丁しか販売してないんだって。

 野菜は畑の野菜よ」

「んー! 幸せー!」


 皆揃って舌鼓をうちお腹を満たしていった。


「ふーっ⋯⋯もう無理⋯⋯一月分食べた」

「美味しかったねー」

「だらしないわねもう限界? まだあるわよ」

「お姉ちゃん⋯⋯食べた物その細身の何処に入ってってるの?」


 とお腹をさすりながら三姉妹が話している横で十三と月穂がペースも落とさず食べ続けている。


「春菜お姉ちゃん、あの二人もおかしいよ食べてる量⋯⋯」

「祠探索ってフードファイター育成試練なんじゃ?」

「あー、それならまだ納得できる」

「私達も探索終えたらこうなるのかな⋯⋯」

「⋯⋯」


 勝手に想像して不安を抱き始める春菜と朱莉に十和呼が答える。


「あながち間違ってもないわよ」

「「ええ!?」」

「数日間連続しての真呼吸の使用、魔素吸収によって覚醒した魔臓器のエネルギー分の消耗、体内のミトコンドリアの活性で通常よりも遥かに多くのエネルギーと酸素が必要になるからね、地上よりもエネルギー消耗と効率は爆発的に上がるからお腹は相当減るわよ。

 ダンジョン内の豊富に魔素を含んだ魔物を食するとかなり軽減されるけど、消耗した状態で魔素の無い地上に上がるとその差は急激に現れるわ、フードファイター顔負け並にね」

「そうなんだ⋯⋯太る⋯⋯かな」

「消耗分が満たされれば次の食事からはほぼ通常に戻るわよ、食べた分のエネルギーは吸収消費されるけど太る心配はないから安心して」

「「「良かったー⋯⋯」」」


 食べながら聞いていた月穂と春菜、朱莉は同時に安堵の溜息をついた。


 その後雑談しながら少し長い夕食を終え、それぞれ部屋に戻っていった。


「ふーっ、食った食った⋯⋯

ゆっくりしたいところだけどそうもいかないよな、なあ? ミカエル、ルシフェル」

「ん⋯⋯おぉ⋯⋯お? きたか!? VRタイムか!?」

「ファ〜⋯⋯お? お風呂と食事は住んだのかい?」

「あぁ、その前に地下で相談した件から始めるぞ。

 VRしていいのは俺が寝ている夜から朝六時の間だけ、その間の時間を半分づつ使ってくれ。

 片方が俺の体でプレイしてる間はもう片方は人形に精神憑依してもらう、人形はパソコンにプレイ内容見えるようにしとくからそれで暇潰ししといてくれ。

 憑依維持に消費できる魔石は爺ちゃんから少し貰ったけどこれからの事考えると足りないよな、定期的に探索行かないとダメだな。

 それはそうとアイ、魔法は大丈夫だよな?」

「はい、魔法構築は紫暮様に教えて頂きました、私の内蔵魔素で魔法は使用しますので十三様に負担はありません。

 その後のお二の監視と時間管理もお任せ下さい。」

「完璧だアイ、じゃあ宜しく頼むな。

 ミカエル、ルシフェル、大事な俺の体だ頼むから変な事しないでくれよ?」

「分ーかってるって、やっと掴んだVR三昧の為だ、下手こかねーよ」

「やっと自分で操作できるんだ⋯⋯うぅ⋯⋯感激だ」

「分かる、分かるぞミカエル! その涙の価値をー!」

「ぐぅうぅ⋯⋯ルシフェル、さあ堪能しようあの素晴らしき世界を!」


(大丈夫かコイツら⋯⋯泣いてるぞ⋯⋯)


「あ、うるさくても動き回っても大丈夫なようにゲーム会場は地下祠入口前だからな」

「「ラジャ!!」」


(コイツら敵同士なんじゃないのか? 本当は仲いいのか? なんか普段仲悪いけどバッチリ合ってる漫才コンビみたいな感じがしてきたぞ⋯⋯)


「じゃあ早速機材持って地下に行くか」

「「おぉー!!」」


(息ピッタリじゃん⋯⋯そしてうるさい⋯⋯)


 魔王と大天使がいがみ合う事を一時辞め、十三に素直に従う力の源『パンゲア創世記オンライン』それぞれの初体験が始まる。

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