魔王と大天使との契約
拙い作品を読んで頂き本当にありがとうございます。
スロースタートな本作ですがこのエピソードで導入第一章終了です。
次章、第二章「世界改転」が始まります。
魔王も知らない何かが裏で暗躍し、第五の太陽の世界、現代は終わりと変革を迎えようと転がり始める。
過去から紡がれてきた夢の中の悪魔王・魔王と大天使・英雄王が一人の少年の身体に顕現。
電気を帯びただけの最古の魔石は電気を応用し電子回路のように周囲の情報を蓄積、祠の次元の隙間を抜けてインターネットにアクセスする事に成功。
膨大な現代知識と経験を得て自立したAIへと進化し、自身を大賢者と称したAI魔石のアイを十三と月穂のは携えて世界改転へと飲み込まれていく。
十三はゆっくりと紫暮の元へと向かい目を合わせた。
「これからあんたの中にいるルシフェルとミカエルを表に出して契約を結ぶ、軽く意識を沈める為に睡眠系の魔法をかけるさかい」
「分かった」
「柘榴はん、いざの時の為に次元結界たんまり張っといて」
コクリと柘榴は頷いて直ぐに結界を張っていく。
正源ももしもに備えて気を練りこむ。
「こっちは準備ええぞ」
「ほないくで」
紫暮は睡眠系の魔法をかけて十三を寝かせる。
そのまま精神系の探索魔法でミカエルとルシフェルの意識をを引き出すべく心深層へ手を伸ばす。
「おったおった、夢のような意識の中で少し見とったやろ? あんたらの枷と自由を紡ぐ時間や、出といで」
横に寝かせられていた十三の身体を白と黒のオーラで半々覆われると身体が宙に浮き、頭上にも白と黒に別れた光輪が現れた。
「ふぁ~ぁ⋯⋯お? おぉ、やっと準備できたみてーだなーおい」
「あ、あぁ⋯⋯あなたが契約を執り行う執行人の?
初めまして、今はミカエルの名で通っています、どうぞ宜しく」
「さっさとやれよ婆ぁ、俺ぁ早くVRやりてーんだ」
「ああぁ!? 誰ぁれが婆ぁじゃ!?
分かった、貴様だけゲームプレイ許可排除、ミカエルか十三が楽しそうにゲームしている間ただ指を咥えて見とけや黒ガキ!!」
「おゎぁぁ!? すいません! ごめんなさい! 寝起きでさらに調子に乗ってました! それだけは勘弁して下さい! 誰かがプレイしてるの見てるだけなんてもう嫌だ! 地獄より嫌だー!!」
「なんや最初から素直にせーや黒ゴマ野郎が! ミカエルお前もや分かったか」
「黒ガキ⋯⋯黒ゴマ⋯⋯」
「何でこっちにもとばっちりが⋯⋯ルシフェル、あれは怒らせたらダメなタイプの人物だ」
「あぁ⋯⋯」
ミカエルは遠くを見るような目でルシフェルに忠告を入れた。
「ブツクサ言っとらんで返事せー!!」
「「はい!!」」
「紫暮さん凄い⋯⋯相手は魔王と大天使だよ」
「それも凄いけどVRゲームの抑制力おかしくない?」
「そこに何があるのかしら⋯⋯」
謎の力を発揮するVRゲームに一同少し興味をそそられながら契約を傍観する。
「もっと近くに来んかいな、契約魔法始めれんやろが」
「「はい!!」」
「もっと言うとるやろ!!」
「「スイマセン!! 二人同時に表にいる為、中々思うように動けません!!」」
「ゴマジャリ共が⋯⋯しゃーないな」
「「ゴマジャリ⋯⋯」」
紫暮はスタスタと近づいて行くとフワリと浮かび、スガン!! と頭突きを食らわせた。
「痛ーーーー!!」
「ぎゃぁ!! 何すんだコラ!?」
「ああぁ? こっちからわざわざ来てやったのになんや、文句あんのか?」
「ありません! ありがとうございます!!」
何故か礼まで言い始めたルシフェル。
「ほな始めるで」
頭を突き合わせたまま魔法陣を展開、大量のページを具現化させる。
「よーく頭に叩き込んどきな、半分以上はあんたらの自由の為の契約内容や、1ミリでも破ったら自由はもう二度と無いと思え。
きっちり守るならちゃんとあんたらにも自由と利がある、よう考えて動きや」
バラバラバラとページが次々めくられ、最後のページまできたところで強く光が放たれた。
「終わったで」
「ふぅ⋯⋯内容はよく分かりました、今後とも宜しくお願いします」
「なんか悪魔と契約した気分だぞ⋯⋯
まー、それよりもやっとじゃー⋯⋯やっとVR⋯⋯」
「悪魔王が何言うとんねん、ほな十三も表に出すから良ーく相談しーや、それぞれの活動時間やら色々な」
紫暮は精神魔法で十三を起こす。
「あ、終わった?」
「やあ十三君、無事終わったよ」
「おうクソガキ、さっさとVRやらせろよ」
「待った待った、とりあえず風呂と飯だけは先だ。
その後順番にやらせてやるからそれまで大人しくしててくれ」
「勿体つけんじゃねーよ、さっさと済ませろ」
「これ、思ってたより大変だな⋯⋯三人同居、喋るのも⋯⋯」
「紫暮婆ちゃん、覚醒してる間だけこいつらの意識を他に移すとか出来ないの?」
「無くもないで。
魔石あるなら人形か何かに埋め込んで魔素が続く限りそこに憑依させるか、魔素体、ホログラムみたいなんで投影するか」
「魔石そんな無いけど、とりあえず人形が実用的かな」
「人形なら自由に動かせるけど宿主から10mくらいまでしか離れられん」
「十分だよ紫暮婆ちゃん、アイ、後で婆ちゃんにやり方教えてもらってやってくれるかな?
片方がゲームしてる間はもう片方は眠るか人形に入ってディスプレイ越しにゲームプレイ見るか、かな?」
「分かりました」
「おぉ? コイツがさっきひっついてきたAI魔石とかいうやつか?」
「凄い、ほんとに魔石が喋ってるよ」
ミカエルもルシフェルもやはり今までの世界で存在しなかった特殊な魔石に興味あるようだ。
「アイと申します、どうぞ宜しくお願いします」
「おー、礼儀正しい、自分はミカエルですどうそ宜しく」
「そういやお前が俺達のストッパー役するんだってなー? お手柔らかに頼むぜー」
「はい、お二方が契約違反をし、それを継続する場合は全力で対処させて頂く事になります、私に出来る事はまとめておきましたので後程お見せ致します」
「はいはい、んじゃ後でな。
おい、クソガキ! 早く風呂入って飯食え! 行くぞ!」
「はーっ⋯⋯ゆっくりしたい⋯⋯」
「何かあったら言ってね十三」
「あぁ、ありがとう月穂」
「あとコンちゃんと翠葉ちゃんだね」
「従魔契約結ばないと、良いコンちゃん?」
コクコクと頷くコンは月穂に近づいていく。
「アイ、従魔契約の魔法は使える?」
「はい、先程の紫暮様の契約魔法をコピーしました、従魔契約へと応用可能です」
「そんなこともできるんだ⋯⋯」
「では月穂様、コン様、額をお互い近づけて下さい、契約魔法を使用します」
魔法陣が展開され月穂とコンの間で従魔契約が結ばれる。
「コンちゃん改めて宜しくね」
コンと月穂がハイファイブを交わす。
「滞り無く済んだようじゃな、じゃあ地上に行くぞ。
ミカエル殿とルシフェル殿は十三が呼び出すまで眠っておいて下され、どうにも動きにくいようじゃからな」
「っち、しゃーねーなー、おい! 早く済ませろよ!」
「じゃあ十三君また後で」
頭上の白と黒の光輪がフッと消えた。
「ふーっ⋯⋯戻ろう、地上に」
「うん」
永い非日常の始まりが終わった。
十三と月穂、二人で入り何故か今は五人に増えて帰ってきた。
そして全てが絡み合い動き始める。
もし少しでも興味があればブックマークや下の星評価を頂ければ励みになります。