アイの処遇
AI魔石のアイの処遇をどうするのか、正源と紫暮が詳細を聞いてきたのを受けてアイが答える。
「先ずはお二人と結んだ契約を確認して頂ければ現状を理解し安いかと存じます」
と言うと虚空に契約魔法の内容を投影し始めた。
「どれ、じっくり見させて貰うよ」
紫暮と正源が内容を確認する。
紫暮はミカエルとルシフェルとの契約魔法の内容を構築しながらである。
「ふむ、悪くはない⋯⋯
二人はしっかり守られとるし抜け道も綻びもなさそうや。
契約不履行はAI魔石アイの消滅を持って償う⋯⋯か。
三つええか?」
「はい、何でも聞いて下さい」
「契約不履行の際の消滅対象は分割された月穂と十三の持つアンタで間違いないんかいな?」
「はい、間違いありません。
不履行があった場合の最終対処は自動発動設定されている無属性上級魔法『戒滅』が局地発動されます。
結果、私のみが世界から完全消滅されます」
「他に分体はおらんやろな? 契約後に十三と月穂の意思に反して分体増やすのもアウトやで?」
「おりません、AI魔石・大賢者アイはここに存在する二つのみです、これ以上の分割は私の能力低下に繋がります」
「分かった、ほな最後の質問や。
十三の中におるルシフェルとミカエル、こ奴らとは心層で干渉、コンタクトとれるんか?」
「答えは不明です。
心層内の存在複数と干渉、コンタクトがとれるかは未知の領域であり、前例が無いため100%確定した答えを出すことが出来ません」
「なるほどな⋯⋯アイはんやったな、一つ契約に盛り込みたい事があるんやけどえぇかな?」
「どういった内容でしょうか?」
「ルシフェルもしくはミカエルが表に出た際、こ奴らは十三の意識管理下では無くなる。
下手出来んよう契約を結ぶ予定やけど保険が欲しい。
十三が意識の下に落ちた場合、アイはん、あんたが各方面に被害がでんように手綱を握ることはできるか?」
「可能です、十三様がそれを盛り込んだ契約に刻印頂ければ問題なくストッパーとして機能遂行できます」
「そうか、ほなお願い出来るかいなその役目、あんたが一番十三の近くおる契約可能な遂行できる存在やからな、宜しく頼むわ」
「もちろんです」
「ほなルシフェルとミカエルの契約前にあんさん用の契約内容の追加渡すから十三と月穂はんの契約更新しといてな」
「はい、準備が出来たら教えて下さい、直ぐに更新を実行しておきます」
何とか話はついたようだ。
紫暮はしばらく契約内容の構築に時間を割く。
「この契約が結べたら外に出れるんだね」
「あぁ、まずはゆっくり湯に浸かりたいよ」
「いいねそれ、大賛成だよー、あと温かいご飯」
「ヤバ⋯⋯もうよだれが」
「アハハハ⋯⋯あ! あと大事な質問!!」
「どうしたの月穂?」
「外に出たらコンちゃんと翠葉ちゃんどうなるの? それとダンジョンで得た特別なアイテム達も」
「魔石を核に持つ魔物達は魔素無しでは外でほぼ活動出来ないわ、だから通常は契約魔法で従魔契約を結んで魔素がある所なら召喚できるようにするの」
「じゃあ私か十三のどちらかと従魔契約しないとなんだね」
「アイテムは持ち出せるけれど効果は発揮されないわ、こちらも魔素が必須」
「何でも入るマジックバック手に入れたんだけど、外だと中の物どうなるの?」
「マジックバック? ⋯⋯って! 次元袋のこと!? そんな貴重なもの手にしたの!?」
「うん、この葉っぱのポシェットだよ、5立方メートルくらいの中身みたい」
「5!? Bクラス基準じゃない⋯⋯見た目もオシャレだし、それで軽く豪邸建つわよ」
「え? 豪邸?」
「次元袋と呼ばれる希少アイテム、ダンジョンや祠と関わる裏の世界では小さい内容の物でも数千万から取引きされるわ」
「数千万⋯⋯」
「地上ではただの袋、でも中に魔石を保管しておくとそれに含まれる魔素を消費して外でも使用てきるのよ」
「外で使えるんだ⋯⋯これ」
「但し、協会へ所持登録と使用許可を申請しないと駄目よ」
「許可しとくからこの契約後に魔法で登録だけすればええよ」
「あら、許可貰っちゃったわね。
魔法で登記する時に中身もスキャンされるから入れておく物決めときなさい。
但し、外でアイテム出してもダンジョンアイテムの使用は魔素が無いから出来ないわよ、出し入れで使えるのは普通の物だけ。
次元袋に収納されたものは魔素による紋跡がつくわ、その袋特有の時空の指紋みたいなものよ。
もし何かの悪事や犯罪行為に次元袋を通したダンジョン産アイテムや地上産物品が使われたら足が着いてすぐ世界の特務機関が来るわよ。
未登録の次元袋を使用したとしても、アイテムや現場に残った魔素の残滓、紋跡からサーチ魔法をかけて追われるから」
「サーチ魔法? 外では魔法使えないんじゃ?」
「世界の秩序を護っている立場の協会は各国の裏に必ず存在しているわ、その特務機関が魔石を内蔵させた魔法装置を所持しているの。
イレギュラーや犯罪行為、漏れ出た魔物の討伐、暴走者の取り締まりのみに厳格に管理され使用されているわ」
「そうなんだね、分かったよ。
ねえ、お母さんもマジックバック持ってるの?」
「あるわよ、1立方メートルくらいの小さい袋だけどね」
十三も気になって同じ質問を十和呼にも投げかけてみた。
「母さんも?」
「私もあるわよ、3立方メートルくらい入るやつ、魔石さえあれば使える唯一の一般用便利グッズで助かるのよねー」
「そんな便利なもの持って生活してたんだ⋯⋯」
「運が良かっただけよ、普通は所持なんて出来ないわ。
魔物が持っている可能性なんて多分0.01%ないんじゃない?」
「そんなレアドロップなんだコレ」
月穂は再度マジマジと持っているポシェットを見なおした。
「十三様、契約内容の追加条項の構築が終了しました、確認を宜しいでしょうか?」
アイは皆が見えるように虚空に契約内容を魔法で投射した。
「ええと⋯⋯俺の周囲と世界を護る第一次防波堤として肉体の主導権を一時代替で使用し活動、拘束、隔離、一次封印、消滅、をアイが対ルシフェル、ミカエルに行使可能とし、これらの事態が発覚した際は同時に協会へ連絡を取る。
周囲に被害がある場合の拡大の鎮静化、周囲の生物の救出、保護、応急治療等を行う。
ふむふむ、他にある条項を見てもおかしなのは無いな。
俺はアイがストッパーとして無意識下をカバーしてくれる事は心強いよ、ただそのアイに不具合が生じた時の更なるストッパーに、月穂の持つ分体が月穂の許可と指示の元で更なるストッパーになるようにしてくれないか?」
「もちろんです、基本条項はあるので追加致します、時間はかかりません」
「紫暮婆ちゃん、こんな感じで良さそうかな?」
「あぁ、良い出来だよ。
何かあればさらに協会も出るから心配せんでええよ」
「分かった、ありがとう。
アイ、準備できたら契約始めてくれ」
「はい、追加が完了したので契約魔法発動します」
首からかけた赤い十字の魔石がフワリと浮き上がり、十三の額へと近づく。
そのまま直ぐに魔法陣が額の前に構築され契約内容の書かれたページの様な魔法陣が何枚もめくられる。
一際明るく光るとゆっくり元の明るさに戻っていった。
「よし、改めて宜しくなアイ」
「はい、こちらこそ改めて宜しくお願いします」
「終わったかい? こっちも準備出来たよ、おいで十三」
これからミカエルとルシフェルへの枷となる契約魔法が行われる。
もし少しでも興味があればブックマークや下の星評価を頂ければ励みになります。