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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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夢袖の紫暮

 最初に落ち着いて口を開いたのは十和呼(とわこ)だった。


「ダンジョンの中はどうだった? 厄介なやつが色々居たんじゃない? 柘榴(ざくろ)ちゃんの映像魔法でかいつまんだイレギュラー情報は見たけど他の詳細は分からないから教えて」

「階層は地下五階まであったよ。

 最初は野菜の魔物がいる階層、そこで膝を抱えて泣いていたこの大根のコンに会ったんだ」

「契約したの? ⋯⋯ってあなた達は契約魔法使えないわよね、テイム?」

「いや何も、ただ一緒に行くか? って聞いてそれで行動を共にする事になっただけ」

「契約も何もなしで⋯⋯? そんな事あるの?」

「んー、実際そうだしあるんじゃない?」

「コンさん⋯⋯あれ? そういえば柘榴ちゃんの映像魔法見せてもらった時、確か精霊さんと融合して人にムグっ!」


 コンが急に十三の足を蹴り、翠葉が十和呼の口を蔦の葉で塞いだ。

 十三は火雷神イリヤが現れていた時はルシフェルが十三の表層を支配し意識がハッキリしていなかった為、コンと翠葉(すいは)が魔法融合し火雷神イリヤが顕現した事を知らない、知らないのは十三だけだ。


「痛ってー!! 何すんだコン!」


 コクコクと頷いて親指をグッと上げるコン。


「⋯⋯え? どういう意味?」


 意味などない、無理矢理誤魔化そうとしているだけだ。


「マジで全く分かんないんだけど!? 何で蹴られた後にサムズアップされないといけないんだ!?」


 十和呼は直ぐに察して口を塞いでいる蔦の葉を軽くタップして理解した意図を伝えた。

 蔦が緩むと十三の思考先をコンに向けない為に新たな質問を投げかけた。


「横にいる精霊ドライアドの⋯⋯えっと、ごめんなさい名前まだ覚えてなくて」

「ん、あぁドライアドの翠葉っていうんだ」

「翠葉ちゃんは小鬼の集落で捕まってて三人で助けたんだよ、その後にコンちゃんと従魔契約結んでるんだよねー」

「「え? ⋯⋯は!?」」


 十和呼と美沙は口を開けたまま止まった。


「実際は翠葉ちゃんがコンちゃんの従魔なんだよね」


 翠葉がコクコクと頷いてグッと親指を上げる、コンの真似をしているようだ。


「「ふぁ!?」」


 思考が動き出しそうになった瞬間にまた口を開けて固まった。

 暫く待つとやっと思考が動き出したようで質問がついて出た。


「精霊って上位存在よ! そんな簡単に契約⋯⋯いやでもコンさんのアレ顕現を知ってればまぁ納得⋯⋯いや、そもそも精霊と契約するのどんだけ難しく時間もかかって大変か分かる!?」

「いやー自分で契約した事ないから全く分からないけど、サラッとしてたよな?」

「うん、なんか少し相談しあってから、じゃあ! みたいな簡単な感じだったよ」

「えぇー⋯⋯」

「何その、気が合うからじゃあ、的な感じ⋯⋯」


 いいんだよー! みたいな感じでハイファイブするコンと翠葉を見て遠くを見つめる十和呼と美沙。


「私とアクアの苦労と絆って⋯⋯」

「ま、まぁ⋯⋯植物同士ってことで」

「そうね⋯⋯そんな理由ぐらいでも付けとかないと納得いかないわ⋯⋯」

「後はどうだったの? スライムとかも居たんじゃない?」

「そういやスライムいなかったな」

「いなかったね、最初に出そうなイメージはあったけどダンジョンに出てきたのは結局、野菜、ウサギ、昆虫、羊、小鬼、狼、神の従者、魔王、大天使、鳥、御神木、AIかな?」

「おかしなのが幾つか混ざってるけど、やっぱりそれぞれ人によってだいぶ違うのね」

「やっぱりそうなんだ、同じだったらどうやって母さん達は一人で攻略したんだよ! って疑問だったんだよ」

「入る人数、資質や能力値を測定してその都度生成してるのかな?」

「じゃないと説明つかないよ」

「あ、来たみたいだよ」


 月穂(ゆえ)の声に皆で一斉に振り向くと地下一階へ入るゲートに人影が見えた。


「爺ちゃん! と、紫暮(しぐれ)婆ちゃん!?」

「久しぶりやねー、十三。

 前に会ったんは⋯⋯えっと⋯⋯いつやったかいな?」

「んー、十二歳くらいの時に京都遊びに行った時かな?」

「ほなもう七、八年くらい前か、大きゅうなったなー」

「婆ちゃんが協会の人なんだ⋯⋯

 それより相変わらず元気そうだね」

「お陰様でな、なー正源?」

「なんで儂に聞くんじゃ、それより始めるぞ」

「相変わらずせっかちな男やなあんたも」

「協会やらで多忙なお前の方を気にしてやってるのになんじゃ」

「おやおや、それは何ともお優しいこって。

 久しぶりの十三との再会の挨拶もまともにさせてくれんとは、老い先短いあんたの人生にバチ当たんで。

 ていうか⋯⋯『当てる』で」


 その瞬間、紫暮から大気が歪む程の威圧感が吹き出す。

 あまりの圧に正源、コン、翠葉以外が地面に尻もちをついた。


「あぁっと、ゴメンなー、この爺の顔を見とったらつい」

「なんじゃと! この妖怪婆ぁ!」


 正源も紫暮と同等の威圧感を放ちお互い威嚇し始めた。

 老体から放たれる圧に尻もちついたまま身動き一つ出来ない。

 息をしたら、動いたら殺されるかもしれない殺気にさらされながら、十三は圧から逃れる為なんとか振り絞ってオレンジ色の魔闘気を発動させ割り込んだ。

 一瞬、二人が殺気を持ったまま十三に意識を向けた為、十三は意識が狩られそうになった。


「ふ⋯⋯二人ともストップ! ストーップ!!」


 何とか声が届いたようでフッと圧が消え去った。


「おっとスマン、つい」

「つい、で出るような圧じゃ無かったよ⋯⋯」

「ほんまゴメンなー、つい」

「二人の、つい、のレベルがよく分かんないから」

「ふーっ⋯⋯死ぬかと思ったわ。

 お義父さんも紫暮様もお願いしますよ」


 十和呼が懇願する横で美沙と月穂は涙目でまだ立てないでいる。


「絶対に怒らせたらダメな人達だ⋯⋯」

「よく肝に命じておきなさい月穂⋯⋯」


「ここにおる妖か⋯⋯ゲフン! 紫暮が協会からの監査と契約魔法遂行人じゃ」


 ギロリと紫暮が正源を睨むが今回は圧は出さなかった。


「まずは情報が欲しいから映像魔法か記憶干渉魔法で見せてくれるか?」


 時空魔法の隙間からスルリとアクアと共に出てきた柘榴は紫暮の元へと進み肩に飛び乗った。


「確かカーバンクルの、あんさんが同行しとったんやったな、じゃあ宜しく頼むわな」


 額を近づけあって柘榴が記憶魔法を使った。


 脳内に映像が流れた瞬間から紫暮の少し裏返った声が出た。


「は? いやいや何でそうなんねんな⋯⋯

 これは何とも⋯⋯えぇ?

 いやいやいや⋯⋯そうはならんやろ!

 あー、ほんまに魔王と天使降りとるやん⋯⋯

 ん?? えーと⋯⋯ん???

 AI大賢者????」


 どうやら最新の更新情報までいったようだ。


「怒涛のイレギュラーが過ぎてビタイチ意味分からへんねんけど⋯⋯どないすんのコレ?」

「じゃろ? 最新のとこ見とらんから儂にも頼む柘榴殿」


 その後、正源も全てを見終わると言い放った。


「どうすんじゃコレ?」

「まー⋯⋯野放しにはでけへんわなー」

「ううむ⋯⋯

 ルシフェルとミカエルに関しては十三との厳格な契約を結ばせて管理下に置くべきじゃとは思っとる。

 もし分離できたとしても野放しにはできん、世界のトップ層を側に付けても恐らく管理下に置くのは不可能。

 なら、黒幕探索、VRゲームという自由を許可し契約の元に縛るくらいしか方法は無いと思うんじゃが」

「⋯⋯確かにあの存在を管理下に置くのは不可能やわな、少しの自由で満足してくれるいうならその提案に乗せてもろたほうが得策やろ。

 魔法契約は悪魔や天使も破れん魔素の楔を埋め込む魂の契約や、内容はガッチリ固めさせてもらうで、世界の存亡かかっとるんやし」

「あぁ、それでええじゃろ」

「契約の構築と精査にちょい時間かかるし、その間にAIはんの事を聞いとこか?」


 皆の視線が十三と月穂へと向いた。

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