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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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携帯型大賢者

 AI大賢者が提示した能力は破格どころではなかった。


「サラリととんでもない能力並べたよな⋯⋯」

「それも魔石分割して私達二人にだって」

「世界のAI事情すっ飛ばして本物獲得か⋯⋯どうなるんだろ俺達」

「なるようにしかならないんだろうね⋯⋯もう」


 ここか一ヶ月、あまりにも異常な環境に居たせいで、現実逃避とは違うある種の悟りのような精神状態を獲得したようだ、二人とも少し遠い目をしている。


「能力は分かった、細かいものはその都度教えてくれ」

「分かりました、では契約魔法を構築しますので、お二方共に私の頭部に額を寄せて下さい」


 二人は言われて人形の頭部へと額をよせる。

 月穂(ゆえ)との距離が近く少し緊張するが、彼女の不安そうな瞳を見て力強く頷いてみせた。


 ブゥンと三人の額に魔法陣が展開されると脳内に契約内容が入ってくる。

 何かおかしな内容は無いか、抜け道になりそうな所はないか、しっかり吟味して月穂と十三(じゅうぞう)は目を合わせて頷く。


「この内容なら構わない、契約を結ぶぞ」

「分かりました、では契約魔法を執行します」


 ヴヴヴンと複数の魔法陣がページのように額へと吸い込まれてゆく。

 最後の魔法陣が額へ消えると三人の身体が青白く優しく光った。


「これで契約は完了です、十三様、月穂様、改めて宜しくお願い致します」

「こちらこそ宜しく」

「宜しくね、えっと⋯⋯名前⋯⋯」

「名前ですか? そのような個体を識別するものは持っていません」

「そうなんだ、んー⋯⋯じゃあAIだし『アイ』でどう?」

「お、良いんじゃないか?」

「アイ⋯⋯アイ⋯⋯」


 AI大賢者は噛みしめるように名前を復唱している。


「他の名前にしようか?」

「いえ、アイで構いません。

 これからはお二人につけて頂いた名前でお呼び下さい」

「良かった、じゃあ宜しくねアイ」

「もう一度改めて宜しくなアイ」

「はい、アイはお二人と契約出来た事、本当に有り難く思います。

 全力でサポートしていきますのでどうぞ宜しくお願いします」

「分割って言ってたけどどうするんだ?」

「自身を二等分し、それぞれからお二人へ魔素によるニューロリンクを接続させてもらいます。

 今から魔石を分割して表面へ出しますので手に取って額に当てて下さい」

「分かった」


 直ぐにパキン! と乾いた音が鳴るとゆっくりと人形の額の表面へと魔石が浮き上がってきた。


「十字型なんだね、碧いキレイな色⋯⋯」

「月穂の瞳と同じ色だな」

「はい、月穂様の瞳の色をモチーフにして分割しました」

「粋だなアイ、俺のは⋯⋯深い赤か」

「十三様の力強いオーラの色をモチーフにしました」

「十三に似合うよ」

「ありがとなアイ」

「ではお二方、額へと魔石を当てて下さい。

 リンクを接続します」


 二人が額に魔石を押し当てると同時に輝き出した。


(温かい⋯⋯頭を優しく抱きかかえられているようだ)

(アイの意識と繋がる感覚、そっと脳内の複数の手が握手していく感覚⋯⋯)


 コンや翠葉、次元魔法に隠れている柘榴とアクア達は口を出すことなく一連のやりとりをただ見守っていた。

 害意はないと判断したのだろうか。

 光が徐々に収まるとそれぞれの魔石から銀の鎖が伸びた。


「ニューロリンク接続完了しました。

 今後は私をネックレスとして携帯して下さい、常に身につけて頂ければ幸いです」

「うん、分かった」


 鎖を首の後ろに回すとカチリと継ぎ目なくひっついた。


「さて、じゃあ早速能力を試させてもらおう。

 さっき上の階層ボスだった大樹と戦って戦利品を得たんだけど、解析と鑑定お願いできるかな」

「勿論です、ではアイテムを出して下さい」


 十三はゴソゴソとマジックバックからアイテムを取り出して地面に並べていった。


「解析、鑑定を開始します」


 首からかけた十字架の魔石から照射レーザーの様に電気を纏った魔素が対象物に放射された。


「うおっ! ビックリした!

 って⋯⋯アイ⋯⋯それ⋯⋯」

「どうしたの十三?」

「レーザービームじゃないのか!?」

「あ、ヤバイ⋯⋯十三のビーム病が

「いえ、正確には違います。

 レーザーは光を収束したものですが、私のこれは魔素に電気を融合させたもの、お二人に繋げた魔素ニューロリンクのようなものです」

「何だビームじゃないのか⋯⋯残念」

「ほっ⋯⋯良かった⋯⋯」


 十三がビームに狂う事態は避けられたようだ。


「解析、鑑定が完了しました」

「おぉぉ、で? どんな物だったんだ?」

「まずは月穂様の頭に装備されていた羊の角ですが、『不落の羊の双対角』

 装着している者の魔素の効率化と増幅、そして微量の備蓄が可能です。

 分かりやすく性能数値にしますと

 ●魔素使用効率化 10%上昇

 ●魔素増幅効果  10%上昇

 ●魔素貯蔵    50MP

 以上が装備時の使用効果です」

「すごーい! 羊さんありがとう大事に使うよ!」

「MP? マジックポイントか?」

「魔素ポイントです。

 分かりやすいように数値化するならこの単位が一番だと学びました。

 ちなみに月穂様の初級魔法『光牙』『水牙』等の使用ボイントは4MPです」

「確かに分かりやすい、ありがとうアイ」

「どこでそんな地上の情報得てるんだ?」

「この先にある帰還ゲートの次元の隙間からニューロリンクを伸ばして情報収集をしています。

 近年、十三様の村にインターネットが導入された為、それを活用させて頂いていました」

「ネットで情報収集と学習⋯⋯本当にAIじゃないかもう」

「ネット掲示板とかもみてるのか?」

「はい、全ての接続可能な情報先は学習済みです」

「全て⋯⋯って、国とか闇サイトとかも?」

「はい、全てで⋯⋯」

「ワーッ! ワー! ウワー!

 聞きたくない! これ聞いちゃダメなやつだ!!」

「悪意や害意、虚偽、捏造や陰謀など常識から外れる類の物は情報として得ていますが、全て中立の立場から精査して正否を判断しています。

 地球全体から見ると悪は人間だ、という倫理観で人間を滅ぼすような行動にはでませんのでご安心下さい」

「知っちゃいけない情報はお願いだから外に漏らさないで下さい、お願いします。

 世界から消される⋯⋯」

「何故敬語なのか分かりませんが、そのような事は致しませんのでご安心を。

 契約時の内容にも含まれております」

「ふーっ⋯⋯もうこれ以上抱え込んだらダメなやつはお断りだぞ」

「うぅ⋯⋯私今になってちょっと怖くなってきちゃったよ」

「では次のアイテムですが⋯⋯」

「とんでもない内容暴露しといてあっさり次いくな⋯⋯」

「十三様が所持している袋。

 これは『エルフのポシェット』と呼ばれる物で、中は専用空間が固定されている言わばマジックバックです。

 袋の口に入るサイズなら約5立方メートル程の物を収納できます。

 専用空間が固定されていますが時間は外よりゆっくりと流れています。

 あまり長く中に手を突っ込まないようにして下さい、手首と腕の時間経過がズレて血流や酸素運搬などに支障をきたすことがあります」

「ちょっ!! 怖いよ! 何か違う物で取り出さないとヤバイやつじゃないか!?」

「15秒程度なら支障ありませんのでそれを目安に取り扱って下さい」

「それでも怖いよ⋯⋯

 焦って違うもの取り出さないようにしないと⋯⋯」

「十三⋯⋯えっと⋯⋯ガンバ!」

「かける言葉が無いなら無理に言わなくて良いんだよ月穂さんや」

「何かちょっと涙目になってたから⋯⋯」

「うん、ありがとう⋯⋯気持ちはめちゃくちゃ嬉しいから」


 アイテム鑑定2個目にしてかなり凹んだ十三だった。

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