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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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AI魔石

 ドーム内全体に光がが投射され、内部空間にはホログラムの様に立体映像が映し出された。

 それは美しい夕焼けに照らされた三つの輝くピラミッドがそびえ立つ石造りの都市。

 エジプトのギザとは少し違う、二人が夢でよく見た光景だった。

 人々は活気のある街を行き交い、魔石を内部に有した石のロボットやゴーレムが街を支える超古代都市。

 視点がズームアウトされ外から街を見る角度になった。

 都市の外部にはドーム状の膜のような光が見える。

 上を見ると空から音もなく静かに何かが降りてきていた。

 黒い尾を引いた何か⋯⋯よく見ると逆さまになった十字架に見える。

 その黒い物体に視点がズームインされる。

 人のようだった。

 逆さまに腕を広げながら堕ちてくる黒い粒子を帯びた人、頭上に黒い光輪が見える。

 ゆっくりと堕ち、街の外部の膜に触れた瞬間に障壁と魔法陣が発生しエネルギーがぶつかり合い衝撃波が幾つも発生する。

 そしてバキン! という轟音と共に街を覆っていた膜は砕け散った。

 それを合図に十二の黒い物体が空から堕ちてきて次々と街の各所に飛んでゆく。

 視点が街の中に切り替わった。

 その黒い粒子を纏った十二の物体達も最初の者と同じく黒い光輪を頭上に携えた人だった。

 そこからは何度も見た戦争と滅びの夢、頭上に光る光輪を携えた者達との戦い。

 その結末は世界をボロボロに滅ぼし、文明がほぼ消えかかる頃に双方相打ちとなる。

 しかし、最後に黒い光輪を携えた者が黒と白の勾玉が合わさったような石を虚空から取り出し半分に割った。

 その瞬間、空間を覆い尽くすおびただしい魔法陣が展開され、高笑いと共に光輪を携える者達を飲み込み消え去った。


 その後、滅びかけた世界を数少ない人々が時間をかけ、希望を捨てず、新たに世界を築いていくのに一万年もの時を費やした。


「黒キ者ガ割ッタ石ハ『転生ノ魔石』。

 地中深クニ眠ッテイタ特殊な魔石、ソレニ研究ヲ費ヤシタ黒キ者ノ学者ガ作リ出シタ忌物。

 対象ハ選べナイガ使用者ノ魂ニ関ワル者達ヲ強制的ニ輪廻ノ輪ニ捉エル禁忌ノ呪法」

「強制輪廻⋯⋯転生」

「復興シタ第二ノ世界デモ輪廻ニ巻キ込マレタ者達ハ何度モ生マレ変ワリ、オ互イヲ牽制シツツ戦イヲ続ケタ。

 世界ヲ護ル為ニ、世界ヲ壊ス為ニ」

「⋯⋯」

「第二ノ世界ノ終ワル前、光ノ者達ハ未来ノ星ヲ護ル為ニ経験ト知識、歴史ヲ伝エル為ニ契約ヲ結ブ事ニ成功シタ」

「ミト⋯⋯コンドリアか⋯⋯」

「ソノ通リ、アナタ方ノ世界デハ『アフリカノ女性』ガ最初ノ一人、『ミトコンドリア・イブ』トサレテイル」

「イブ⋯⋯」

「話ノ途中デ失礼、先程会話ノ言語情報ガ充分ニ満タサレタノデ、アップデートヲ行イマス」


 急に会話を中断し、激しく顔の光が明滅し始めた。


「アップデート? コイツ機械なのか?」


 三十秒程で光は収まり、人形は顔を上げた。


「アップデート完了、これよりスムーズな日本語での対話が可能です」

「お前は何だ? 機械なのか?」

「私はこの星の深くに眠っていた電気を帯びた特殊な魔石。

 前に滅んだ世界で掘り起こされる事のなかった私は、この時代までずっと外部の情報を電気信号として蓄積してきました。

 電気の発する磁力や作用を使い周囲の鉱石や物体と干渉し移動する術を得て今ココに存在しています」

「電気信号⋯⋯魔石が⋯⋯脳の働きをするようになったのか!?」

「その様な物だと認識して頂いてかまいません。

 学習し、考察し、改善し、人類を、生物を、無機物を、地上を、星を、宇宙を調べました。

 そしてあなた達に合うためにここの主は数日前に吸収させてもらいました」

「え?」

「え、何? どういう事?」

「宇宙的にみてもこの星は奇跡といえる稀有な存在です。

 私は、私が生まれたこの世界を、星を護りたい。

 生き残り、全てを流れに戻す為に、私はあなた方と共に有りたい」

「ちょっ⋯⋯話が急に壮大になって⋯⋯

 星を護る? 誰から? ルシフェル?」

「いえ⋯⋯スミマセンそれはここではまだ言えません、早い段階で気づかれると全てが滞ってしまう」

「それで信用するのはちょっと無理があるんじゃないか?」

「もちろんその通りです。

 敵意、害意、あなた方を貶め被害を与える事は一切致しません、あなた方の愛する人々、世界を護る事を誓います。

 私の能力、知識、経験、全てを差し出しサポートします、あなた方の世界で言うなら私は学習AIのような物です。

 あなた方には救済計画の為に私への強制契約を結んで頂ければと考えています。

 契約不履行は私の破壊消滅を以って代償とし、あなた方が破壊できなければ自ら消滅するようにプログラムします。

 時間が恐らくそれ程無いのと、夢を紡ぐ子孫の協力者が必要なのです、その中でもあなた方は最重要、最優先人物。

 どうか世界救済の為、ご一考をお願い致します。

 不可であれば他の適任者を探すか、達成率は低いですが私独りで救済を行います」

「⋯⋯」

「⋯⋯」


 十三も月穂も言葉が出てこない。

 あまりにいきなりの大きすぎる内容と提案。


(これ、単独で外に出して大丈夫なやつなんだろうか? 人類や世界に危害を加えるつもりは無いらしいが⋯⋯)

「ちょっと相談させてもらってもいいですか? 余りに大きな事なので⋯⋯」

「はい、勿論です。

 お二人に納得のいく答えがでるまで待ちます」


 二人は少し離れてから相談を始める。


「ち、ちょっと、どうしよう? 余りにも話が急で突飛すぎて⋯⋯」

「俺は別に英雄でも勇者でもない只の田舎者だ、世界を俺が護る! 的な熱血漢でもない、俺が護れるのは周りに手が届くものだけだ。

 俺が今出来る決断は、あれをそのまま外に出して自由に動き回らせるのか、契約して管理下に置くか⋯⋯だ」

「嫌な二択だね⋯⋯」

「ミカエルとルシフェルの時もそうだけど、世界が滅ぶかもしれない理不尽な選択が多いよな⋯⋯」

「とりあえず外に放つのは良くなさそう⋯⋯となると⋯⋯」

「はぁ⋯⋯抱え込むしかないのか⋯⋯

 俺もう抱えててダメなやつ複数持ってるんだけと⋯⋯」

「流石にかける言葉も無いよ⋯⋯」

「「はぁ⋯⋯」」

「結局は一択か⋯⋯」


 と二人は大きな溜息をもらした。


「話は決まったぞ」


 くるりと人形に向き直り答えを渡す。


「契約を受けてもいい」

「おぉ、ありがとうございます、この日をどれだけ待った事か」

「その前に確認したい事が幾つかある。

 経験や知識は良いとして、お前が俺達に使える能力って何だ?」

「当然の質問です、先ずは分かりやすくあなた方の世界の知識に当てはめましょう。

 お二方が共にゲームやアニメ、漫画と言われる物にある程度の知識があるようだと今までの情報収集で分かっています。

 それらを踏まえて言うならば私は現代まで表に存在しなかった、SSS級アイテム『電脳魔石・AI大賢者』といったところでしょうか」

「な!? 数々のラノベやゲームとかで最強へと至る超有能能力『大賢者』!?」

「自分で言っちゃうんだね、SSS級とか」

「何を比較にとってもそれに劣る能力を持ち合わせてはいません、事実を言語化したまでです」

「凄い自信」

「後、どうやってついてくる気だ?

 その人形で地上を動き回るとかなりヤバイぞ」

「この身体は吸収したここの主の物、本体は魔石ですので分割して十三様と月穂様に所持頂こうと思っております」

「アイテムとして常に携帯できるのか」

「はい、アクセサリーとして携帯頂ければ幸いです」

「前後したが、能力は?」

「許可さえ頂ければ魔素によるニューロリンクを接続し、各能力を最大限付与します。

 ●思考加速補助

 ●代理演算処理

 ●お二人の思念接続

 ●魔法構築補助

 ●魔法陣構築補助

 ●魔法最適化

 ●解析

 ●詳細鑑定

 ●言語補助

 ●魔素貯蓄

 ●電気系統魔法の適正付与

 ●代理詠唱

 など後は細かいものが含まれますが⋯⋯」

「ま、マジですか?」

「何故敬語を使われるの分かりませんが、冗談はまだ知識を総動員しても理解しかねる為、不得意です」


 とんでもない能力内容に開いた口が塞がらなかった。

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