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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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植物のエネルギー事情

 大樹は左右の枝をムチのようにしならせて挟み込むように打ち付けてきた。


月穂(ゆえ)! 翠葉(すいは)! 下がれ!」


 十三(じゅうぞう)は内気功を最大に練り込み、支点をずらすためあえて枝に飛び込んむ。

 巨大な枝と打ち合う為、地面が凹むほど足を地面に踏み込み、流れるように利用腕を前に突き出した。


久世古流八卦(くぜこりゅうはっけ) 神楽双崩(かぐらそうほう)


 瞬歩による爆発的前進を急激に踏み込んで止め、その運動エネルギーを腕に流れるように回して集約させ双手から気功と共に流し込む一撃。

 トラックにぶつかり、その衝撃を内部に流し込まれるようなものだ。


 ズドン! という衝撃音と共にバキバキバキ! と木を割る音が響きわたった。


 十三の身長ほどあった枝はメキメキと音をたててへし折れた。


「重っ⋯⋯気と八卦の重心移動で衝撃を地面に流してるとはいえ、それでもかなり腕がやられるな⋯⋯」


 トラック同士がぶつかったようなものだ、いくら内気功の内圧で強化されているとはいえダメージが無いはずはない。


「コンは大丈夫か? って心配するまでもないか⋯⋯」


 どうやったのか見てないから分からないが、巨大な枝が爆散したように木っ端微塵になっている。


 まさかの左右の枝を破壊された大樹は身悶えながら倒れた。


(チャンスか!?)


 と思った瞬間に足元の地面が蠢き、無数の根が下から生えてきた。

 その不意の攻撃に反応が遅れて左足を根に掴まれて宙吊りにされてしまった。


「しまった! コン! ヘルプ頼む!」


 横を見ると同じ態勢で吊られているコンと目があった。


「おぉい! 二人して捕まってどうすんだ!」


 ぐるりと回されお互いがぶつかるように左右から根を叩きつけてきた。


「ヤバっ!」


 コンと十三が衝突する直前、地面から大量の葉っぱがワサワサと間に入った。

 ボフンとクッションのように左右からくる二人を受け止めた、と同時に月穂が風魔法で根を切り裂いた。

 ドサリと地面に落ちる二人。


「プハッ! 助かった! ありがとう翠葉、月穂。

 やってくれたな、次はこっちの番だ!」


 と気を練りなおした瞬間、グラリと視界が揺れた。


「!? 何だ?」


 踏ん張れないままドサリと倒れた。

 コンが驚いて十三の前に立ちカバーする。


「なんだこれ⋯⋯呼吸が⋯⋯苦し⋯⋯」

「あの大樹、何か吸収してる! 背中に見えないように魔法陣を展開してるわ!」


 魔眼を展開させ魔法の発動に気付いた月穂は吸収されているものの可能性を考える。


「呼吸が少し苦しい⋯⋯まさか!?」

「コンちゃん! 十三をこっちへ運んで!」


 コンは素早く十三の足を持ち、月穂の方に投げた。


「グッ⋯⋯!」

「十三! ゆっくり深呼吸! 酸素を取り込んで!」


 そう、吸収されていたのは大量の酸素だった。

 植物は二酸化炭素を吸収し酸素を生産するが、夜間は動物と同じように酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出している。

 大樹はその全身にある大量の気孔から二酸化炭素ではなく魔法により範囲を限定し酸素を取り込んだのだ。

 一気に吸収されたことにより空間の酸素濃度が急激に低下した為、十三に低酸素の症状が発生したのだ。


「ブハッ! フーッ! ヒュー!」

「大丈夫!?」

「ゲホッ! あ⋯⋯あぁ大丈夫。

 なんて攻撃してくるんだ⋯⋯危うく真呼吸が解けるとこだったぞ」

「ヤバすぎるねあれ⋯⋯見えない攻撃、強制的に真呼吸止まったら魔素にやられる、それでなくとも酸素不足で倒れるかもしくは窒息死」

「初見殺しか⋯⋯こっちを舐めてたから最初から使ってこなかったんだな」


 大樹は対生物の必殺技を抜けられ、怒りでそのまま全枝を震わせて魔法陣を反転、風魔法も同時に展開させた。


「あれはダメ! 翠葉ちゃん空間防御系できる!? お願い!」


 魔眼を展開させたいた月穂には視えた、さっきの酸素攻撃に匹敵するものが。

 翠葉は急いで魔法陣を展開、歌と共に風の防御膜を作った。

 同時に月穂は地魔法で土のドームを作る。


「うっ⋯⋯少し入った⋯⋯」

「目眩が⋯⋯ただの風じゃないな」

「魔法陣を反転させてた、たぶん吸収した酸素を吐き出したんだよ、二酸化炭素として、いわゆる毒だね」

「マジか⋯⋯相手の身体能力関係なしにほぼ全ての生物に対しての致命攻撃⋯⋯」

「防護系の魔法無かったら⋯⋯」

「どれだけ強かろうがなす術無し⋯⋯だな」


 風が止まったので土の壁を解除し、月穂はそのまま風魔法の【風牙】を周囲から遠くへ円形に放ち、二酸化炭素を吹き払った。


「あれだけの魔法だから連発は無いと思うけど、察知したら距離を取らないと」

「あぁ、その時はすぐ教えてくれ。

 さて、どう倒したもんだろうな?

 月穂、アイツの魔石の位置わかるか?」

「魔素が集中しているのは中心、大きいコブがあるところよ」

「あそこか、気功最大で中に衝撃を送り込んで一気に仕留めるしかないな、ちまちまやってたらまた致死攻撃がくる」

「じゃあ、こういうのはどう?

 コンちゃんが囮になって翠葉ちゃんと攻撃⋯⋯そこで十三が⋯⋯さらに⋯⋯」

「良いなそれでいってみよう」


 倒れていた大樹かメキメキ、ガサガサとたちあがろうとしている。


「今のうちだ! やるぞ!」

「OK!」


 コンと翠葉が頷いて前に出る。

 コンは魔闘気を纏いジャンプして虚空を蹴り加速をつけて拳を叩き込みにいく。

 翠葉は自然魔法で太い蔦を生成し、大樹の大きな幹に絡みつかせ動きを封じにでた。


 バキャッ!


 とコンの拳が気の幹に叩き込まれるとメキメキと音を立ててひび割れた。

 コンはそのまま連撃へとなだれ込む。


 大樹は焦った。

 弱点耐性を持ち、対生物に対して絶対の初見殺しを有する自身。

 戦闘開始後まだ小さな生物と戦っており、さらに攻撃を受けている。


〔千年ヲ生キタ自身ヲ追イ込ム者ナドイテハナラナイ⋯⋯全力デ駆除スル!〕


 大樹は取り入れていた残りの酸素をエネルギーに変換させた。

 植物は動物よりも大量のミトコンドリアを有している、その利点を活かし大量の酸素をエネルギーへ、さらに葉緑体からもエネルギーを絞り出す。

 それらを魔素と融合させて体内を循環させると大樹の全身から少し金色を含んだ深緑のオーラが吹き出した。


 連撃中のコンが吹き飛ばされ、翠葉の蔦による拘束が弾かれる。


「なんて威圧感⋯⋯あのアヌビスの従者よりも」

「月穂! 翠葉と一緒にもっと下がって!」


 大樹はついに倒れていた態勢から立ち上がった。

 それと同時に根が地面を蹴り、ドン! という音とともに巨大なものが突進してくる。


「その巨体でその動き!?」


 十三は全力の瞬歩で月穂に攻撃がいかないよう横へ回避する。

 それを見て大樹が地面を蹴り直し直角に移動した、その地面は抉れて小さな丘が形成されている。

 威圧感にたまりかねて不安ながらも十三はアヌビスの従者との戦闘で獲得したコンと同じ魔闘気を使っていた。 

 その不安と小さな隙を狙って枝が伸びて

くる。


「ヤバっ!」


 オーラを集中させて防御を固める。

 ドガッ! と交差した腕に枝がぶつかった瞬間大樹のオーラごと衝撃が十三を包み吹き飛ばした。


 バギバキバキッ!


 と音を立てて木々をなぎ倒しながら三十メートルほど吹き飛ばされた。


「ガハッ!」


 肺の空気が全て吐き出され声にならない苦痛が襲ってくる。


(重い⋯⋯なんてもんじゃ⋯⋯ない。

 物理に作用する魔闘気纏ってなかったら⋯⋯戦闘不能になってた)


 追撃しようと突っ込んでくる大樹に顔を向け立ち上がろうとするがフラついて思うように動かない。


(気功と八卦で⋯⋯受け流せるか?)


 グッと構えを取りインパクトに備えて魔眼を発動させる。


 枝と十三の構えた手が交差する瞬間、体の全関節を衝撃が地面と側方に流れるよう捻り内気功と共に受け流す。


 バチン! と十三が飛ばされるが十メートル程で止まった。


「なんとか⋯⋯流せる⋯⋯

 でもダメージはかなりくらう⋯⋯ジリ貧だな」


 大樹は二度の攻撃を受けてまだ立っている小さな生物を見て驚愕し、苛立ち、怒った。


〔何故マダ立ッテイル? アリエナイ!!〕


 大樹はその巨大でジャンプした。

 反転し、天井の水晶を蹴り十三めがけて落ちてくる。

 魔法陣を発動させて葉っぱの雨のおまけ付きで。

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