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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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対話

 先に柘榴(ざくろ)の元へと辿り着いた十和呼は切実に、噛みしめるようにゆっくりと問を発した。


「二人とも無事なの?」


 コクリと柘榴は頷いてみせる。


「良かった、無事なのね⋯⋯でも何故一緒じゃないの? 今は何処にいるの?」


 一つ質問が消化されると矢継ぎ早に次の質問がついて出てくる。


「クィクィッ」


 と柘榴は十和呼の後ろを指す。

 振り返るとそこには正源と美紗がちょうど到着していた。


「二人は無事よ、今ここにはいないけど」

「無事なのね、良かった⋯⋯」

「うむ、何よりの良い知らせじゃな。

 では柘榴殿、説明をお願いできるかの?」

「クィ!」


 柘榴は一対一の記憶転送魔法では無く、記憶映像を空間に映し出す空間系魔法を展開させた。

 宙にホログラムの様な映像が音声付きで映し出された。

 コンとの出会い。

 子鬼の集落へドライアドの翠葉(すいは)を救出。

 その後の狼との戦闘でアヌビスの従者が顕現し、月穂(ゆえ)が傷ついたことが発端で十三が魔闘気に目覚めるもそのまま暴走。

 そこにルシフェルが顕現。

 コンが翠葉と融合しイリヤを顕現。

 イリヤが殺られる寸前に十三の内にいたミカエルが顕現。

 ルシフェルとミカエルが喧嘩を始めたところで十三(じゅうぞう)が間を割って覚醒。

 VRゲームを軸に事態が収まる。


 一気に情報を得た三人は同時に眉間を摘んで言った。


「「「は?」」」


 柘榴も、ですよねー、みたいな感じで手を上げる。


「大根を仲間にの所からもう意味が分からないんだけど⋯⋯」

「しかも中身神様クラス⋯⋯」

「堕天使と大天使が同時に顕現じゃと?

 しかも今も十三の中に!?」

「VRゲームって十三がたまにやってたやつ? なんだっけ⋯⋯パンケーキ揚げソーセージとかなんとか」

「VRパンゲア創世記オンラインじゃないですか?」

「あー、それよそれ」

「なんじゃそれは?」

「VRゴーグルをつけて仮想世界を自由に冒険、生活できるゲームですよ、クラフト要素とかもあって今一番人気のゲームらしいです」

「そのなんとかゲームをやりたいが為に天使達は十三に収まっとるのか?」

「みたいですね⋯⋯」

「はぁ⋯⋯気が抜けそうになるわい」


 最後の映像だけで覚悟、対処法、未来、全てが崩れ訳がわからなくなる。


 数多の世界を滅ぼしてきた悪魔王、堕天使。

 それを阻止してきた英雄王、大天使。


 十三がハマったゲームのおかげで大人しく一つの器に同居している。

 コントロール下に置けるかもしれない事に喜ぶべきなのか、消滅対象として報告し世界的に今動くべきなのか、正源の頭はグルグルと思考の海に沈んで行きそうになる。


「とりあえず無事なら直接会って、今後の話が出来るならそれからよ」

「あぁ⋯⋯うむ、そうじゃな。

あまりにも事態が突飛すぎて止まってしもうたわい」

「上への報告はまず対話の後でしましょう」

「柘榴殿、結界は貼っておるな?」

「クィ!」

「では赴こうかの」

「「はい」」


 祠入り口のゲートをくぐると結果の膜の向こうに座っている十三とコン、そして横たわっている月穂が見えた。


「月穂! 大丈夫!? 月穂!!」


 横たわって動いていない月穂を見て美紗が声をかける。

 その声に皆が来たことに気づいた十三は入り口の方を見て立ち上がった。


「月穂は大丈夫です、生きてます。

 すみません⋯⋯護りきれなくて⋯⋯俺⋯⋯」

「いいのよ、十三君そんなに気に病まないで、月穂も私達も覚悟して臨んだのよ。

 そして月穂は生きている。

 護ろうと必死に力を尽くしてくれたんでしょ? なら私が言わなければならないのはお礼よ、ありがとう」

「う⋯⋯グッ⋯⋯」


 十三は美紗の言葉を聞いて涙が流れた、声を出さないよう耐えながら必死で飲み込もうとあがく。

 横からポンポンとコンが十三の足を撫でる。


「コンさん⋯⋯だったかしら? 柘榴から聞いたわ。

 二人に付き添い護って下さってありがとうございました」


 深く頭を下げる十和呼と共に正源と美紗も頭を下げる。


 手を横にブンブン振って応える、いやいいですよお礼なんて、と言っているように見える。


「柘榴、アクアちゃん、ありがとう。

 帰還報告の判断は正しいわ、対話が終わるもうしばらくまでお願いね」


 二人とも首を縦に頷いて応える。


「さて十三、お主⋯⋯今どうなっとるんじゃ?」

「100%十三だよ、でも中に堕天使ルシフェルと大天使ミカエルがいる。

 半覚醒のような夢の中にいるような状態だと思う、俺がさっきそうだったし」

「ふむ⋯⋯二人は強制的に表に出てこれるのか?」

「いや、元の体と精神や魂が俺なだけに早々簡単には表には出られないみたいだけど、その精神、魂の均衡が揺らぐと出てこれると思う。

 それをしないようVRゲームをさせる事を約束したんだけど、強制力はない。

 だから母さんか誰かにこいつらとの契約魔法をかけて欲しいなとは思ってるんだけど」

「なるほどな、今現状でお主が窮地に陥ったり、精神的ダメージを深く受けなければ自由を奪われる事態は低いと⋯⋯

 不安定じゃな、今も間に結界が無いと対話すら難しい、外に出す訳にはいかんからな」

「うん、分かるよ」

「かと言って『暴走状態』では無いし闇に堕ちている訳でもない。

 今すぐ処分という状況だけは避けられとる。

 さて、どうしたもんか⋯⋯」

「このままだとどうなるんだ?」

「『夢袖(ゆめつぐみ)』と呼ばれる魔素、魔法、一族、祠に関する国内最高機関に委ねられ、世界各国の同様機関を集めた世界機構で審議、その後恐らく多重の次元結界に閉じ込めておくことになるじゃろう」

「封印⋯⋯てこと?」

「安全が確認できるまではそうじゃな」

「そんな⋯⋯いや⋯⋯でもまあそうなるよな」

「そこでさっきのお主の提案じゃ。

 きっちり契約魔法を結べれば話は変わるやもしれん」

「!」

「世界への脅威が削がれコントロール下におけるならばじゃ。

 さらに、裏にいると思われる黒幕探し、この脅威への認識と捜索、捕縛、消滅を提案し協力することを契約に盛り込む。

 これができればお主は世界機構の管理下には置かれるじゃろうが、ある程度自由には動けるはずじゃ」

「⋯⋯」

「まずはここを結界で封印、夢袖のスペシャリストを呼んでお主と二人の契約魔法を構築し結ばせる。

 それが第一歩じゃ」

「月穂は? 月穂は出れるんだろ?」

「⋯⋯残念ながらこの状況と月穂さんのイレギュラー性を考慮すると出すことはできん」

「そんな! 月穂は何もしてないし変な奴が中にいる訳でも⋯⋯訳でも⋯⋯」

「確証はないうえに心当たりが少しでもあるんじゃないのか? 夢の内容とかのぅ」

「⋯⋯」

「そういうことじゃ、まずは検証と証明が必要になる。

 イレギュラー認定とはそういう事じゃよ」

「かと言ってそこにずっとおっても意味はない。

 十三よ⋯⋯祠の先へ進め。

 一族の中の特異イレギュラー、只の直感じゃがお主らにはその必要があると儂は思う。

 じゃが期限は一日、いや一日半じゃ、スペシャリストが来るそれまで、ここを攻略してみせろ!

 それまで儂が時間を稼ぐ」

「爺ちゃん⋯⋯」

「そうと決まれば悠長にしている時間は無いぞ、柘榴殿の次元魔法で下へ戻り攻略を進めるんじゃ!」

「月穂は? まだ起きてないよ」

「担いでゆけ、その時間すらも惜しい。

 しっかり護るんじゃぞ十三」

「⋯⋯分かった、もう意識は堕とさない」

「十三の中のお二人殿、聞こえとるかの?

 VRゲームをする為にはちと面倒じゃが達成事項が数多ある。

 じゃが達成できればある程度自由にする事が可能になるじゃろう。

 お二人の為にも十三と月穂殿の事を宜しく頼み申す」


 深々と正源は頭を下げる。

 少しの希望を込めて。

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