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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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イレギュラー

「さて⋯⋯主導権は取り返したけど、どうしよう⋯⋯いや、そんな事よりまずは月穂(ゆえ)とコンだ!」


 狼と戦っているとその司令塔がオーラの暴走を起こしそこにアヌビスの従者が降臨。

 月穂が傷付き、それを見てキレた十三(じゅうぞう)が魔闘気に目覚めるも、そのまま怒りに任せ魔闘気大暴走。

 恐らく裏にいる黒幕により十三の魂に仕込まれていた堕天使ルシフェルが暴走したオーラを糧に顕現。

 コンが翠葉(すいは)と魔法融合し?コンの本来の魂の姿、火雷神イリヤとして顕現するもルシフェルの規格外の一撃に倒れる。

 トドメを刺される直前に十三の魂に同在していた大天使ミカエルが顕現しルシフェルを阻止。

 ルシフェルが真の黒幕探しとVRゲームをしに旅をするというのをミカエルが止めようとするも、お前も実はめっちゃVRゲームやりたいんだろコラ、と指摘され図星をさされて喧嘩。

 十三が目覚めて仲介。

 

 今の十三の身体にはかつて大天使と呼ばれたミカエル、そして堕天使のルシフェルが混在しているという訳のわからない状況になっている。

 十三はこの事態の後ろにいるだろう黒幕を見つけ出す事、VRゲームを二人にさせる事を約束する代わりに主導権を侵害しないことを誓わせた。

 今は出来ないがこの拮抗が上手くいくなら、その間に正源や十和呼に相談してそれぞれと契約魔法などを組めないか聞いてみようと考えていた。


 翠葉の救出から何かが急激に動き始め、一気に吹き出しここまできている。

 もう十三の頭は許容範囲を超えるギリギリだ。


「月穂! どこだ!?

 コン! お前大丈夫か!?」


 親指を立てて応えるコン(イリヤ)。


 月穂は今、柘榴の次元結界魔法で隔離されアクアの治癒魔法を受けている。

 コンは十三が自我を保ち二人を抑えたのを確認した瞬間、翠葉との融合魔法を解いて今は元の大根だ。


「ぐぁ! 痛ってー! なんでこんなダメージ受けてんるんだ?」


 コンであるイリヤがルシフェルに連撃を放った結果だ。

 今の十三は記憶がうまく噛み合っていない。

 意識がはっきりしているのはミカエルとルシフェルがVRゲームの話をしだしたとこくらいからだ。


「柘榴! アクア! いるのか!?

 月穂は無事か!? こっちは大丈夫だから出てきてくれ!」


 しばらく動きが無かったが、ピシリと空間に裂け目が出来た。

 そこからゆっくりとカーテンを開けるように柘榴が顔を出す。


「いた! おーい月穂は無事なのか!?」


 その問いにコクコクと首を縦に振って柘榴は応えた。


「ふーっ⋯⋯無事か、良かった。

 ありがとな柘榴、アクア」


 柘榴は判断に迷っていた。

 狼の暴走から始まったイレギュラー事案、堕天使、大天使、火雷神の顕現。

 イレギュラーという言葉で終わらせることがはばかられるくらいの異常事態。

 本来なら全力で介入して十三も救いに出なければならないが、重傷の月穂を護るのに専念しなければならなかった。

 今も警戒は最大限だ、あの二体の天使が十三の中にいる。

 オーラも威圧感も消えているが十三が言うとおり大丈夫なのか、近づいていいのかどうかさえ全く分からない。


「とりあえず皆無事で良かった、ほんとに良かった、そして本当に⋯⋯すまなかった」


 気を抜いたわけではないが涙が溢れた。

 怒りに任せ暴走し意識が無くなり、全員の命を感情をコントロールできずに危機に晒したのだ。

 恐らく誰も十三を責めないだろうが自分が許せない。


 その涙を見て柘榴は決断した、帰還要だと。

 危険因子が三つ、ミカエル、イリヤ、そしてルシフェル。

 今はどれも一応コントロール下にはあるがいつまた異常な力をもって動き出すか分からない。

 故に帰還と言っても地下一階の入り口に戻るだけだ、この異常な存在達を枷もなく外に出すわけにはいかない。

 十和呼と美沙を呼び、その枷となる契約魔法を結ばせる。

 それを何とか伝えようと十三に近づこうとしたところ、十三が柘榴に話しかけた。


「戻ろう」


 イレギュラー対応用に貸与契約されていた柘榴とアクアが表立って動いている事を見て理解していた、ここで一旦探索は打ち切りだと。

 始めて魔素に触れ、勉強し、サバイバルをしながら魔物を倒して下層を目指してきたが一度振り出しに戻る事になるが致し方ない、なにせ世界を滅ぼす魔王がここにいるのだから。

 柘榴は十三の目を見て皆を指差し、上を指差した、上に戻るという意味だ。

 十三もすぐにそれを察して静かに頷いた。

 十三が頷いたと同時に魔法陣を足元に展開し、次元空間系魔法による転移魔法で全員同時に入り口手前へと移動する。

 柘榴の額の宝石が強く光ると地面が輝き、皆の視界は暗転した。


 一瞬目眩を感じたもののすぐに地面に立っている感覚が戻ってきた。

 見覚えのあるダンジョン内から見る出口だが見えた。


「クィ、キュイ」


 と十三に向かって手のひらを見せて来るなと意思表示する。


「あぁ、ここで待てってことか?」

「クィ」


 どうやらその通りらしい。

 柘榴は出口へ向かうと一度振り向いて魔法陣を形成し、ガラスのような壁を出口と十三の後ろの通路に貼った。


「ウロウロするなってことか、分かったよ早めに頼むな」

「クィ」


 そのまま柘榴は出口へと消えていった。




 † † † † † † † † 



 トントントントンと小気味いい音を響かせて十和呼と美沙は夕食の準備をしていた。

 地上では夕刻のご飯時。

 今日は村の仕入れ日で、珍しく新鮮なカンバチが手に入ったのでメインに刺し身、大根とのあら煮、芋の茎の炒めもの、味噌汁、米、香の物と共に出す予定だ。

 新鮮な魚に上機嫌の二人はそれぞれ別の鼻歌を歌いながら料理をしていた。


「キャッ!」


 と美紗が声をあげた。


「どうしたの!?」

「あー、指切っちゃった⋯⋯」

「大丈夫? 絆創膏いる?」

「大丈夫です、それより柘榴から契約魔法を通じて連絡が入りました」

「!?」

「イレギュラー発生、すぐに祠入り口にきてと⋯⋯」

「行きましょう、お義父さんを呼んできて、そこから祠に集合で」

「火、消しときます! 先に行って下さい」

「分かったわ」


 料理の全てを投げ出して十和呼は祠へ向かった。

 美紗は正源を呼びに道場へ向かう。

 道場へ着くと気を充満させて座禅を組んでいる正源がいた。


「正源さん連絡がきました! イレギュラー発生です! 直ぐに祠お願いします!」


 正源は濃密な気を体に収めゆっくりと立ち上がった。


「⋯⋯分かった、行こう」


 美紗に振り向いた正源の表情は悲しみと覚悟が同居した厳しい顔になっていた。

 美紗も分かっている、その覚悟の意味を。

 その命を暴走者を手にかけなければいけない事態になるかもしれないことを。

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