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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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天使と堕天使

 激しい連弾を捌ききり肩で息をするコンは何が最善が考えていた。

 目の前の奴にはどう転んでも勝てない。

 何故、今ここで、どうやって十三の身体に⋯⋯目の前の現状の何がどうなってるのかコンにはさっぱり分からない。

 今出来ること、それは命を賭して時間を稼いで月穂(ゆえ)を逃がす、それしか未来に道はない。

 コンの背中に張り付いていた翠葉(すいは)がコンの頭によじ登り、ペシペシとコンの頭を叩く。

 それを受けてコンは頷いた。


「なんだ、木っ端精霊なんか連れてんのか。てことはまだ何か楽せてくれるのか?」


 翠葉はコンと手を合わせ、魔法陣を頭上と足元に展開させて歌で詠唱を重ねる。

 翠葉の大きな魔素が膨らみ、コンに覆いかぶさると形を変え始めた。


「しょーがねーから待ってやるよ、早く終わらせろ」


 直視できない程に強く光を放たれてから少しづつ収まり始めると、魔法陣が足元から上にゆっくり上がっていく。

 するとそこからコンのものではないその全容が見え始めた。

 魔法陣が上がり切るとそこに大根の魔物はいなかった。

 立っているのは金髪でショートボブのスラリとした少女、身体には古代エジプトの衣装を連想させる動きやすそうな服を着ている。

 ゆっくりと目を開けると濃いオレンジ色の瞳が現れた。まつげの長い少し切れ長の目に薄い唇の可憐な美少女だった。

 頭上の 魔法陣がキン! と凝縮して頭の上で光輪となった。

 その頭のてっぺんからは可愛らしく葉っぱが生えている、コンと翠葉の名残りのようだ。

 翠葉はコンと従魔契約を結ぶ前、コンの中身の魂が違うモノだと気付いた。

 翠葉の魔素と魔法、そして特殊な精霊の身体を礎に、有事の際に一時的に魂の姿になれるよう契約を持ちかけた。

 十三(じゅうぞう)と月穂の魂に宿るものに気付いたが故に。


「オイオイ、やっぱりお前か。

 何で魔物で、何で大根なんかやってんだ?

 正義の武神、《火雷神(ひらいしん)》さんよ。

 いや《力天使(パワー)》の方がいいのか? 前の名前は確か、あー⋯⋯イリヤだったか?」

「さぁ? 気がついたら異界で土に埋まってたわ。

 まぁそのせいで望んで無かったこの子達にまた出会うハメになったんだけど⋯⋯

 ていうかあんたなんで私の名前覚えてるの?

 いや、名前なんかどうだっていいわ、私達を表す名前なんか神格化されて無数にあるもの」

「ブハハハハ! 埋まってたって? 面白すぎんだろそれ!

 それと俺は可愛い女性の名前は忘れんようにできてるのよ」

「あら光栄だこと、そんなことより何でお前がこんなとこでその子に堕りてるの? ありえないでしょ」

「さあな、気付いたらこのガキの中にいたんだ。

 今回は俺のいつもの画策じゃねえんだ。

 裏で誰かいるのか、どうやって何かやったのかもよく分かんねえ、ったく舐めたマネしやがるよな」


 ギリギリと歯を鳴らして悔しがる姿に偽りは無さそうにみえる。


「本当の裏がいるってこと? 毎回お前が裏じゃない。

 悪の化身アペプ、悪魔王サタン、堕天使ルシフェル⋯⋯今回はなんて呼べばいいのよ?」

「何でもいいがその中からならルシフェル一択だなー。

 まー黒幕は分かんねえもんは分かんねえよ、分かってたら何をおいても最初にブチのめしに行くからな。

 まぁ、今はそのおかげでそこに倒れて血を流してんのがアイツだってのは分かってるがな」


 ズザッ! とイリヤ(コン)は構える。


「どうするつもり?

 手を出すなら復活早々消すわよ、悪魔王」

「おーい、呼ぶなら魔王にしてくれよ、悪なんて安っぽいのが付くと格が落ちる」

「どっちでもいいわそんなの」

「いーやあるね、悪魔の王より魔そのものの王のがでかいだろ?

 魔素と魔力、魔神、魔導魔法の頂点。

 悪魔なんてちんけな魔族のグループに収めてくれるな」

「ハイハイ、分かった分かった。

 で? だからどうするの?」

「面倒くさそうな奴みたいな扱いすんじゃねーよ」

「実際そうじゃない、否定できるの?」

「んー⋯⋯あー、できんな」

「ほらね、面倒くさいのはいらないから率直に答えなさいな。

 今回は世界を⋯⋯どうするつもり?」


 質問と共にオーラを開放する。

 それは神々しく金色に輝き、頭上の光輪がキィーンと回転し始めた。

 魔闘気ではない、がさらに強く万物を跪かせるような存在感と威圧感を放っている。


「おーおー、相も変わらず汚れの無い美しい《神気》だことで。

 で⋯⋯殺りあいてーのか?」

「お前を生かしておく理由があるの?

 世界を滅ぼす墮神の最高戦力さん」

「寝起きの運動には丁度いいか、じゃあいくぜ?」


 頭上の黒輪が禍々しく蠢き、拡大される。

 身体からは黒に金が混じったオーラが渦巻きゆらりと纏われた。


「アクア、月穂を後ろへ!

 柘榴(ざくろ)! いるんでしょ? イレギュラーよ次元系結界を今すぐ貼りなさい!」


 次元魔法で姿を消して捕縛結界を何時でも放てるように準備していた柘榴は、言われてすぐに次元結界へと切り替える。


「おー? 珍しいもん連れてんじゃねーかよ、カーバンクルの⋯⋯亜種か?」


 視線を合わせられビクリと柘榴は後ずさった。


「精々硬ーいの貼っとけよー、寝起きで手加減できねーからな」


 柘榴は準備を始めていた次元結界魔法をかける。

 額の赤い宝石の全面に何重にも魔法陣が現れ、複雑にそれぞれが回転し、融合し、新たな魔法陣に再構成されそれがさらに幾重にも折り重なる。

 額の宝石が強く光を放つと前足を地面にバン! と叩きつけた。

 幾重にも重なっていた魔法陣が柘榴の前面から球体状に広がり光の膜を生成し、カーテンを閉じるように閉まった。


(あれでとりあえずは安心ね)


「さて、私もしばらく大根だったからこの身体に慣れてないわ、手加減出来ないけど文句言わないでね」


 ニヤリと笑いながら静かに構えをとる。

 

「フハハ! そっちこそ簡単に死ぬんじゃねーぞ! 俺を楽しませてから死ね」


 同時に地面を蹴り、互いの間合いに入るなり両者ともオーラを纏わせた拳を放った。


 ズガン! と衝撃波が生まれて地面が凹む。

 そのまま拳を相手にねじ込もうとお互いさらにオーラを纏わせる。


「ハハハ! そんなもんか?

 大根やってたんだもんなー、訛りすぎじゃねーのか?」

「寝起きのクセにテンション高いわね」

「寝起きでも大好物の戦闘をぶら下げられたらどうしたって高ぶっちまう、それが武神のお前となると興奮でおかしくなっちまいそうだよ」

「いらないわよあんたのそんな悪趣味な嗜好情報」

「つれねーなーオイ。

 久しぶりなんだ会話も楽しもうぜ!」

「やっぱり面倒くさい奴」

「お褒めに預かり光栄で御座います、火雷神様、ギャハハハハ!」


 ルシフェルは打ち合っている拳の肘に黒い光輪を発現させた。

 それを見てイリスも同じ様に肘に光輪を発現させる。

 ギュアッ! と互いの光輪が高速回転し拳への理力が跳ね上がる。

 拳同士が衝撃波で反発し互いに距離が出来る。


「力弱えーな、そういやさっきまでボロボロで倒れてたんだったか?

 全力出せねーんなら面白くねーぞ」

「いらない心配をどうも、お気になさらず」


(指摘通り身体は万全じゃない⋯⋯まだナメきってる内にやるしか無いわね)


 静かに息を吐き魔素を吸い込むと構えを取り直す。

 そしてブン! と背中に大きい光輪を発現させた。


「おっとーやる気だねー、いいぜ来いよ!」


 ルシフェルも背中に黒い光輪を発現させる。

 

 イリヤはそのまま光輪に沿って魔法陣を幾つも展開させた。


『■● ▲▲■■▲● ●●● ■●● ■■▲■

 ■●●■●■▲● ● ■● ▲▲●

 ⋯⋯《▲●■ ▲ ■■●■▲》』


 聞いたことの無い言語の詠唱後、バチンッ! と背中の大きい光輪から雷が迸りイリヤに身体に纏われた。

 その雷は蒼い炎で覆われさらに神気を纏っている。


「あ、ヤベッ⋯⋯いきなりそれかよ」


 ルシフェルは両腕をクロスさせ黒いオーラを背中の光輪から注ぎ込む。

 さらに瞳に魔法陣を浮かび上がらせた。


 刹那、イリヤがバチッ! という音と共に消え、立っていた場所にオーラの残滓が残っているだけだ。

 消えたと同時に拳はルシフェルに叩き込まれていた、それもすでに数十発。

 一撃ごとに神雷、神炎、神気が凝縮され叩き込まれる。

 雷により身体反応速度を上げ、相手の動きを奪い、神経を焼き切るダメージを与える天の雷を。

 さらに相手を内から焼き尽くす天の炎を。

 神気によりそれら全てを強化し、さらに身体強化して放つイリヤの極速火力の連撃。

 神気での強化が無ければ相手より自身の肉体が滅ぶ威力と速度だ。

 古代語を現代の言葉であてはめると、


 《焔雷天滅(えんらいてんめつ)

 

 その連撃の一発目にして既に地面は深く抉れ、衝撃波内は炎に包まれ空気が消し飛んだ。

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