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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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ブースト

 ドライアドが従魔契約をコンと交わして従魔として仲間になった。

 魔物(大根)が魔物(精霊)を従魔にするという展開に少し動揺しつつも進むことに決めた一行は、下層への道を探しつつ食料獲得に向けて歩き出した。

 ドライアドはせっかく再度呼び出したので暫くはそのまま一緒に行動するようだ。


「またいないかなー、羊」

「どうだろうね、いたら逃さないようにしないとねー、なんせ食料と防具と寝具が纏めて手に入るんだもん」

「見つけたら最優先で狩っていこう」

「そうしよー。

 あ、そうだドライアドさん、名前ってあるの?」


 首をフルフルと横に振った、どうやら個体を示す名前をつける文化や習慣はないらしい。


「コンちゃん、名前何かいい案ある?」


 少し考えてコンはドライアドの頭の葉っぱと瞳を指した。


「それを特徴に名前をつけるってこと?」


 コンが一つ頷く。


「うーん、頭の葉っぱと瞳かー⋯⋯

 緑の瞳と葉っぱ⋯⋯

 緑葉 瞳」

「何でフルネームなの⋯⋯」

「案外しっくりくるかなーとか思ったんだけど⋯⋯」

「この姿で和名フルネームは⋯⋯却下」


 コンがゲシゲシと十三(じゅうぞう)の足を蹴り、ドライアドがジト目で見ている。


「イタタタ! 良いと思ったのに⋯⋯」

「じゃあ私の番。

 えーと⋯⋯翡翠みたいな瞳と葉っぱ⋯⋯

 翠葉(すいは)ちゃん! どうかな?」


 コンとが親指をグッとあげ、ドライアドが月穂(ゆえ)に抱きついた。


「やったー! 気に入ってくれた? 翠葉ちゃん」


 顔をスリスリと月穂にこすり付けて喜んでいる。


「悔しい⋯⋯」


 十三は漢字フルネームがかなりイケてると自信があったようだ。


 そこから暫く森の中を進んでいるとドライアドが前に出て皆を止めた。


「どうしたの翠葉ちゃん?」

「何かいるのか?」


 翠葉は魔法陣を展開した。


「魔法? 何をするつもりなの?」


 魔法を発動させようとした翠葉を見て、

月穂はすぐに魔瞳術を発動させる。

 翠葉の手から魔法は前方に円状に放たれた。


「何だ? 何の魔法?」

「たぶん不可視の音の魔法だ、中級魔法だよ」

「それで何するんだ翠葉は?」

「たぶん索敵魔法、ソナーみたいなものだよ」

「おお! こないだ言ってたこのメンバーにめっちゃ欲しかった能力じゃないか!」

「うん、敵の位置が分かればこのサバイバル生活が物凄く助かるよねーって言ってたばかりだもんね」


 翠葉は情報を得たのかくるりとこちらを向いて手を伸ばした。

 すると指から緑の茎がスルスル五本伸びて伸びて長さの違うところで丸を作って止まって後ろを向き直した。


「これって、敵のおおよその位置?」


 コクコクと頷く。


「姿は見えないな、さっきの小鬼かな」


 翠葉はまるでワオーンと聞こえるみたいに狼の真似をした。


「狼か、五体⋯⋯」

「チーム戦だね」

「あぁ、地上の狼と同じなら向こうにリーダーがいるはずだ。各個撃破して全滅させるか、司令塔を倒すか」

「向こうは恐らく司令塔を後衛に残りが攻めてくる感じかな、こっちは俺とコンが前衛で月穂とドライアドが後衛。

 俺とコンで一人二体づつ相手にして月穂とドライアドで司令塔を遠距離撃破がセオリーかな?」

「二人の支援と司令塔は任せて、全力で他の狼を止めてくれればOKだよ」

「ドライアドは何が出来るかまだ知らないけど、いけるよな?」


 コクリと自信ありげに頷いた。


「よし、決まりだ。

 作戦通りいくぞ、当たらないだろうけど牽制に遠距離一発をどれかに打って反応を見る、当たればラッキーだ。

 その後の動きと対応を見て司令塔を特定しよう」


 皆一様に頷くと、月穂は得意の水魔法を速度最大で放った。

 狼のうちの一体に当たる直前、気付いた他の狼か吠え、それに反射して伏せて避けた。


「やっぱり当たらないか」


 後方にいた体毛が他より黒い狼が一声吠えると狼達は集まり、陣形を組んだ。

 吠えた狼を後ろに円弧を描いて前衛に四体並ぶ。


「奴が司令塔か、陣形はやはり前衛四体だな」

「翠葉ちゃんはコンちゃんの支援、スキあらば司令塔に遠距離攻撃宜しく、私は十三の支援と遠距離」

「頼んだ」


 十三とコンは同時にオーラを纏い地面を蹴る。

 前衛の狼達も二体づつに別れ駆け出してかきた。


「早い! でも対応出来ない程じゃない」


 互いにあと数歩というところで司令塔が吠えた。

 それと同時に魔法陣が狼達の足に展開された。

 刹那、狼達の姿を見失った。


「なっ!?」


 ギリギリで感じた殺気に反応してその方向に蹴りを繰り出す。

 喰らいつこうとしてきた一体の肩で蹴りが防がれた。


(もう一体はどこだ!?)


 咄嗟に魔瞳術を発現させた。

 視界が広がり全方位からの情報が流れてくる。


(上!?)


 腕を上で交差させるとそこに全体重とスピードで爪を振り抜いてきた。


 ザシュ!


 上にしていた左手が引き裂かれ鮮血が飛び散った。

 怯む間もなく横からもう一体が体勢を変え噛み付こうとしてくる。

 上から食らった攻撃の勢いを利用し身体を捻ってギリギリで牙を躱す。


(強い! とんでもない速さだ)


 月穂は狼の急なスピードアップに目がついていかなかった、援護仕様にも捉えられない。

 直ぐに魔瞳術を発現させる。


(何あのスピード!?⋯⋯まさか司令塔の支援魔法?

 でも支援魔法は上級魔法、三種属性を同時に発動させる多重混合魔法。

 それをあの獣の魔物は使えると言うの!?)


 コンも同じく敵の姿を一瞬見失った。

 殺気を感知し、相手の意表を突いたオーラを使った空中移動でギリギリ凌いだ。

 後ろにいた翠葉もいきなりのスピード変化についていけなかった。


 月穂は魔眼発現と同時に魔素を解析する。


(足に狼自身とは違う魔素が纏われてる、あの色、風属性? じゃあ支援魔法じゃない)


「あの狼達、風魔法を足に纏ってるわ!」

「それでブーストかけてるのか」


 ひとまず距離をとった十三はチラリと切り裂かれた左腕を見る。


(使えるけど、攻撃は厳しい⋯⋯か。

 初撃でここまで食らうと分が悪いな。

 持ってる全力をぶつけて後衛に任せるしかない)


 十三は息を吐き直し体内に魔素と内気功を循環させる。

 十三の魔眼は死角無く周囲を捉える、が燃費がかなり悪い為に常時発動は出来ない。

 要所要所で瞬発的に使うしか現在運用は不可能だ。


「十三! 狼達の足元の魔法が消えた。 たぶん魔法の維持時間は五秒、次の攻撃時にも恐らく使ってくるわ」

「五秒か⋯⋯実際の戦闘中の五秒ブーストは長いな」


 狼達はスピード攻撃が凌がれたことで距離を置き様子を見ている。

 月穂は話しながら応急処置程度の簡易の治癒魔法を十三の腕にかける。


「だね、支援系の魔法が使えるだけでチームの総戦力が格段に上がる、でもあれは風の魔法だから威力も時間もその程度。

 でも上級にある本物の支援魔法だと種類も効果も時間も範囲も段違い。

 それだけでとんでもない脅威になる」

「支援魔法を使う敵のチームとかには絶対出くわしたくないな」

「激しく同意だよ」

「さて、どう攻めるかな」

「翠葉ちゃん、何かいい手ある?」


 翠葉は足に魔素を集めると蔦を生成し自分の足に絡めて見せた。


「なるほど、それで拘束か。

 でもあのスピード捉えられる?」


 少し首を傾げる。

 やはりあのスピードは厄介なようだ。


「じゃあ攻撃の瞬間か直後を狙えないかな?」


 翠葉はコクリと頷き腕に力こぶを作るポーズをとった、力こぶはできていない。


「よし、じゃあ次の攻撃時に頼むぞ。

 俺やコンが攻撃を受けても怯まないで捉えてくれ。

 月穂、回復助かった、ありがとう」

「全快には今は無理、時間がかかる」


 その時、リーダーの狼が一声吠えた。


「来るぞ!」


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