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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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救出依頼と奪還作戦

 獲物の狼を担いだ二体の人型の魔物の追跡を始めて五分が過ぎたところで岩の間に亀裂のように走る洞窟が見えてきた。

 恐らくあそこが集落の入り口なのだろう、二体の人型が武器を持ち見張りのように立っている。

 入り口で獲物を担いだ二体が見張りに話しかけているようだ、遠すぎて何も聴こえないが一つ情報を得た。

 人型は言語を持ち、意思疎通をしている、やはり知能は相当高いようだ。

 その時、逆方向からさらにフードをかぶった二体が現れ入り口の見張りに何かを見せた。

 その際にハッキリと顔が見えた。


 小鬼⋯⋯餓鬼


 見た瞬間脳裏によぎったのはそのイメージ。ゲーム等でゴブリンと呼ばれるモンスターを想起させる。



「小鬼!? 角が生えてる⋯⋯」

「アニメとかじゃなくてリアルに動いてるのと、実際に顔が見えると動物系と違って⋯⋯怖い」


 二足歩行、知能、文明持ち、狩猟種族⋯⋯

 種族も見た目も違うが本能的に嫌悪と恐怖が心の奥から湧き出てくる。

 同族嫌悪に近いのもしれない。


 「あっ? 手になんかぶら下げてる、何かを縛って持ってるみたいだけど」

「小さい緑色の⋯⋯何だろあれ?」


 その時、カーバンクルの柘榴の時空魔法で姿を消していたウンディーネのアクアが急に十三の頭の上に姿を現し、ポコポコと水の音を鳴らしながらジャンプして慌てている。

 少しパニックになっているようだ。


「うわ! ビックリしたー! アクア?

 ずっと頭の上にいたのか? どうしたんだ急に?」


 涙を流しながらポコポコと訴えてくるがよく分からない。

 アクアの焦りと悲しみが契約の際の魔素の繋がりを通して流れてくる。


「まさかあの緑色のやつ、知り合いか?」


 コクコクと泣きながら激しく頷く。

 そんなアクアを見て月穂が優しく手で包んで抱きしめた。


「知り合いなんだ⋯⋯あの人型の手から救出して欲しいの?」


 先程よりさらに激しくコクコクと頷く。

 アクアは十三と月穂のイレギュラー発生以外での活動は契約違反となる為、自身が動く事は出来ない。

 二人に懇願する以外に緑色の知り合いを助ける方法が無いのだ。


 泣き崩れるアクアを見て月穂は十三に向き直り目で問いかける。

 探索に必要ないかもしれない危険に自分達を晒すのは得策ではない。

 誰かが危険に晒されるかもしれない、でもやはり気持ちでは泣き崩れているアクアを助けない選択は二人には不可能だった。


「分かったよアクア、助けに行こう。

 捕まって時間が経てば経つほど危険だろう、直ぐに乗り込まないと」


 アクアは嬉しさと申し訳なさで涙をボロボロ零しながら十三の顔に抱きついた。


「うわっと、大丈夫、絶対に助けような」

「あの洞穴、たぶんそのまま地面の下に集落があるんだよね」

「この地形からだとそうだろうな」

「んー⋯⋯ちょっと思いついたんだけどいいかなな?」


 月穂は皆に作戦を提案する。


「⋯⋯という感じなんだけど」


 十三は頭の中で何度かシュミレートしてみる。


「未知の集落、集団相手にこっちの被害を抑えつつ⋯⋯うん、ただ直接正面から突っ込むよりはかなりいけそうだ」

「私達にある手札だと一番可能性はある思う、最初の難関さえクリアすれば確立はだいぶ上がるはず。

 その最初がクリアできなかったらプランBで」

「よし、それで行こう。

 アクア、俺達のイレギュラー事態以外は何があっても手は出すなよ、いいな?」


 アクアはコクコクと頷いて約束した。

 その後、皆ともう一度作戦を確認し、直ぐに実行に移すことにした。




 †  †  †  †




 準備が整った十三と月穂は緊張しながら見張りがいる入り口へ歩いていく。

 近くまで行くと小鬼の姿がハッキリ見えてきた。

 小柄で肌が少し暗い緑がかっており、表情は厳つい。二本の小さい角と鋭く尖った歯も見える。

 小鬼は二人に気付いた。

 見張りは機嫌悪そうに視線を二人が持っている物に向ける。

 十三の手にはコンの頭の葉っぱが握られており、ブラブラとコンが揺れている。


(頼むぞー、通してくれ!)


 見張りの目にはフードを被った小鬼二体が手に水の精霊を握っているように見えている。

 月穂の最も得意とする属性は水と光、その二つを二重複合させた中級の幻魔法、いわゆる幻術をかけている。

 得意の属性ではなく中級の治癒魔法習得にほぼ全てをかけた為、使える種類はその基礎である単純な幻を見せるもののみに留まっていた。

 今の月穂の全魔力を羊の角で増幅しても約五分が限界、それまでにケリをつけなければならない。

 幻によって完全に誤認している見張りの小鬼二匹は獲物を見て舌なめずりをして狂喜乱舞した。

 どうやら精霊種は獲物としてかなり喜ばれるようだ。


(よし食いついた! このまま入れるか!?)


 十三は顎をシャクって入り口を見る。

 早く通らせろ、疲れてるんだよこっちはとでも言っているように急かす。

 見張りは分かった分かったとでも言ってるのか、言葉を発して中に行くように手を入り口へ向けた。

 そのままその横を通り抜ける。


(やった! 難関はクリア、中に入れる!)

(良かったー、緊張したよー! 怖かったよー!)


 内心緊張で震えそうになっていた二人は最初の難関をクリアできたことで少し肩の力を抜くことができた。

 コンは動かないように無心で十三に掴まれてブラブラしている。


(よし、さっきのフードの小鬼達を探してアクアの知り合い奪還だ!)




 入り口から降りて行くと直ぐに開けた広場のようなところに出た。

 地下の中がかなり明るいのはおそらくこの階層の天井にビッシリ生えている発光している鉱石が使われているのだろう。

 見渡すと何体かの小鬼がゴロゴロと広場で寛いでおり、広場の左右には幾つか洞穴が空いている、居住区などに繋がっているのだろう。


「時間がない、近くの小鬼とコンタクトをとる」

「え? 大丈夫?」


 月穂の返答に被るくらいですでに十三は動きだした。

 一番近くの小鬼に近寄ると手に持ったウンディーネの姿をしたコンを見せてから洞穴を指す。

 小鬼は目を見開いてコンを見つめている、精霊種はかなり珍しいのだろうか?

 何かいいながら結局一つの洞穴を指した。


(あそこか⋯⋯)


 躊躇することなくすぐにその洞穴へと入っていった。

 中の道は広く地下一階を思わせる回廊だ、道は下に続いている。

 途中、木で作られた無骨な扉が道の横にあった。


「何があるか分からないけど、調べるしかないよな」

「気をつけて、私は外を警戒しとく」


 回廊に小鬼がいないのを確認して扉を開けると中には幾つかの穴が壁に空いていて石と木の柵がつけられている。


「⋯⋯牢屋?」


 中を覗いていくとそこには動物型の魔物が入れられていた。

 その中には先程の狼もいる、かなりの深手だったのだろう、ピクリとも動かない。

 

「いや⋯⋯食糧庫か」


 全身の毛が逆立つ。


「あいつら食う気なのか、アクアの知り合いも⋯⋯

 急ごう」

「うん、幻術の時間も余裕がない」


 急いでさらに降りるとすぐに別の扉があった。

 警戒しつつそのまま静かに開ける。

 部屋の中は明るく、様々なよく分からない道具や斧、ボロボロの服や槍もある。


(⋯⋯武器庫? 宝物庫?)


 そこには先程のフードを被った二体がいた。

 ゴソゴソと何かしている、一体が横を少し向いた時にちらりと見えた。

 緑色の何かを瓶のようなもに詰め込んでいる。


「ガラス瓶⋯⋯? そんなもの作れるの?

 それどころじゃないや、今助ける?」

「いや少し待とう、最大限不要な戦闘は避けたほうがいい、時間は厳しいけどまだ折り返せる。

 不審がられないように俺達もその辺の壺にコンを詰めるふりをしよう」

「分かった」


 二人はコンを詰め込む為の物を探し、汚い瓶を見つけるとそこにコンを詰め込み始めた。



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