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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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人型

 三人は森へと差し掛かったところで一度短い休憩をとる。

 深く入る前に丈夫そうな木を採取して月穂に槍を持たせる為だ。

 近接は出来ないので気休めにでも長い獲物で距離を取って牽制、時間稼ぎをする

のが目的だ。

 コンも持ちたいようだったが、持ち味の近接戦闘の邪魔になるだけなので二人は断った。


 準備が整ったところで森へと入る。

 十三は前方、コンは左から左後方、月穂は右から右後方、そして上は全員でカバーしゆっくりと進む。

 古い森なのか地面に生えている草はあまりなく、茶色い土と葉っぱが覆っていて視界は見渡しやすい。

 草をかき分けて進まなくて済むのはかなり楽だが魔物からもこちらを発見しやすいので用心して進む。

 十三は進みながら木にナイフで目印を付けて行く、この広そうな階層で迷うのはゴメンだろう。

 そうして歩いている中ふと気づいた。



「この道、かなり踏み慣らされてないか⋯⋯?」

「気にしてなかったけど言われてみればそうだね、獣道でもなく歩きやすい」

「ダンジョンの仕様? それか魔物が頻繁に通るからか?

 なんにせよ自然に出来た道じゃない感じだな」

「だとするとこの道を使ってる魔物に遭遇しやすいかもって事だよね」

「あぁ、そうなるよな」

「ちょっと道外れて進む?」

「出来れば魔物は先にこっちから発見しておきたいし、そうしようか」


 すぐに道を外れて森の中へと入り込み、ギリギリさっきまで進んでたその道が見えるように並行して歩み始めた。

 

「今まで洞窟内で警戒範囲が狭かったから良かったけど、前後左右に上と下さらに道への特別な警戒、どこから何が襲ってくるか分からない緊張感と恐怖感、慣れないし神経ガリガリ削られるな⋯⋯」

「だよね、警戒範囲が360度はかなり厳しいよ。

 野生動物たちってこんな世界を毎日生き抜いてるんだね、ほんと凄い」

「何が怖いって、先に見つかって魔法で遠距離から攻撃されるのが一番怖いよ。

 自然界と違って魔法っていうとんでも能力があるから想定もしにくいし」

「魔法使えると便利だけどそれを向けられた時の脅威は銃以上だもんね」

「こういう所だと戦闘能力よりもまずは索敵探知の能力のほうが重要になるんだな」


 三人は戦闘能力やチームとしてはかなり高い、近接二人に高火力と回復の後衛。

 何事もなく戦闘に入れば大抵の相手には善戦できる。

 もし戦闘前にそれを崩されればその優位はたちまち無くなり、後手に回れば簡単に崩壊してしまうだろう。

 それを補い防ぐ為には先手を常に取れる様、隠れ潜みながら進み、その上で索敵や探知の能力が必須となってくる。

 月穂と十三の魔瞳術で少しはカバー出来るかもしれないが、少なからず魔素を消費して使っている為、常時展開はできない。

 

「魔法座学で何か無かった? 索敵系の魔法とか」

「中級で音魔法があってそこの分類でソナーみたいな探知魔法はあったよ」

「中級か⋯⋯じゃあ使えないな」

「うん、まだ無理だね」

「やっぱり所々は魔瞳術でカバーするしかないな」

「うん、そうだね」


 探知魔法への期待は今は諦め、各自でできる限りの警戒をしながら暫く進むと、運良く先に魔物を見つけた。

 その姿をみて戦慄する。


 手に石斧のような武器を持っている、小柄で頭に毛はない、顔や他の特徴は三人の位置から遠くて見えないが衣服のようなものを身に着けている。


「なんだあれ、人型の⋯⋯魔物?」

「小人?」

「石斧みたいなの持ってる、武器を作る文明、文化を持ってるのか?」

「ボロボロだけと服みたいなのも着てるし、たぶんそうだよね」

「見つからないように後をつけよう。

 不意に集落とか集団に出くわすのはゴメンだから、こっちから先に見つけて把握しておくのが良いと思うけど、どう思う?」

「戻って逆に進むのも手だけど、そっちが安全かどうかも分からないし⋯⋯

 こっちから見つからないように監視しながら動けるならありかな」

「じゃあ決まりだ、後をつけながら進もう」


 細心の注意を払いながら追跡を始める。

 少しすると人型の魔物は急に止まって腰を落とした。

 十三は手を横に出して月穂とコンを制止し低く構えるよう促す。


(気付かれたか!? いや⋯⋯興味の先はこっちじゃない?)


 人型の魔物の視線の先にあるもの、そこには大きめの灰色の毛の犬のような動物がいた。


「犬? ⋯⋯いや⋯⋯狼か」

「狼⋯⋯群れがいるってことかな?」

「あまり考えたくないけど、狼だとしたらそうだと思う。

 こっち風上じゃないよな?」

「匂いが流れてたら見つかる⋯⋯かも」


 落ちている枯れ葉を手から舞わせると幸いな事に風上ではなかった、しかし風向きが変われば直ぐに見つかるだろう。


「良かった、今の所は大丈夫そうだな。

 人型の魔物もそうだけど狼の出現でさらにに緊張感増したな」

「集団の狩りに特化した生き物が二種⋯⋯向こうもチームってことだもんね」


 息を潜めて見ていると人型がジリジリと狼から離れようと後ずさっている。

 風上だからか狼はまだ気付いていない。

 人型はある程度距離がとれたところで止まり、そこから驚きの行動に出た。

 立ち上がって狼に向かって石を投げたのだ。

 十三も月穂も人型はてっきり逃げるものと思っていた。

 狼は石が飛んできた方向を睨み、唸り、駆け出した。

 人型は立ったまま動かない⋯⋯

 狼は人型まで十メートルに迫る。

 そこで人型は左手をバッとあげると狼は前足が絡み派手に転んでそのまま消えた。


「なんだ今の!? 遠くてそこまでよく見えない」

「魔法じゃなかった、魔瞳術で魔素の流れは見えなかった」

「魔瞳術使って見てたのか、さすが月穂。

 じゃあ消えたのは何なんだ?」


 困惑してみていると狼が消えた木の上から何か棒のようなものが勢いよく落ちた。


「あっ! あの人型もう一匹木の上にいる」


 木の上の人型は何か紐のようなものを巻き上げている。

 すると地面から木に串刺しになった狼が引き上げられてきた。


「落とし穴⋯⋯あの人型、集団で罠を使って狩りをするのか、ヤバイな」

「これからは罠にも気を使って移動しないといけなくなったね⋯⋯」


 知恵と文明を持った魔物。

 姿形は違えど人を相手に戦うようなものだ。


「もし戦うとなったら今までの戦闘とは異質なものになるな、知恵と仲間と武器と罠、地の利も向こうにはある」

「集団の規模は分からないけど、あそこ迄の狩りをしてるなら十体やそこらじゃないよね⋯⋯たぶん」

「あぁ、だろうな。

 さてと⋯⋯どうする? さっきの話の確認だけど、引き返して逆から進むか、追跡して情報を得ておくか⋯⋯」

「んー⋯⋯やっぱり追跡しよう、さっき言った通り戻って逆を行ってもさらに危険かもしれないし、時間も相当ロスするよ。

 いずれどうしても戦わないといけない敵かもしれないし」

「階層ボス⋯⋯か」

「安全マージンを可能な限りとって行こう、追跡しながら対策も考えていこうよ」

「そうしようか。

 先頭は俺、月穂とコンは二人横に並んで三角形の形で警戒しながら進もう」


 改めてこの先を進む道を決め直して二匹の人型の追跡を開始した。


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