大根から学ぶ空中移動? 地下三階へ
エピソード23が重複していた為、後ほど投稿予定だったこの世界の始まり、《世界を変えた少女》をエピソード23に変更し投稿しました。
「この瞳、周囲を目以外でも知覚出来るのかな? コンや月穂を見ても何も変わらないし、かなり目に集中させないと維持出来ない⋯⋯ってか酔いそうだコレ」
「大丈夫? 慣れるまでゆっくり使った方が良さそうだね。
でもこれで二人とも魔瞳術が使えるんだ、凄いステップアップだよね」
「うん、でも俺のはかなり集中か必要みたいだし、身体の動きと合わせてゆっくり慣らしていくよ、いきなり戦闘で使うのも怖すぎるし」
「うん、私も少しづつ慣らしてく」
「そういやコンは魔瞳術使えるのか?」
コンはグッと親指を出してフルフルと頭横に振った。
「いやだからいつもどっちだよそれ!
まぁさすがのコンもそこまでスペック高くないかな」
よく分からないリアクションで結局は使えるのか使えないのか分からないまま流された。
「あっ! そうだコン! 例のオレンジオーラと空中回避、教えてくれる約束だったよな!」
あー、そうえいばそうだったな。みたいな感じで頭をポリポリかいて少し離れるコン。
腰を少し落としてシャドーボクシングを始め、その後に両腕を目の前で交差させてバッ! と腰の横に広げると同時にオーラを開放した。
「おぉー! 有名なバトル漫画みたいだ!」
「うわ、すごい威圧感」
そのまま軽くジャンプした後に右足を虚空に蹴り出す。
ボッ! という音と共に弾かれたようにコンが逆方向へと飛ぶ。
「凄い音だな」
「うん、でもどうなってるのかサッパリだね」
コンは、(ハイ、やってみて)みたいな感じで着地後に腕を組んでこっちを見ている。
「えーっと、やるやらない以前にオレンジのオーラすら出せないんだけど?」
首を左右にフルフルとふってこめかみに指を添えた。
「えー!? 何その(ヤレヤレ、こんな事もできないなんて)みたいなの!? 知らないものを扱える訳ないし!」
コンはどうしたもんか? と顎に手を当てて考えている。
(これは予想以上に難しいぞ⋯⋯詳しいコミュニケーションがとれないってキツイ)
「コンちゃん、もう一回やってみて。今度は魔瞳術を使って見てみるから」
「おぉ、ナイスアイデア! やってみよう」
二人は魔素を流し、魔瞳術を発動させてコンに準備万端だと親指を立てて伝える。
コンはさっきと同じようにオーラを放ち、ジャンプしてから虚空に蹴りを繰り出す。
二人は魔瞳術を発現させて何も見逃さないようにしっかりと瞬きもせず見つめる。
ボッ! と再度コンは蹴りを繰り出した後に着地。
(どう? 今回は?)みたいな感じでまたも腕を組んでこっちを見つめている
「コンちゃんがオーラを出す直前、身体の中を流れてた魔素と何かが混ざり合って放出されてた、十三の気功みたいな感じ」
「俺はコンが、蹴りを繰り出す直前に足裏からオレンジオーラの板みたいなのが噴出されるのが見えた」
コンはコクコクと頷きながら手を叩く、正解のようだ。
ただ、コンが練り込み、混ぜているものが全く何か分からない。
「できるか分からないけど気功でやってみる」
十三は気を魔素に練り込み赤黒いオーラを発し、蹴りとともに足裏から放出させてみる。
「あれ、上手くいかない⋯⋯内気功じゃなくて外気功かな」
外に気を放出する外気功で試してみるも結果はほぼ同じ。
足裏から外にオーラが放出されるも足裏に何の圧力も感じない。
「やっぱり気功じゃないんだろうな、だとすると一体何なんだ? 魔物のみが扱えるとかだったら一生不可能じゃないか?」
それを聞いてコンが指を左右に振る。
(チッチッチッ、そうじゃないんだな)とでも言ってるようだ。
「じゃあ、人でも可能ってことだね。それが何かを先ずは突き止めないと始まらないね」
「そっか、残念。すぐに習得は無理か」
「ここでそんなに時間を費やせないし、探索しながらやるしかないね!食料の件もあるし」
「そうだな、じゃあ進もうか」
三人は奥に見える空洞へと向かった。
そこには上に登る坂道があった。この蟻地獄の空間はどうやら地下二階と三階の中間層にあるようだ。
三人は坂道を登ると二つの扉がある部屋に出た。
「ここ、ボス部屋かな」
「片方空いてるのは入り口かな? 閉まってる方行ってみる?」
「OK、気を引き締めて行こう」
青い鉄のような扉の前まで行くと大きな音をたてながら自動的に開いた。
ふぅ、と息を吐いて十三は先頭を切って扉をくぐった。
上の階と変わらず階段が下に続いており、下まで辿り着くとそこにも扉があった。
気を練り込み、いつでも戦闘に入れるように心と身体もスイッチを入れる。
片手で扉を押すとギギギッと嫌な音を立てて開いた。
少し顔を扉から覗かせてみると、十三はあまりの光景に思考と身体が強張った。
そこには先が見えないほどの広さ、天井も三十メートル程はあり、草原と木が生い茂り、湖らしきものも見える。
地上の自然そのままのような場所だった。
「地下に降りてきたよな⋯⋯」
「うん⋯⋯間違いないよ」
少し薄暗い、夏の夕暮れのような明るさは天井から剣山のようにぶら下がっている鍾乳洞が少し白や青、オレンジ色に発光しているからだろう。
「空気がキレイ⋯⋯痛いくらい澄んでる」
「動物⋯⋯いるかな?」
「食料って意味?」
「その通り、腹が減っては何とやら」
「木とか石、何かに使えそうな物があればそれも持っていけるかな」
「うん、道具が何も無いのはキツイから探しながらいこうか」
「この広さ、ボス部屋探すの厳しそうだなー、っていうか部屋自体あるのか?
ここから直進しても後で大変だし、右からぐるりと回り込みながら進もうか」
「OK、警戒しつつ魔瞳術練習しながら行くね」
「俺もそうしよう」
広くても流石に行き止まりには当たるだろうと踏んで、先ずは右へ進み四角く探索することにした。
ゆっくりと警戒しながら草原を姿勢を低くしながら進む、それだけでも大変だ。
スタスタ歩いている小さいコンが少し羨ましい。
前方に数本の木が見えていたのでそこを目標に前進して行った。
何事もなく木の近くまで接近すると枝から実がぶら下がっているのが見えた。
「緑で硬そうだな、っていうか野生の木の実とか種は毒性があるものが多いってサバイバル本に書いてたからアウトかな」
「だね、ちょっと食べるの怖いよね」
「んー、ざんね⋯⋯!? 伏せて!」
「!?」
言われてすぐに姿勢を低く保つ月穂とコン。
「俺の視線の真っ直ぐ先、五十メートルくらいのところに何かいる」
「よく見えない⋯⋯」
「四足歩行の中型の生物、それ以外は分からなかった。気づかれてはいないと思う」
未知の敵、それだけで鼓動が早くなり汗が滲む。
「気づかれてなさそうだし、魔瞳術で見てみる」
十三は魔素と内気功を静かに練り込み、赤く染まる魔瞳術の瞳を発現させた。
五十メートル先まで知覚して見通すことは出来ていない、がかなりクリアにその姿は見えた。
「羊だ⋯⋯」
「え?」
「角がかなり大きくて禍々しいけど羊だ」
「ってことは⋯⋯」
「うん」
「「食料だー!」」
と小声で叫ぶと同時にコンが二人の脇腹を突いた。
「「ウグッ」」
ジト目で二人をみるコン。
「スイマセンでした、つい興奮してしまいました」
「ゴメンなさい、横に同じです」
二人は謝罪と反省の意を伝えて気を引き締め直す。
「さて、先制攻撃を仕掛けるか。
月穂、火魔法以外で先制して。火が草原に燃え移ったらシャレにならないし」
「うん、分かった」
(あのモコモコの毛、物理系の地と水はあんまり効かなそう⋯⋯
光も熱だから控えるとして、ここは風かな)
『星を包み育む息吹 切り裂く刃へと研ぎ澄ませ⋯⋯《風牙》』
静かに詠唱、掌に魔法陣を構築し音もなく風の刃を放った。