魔瞳術
中級魔法、【創】属性を会得する為に必要な事、それは名前の通り想像し創造する事。
物を生成するまるで神のような力、と言っても万能ではない。
魔素を元に媒体や時には物の説明書のような特殊な魔法陣や補助具、符などを頻繁に必要とし、基本的にシンプルな物のみ生成、込められた魔素が尽きると基本消える。
いわゆる錬金術に近いが永遠に存在する物を作れる訳ではない、中級魔法の中でも使い勝手の難しい魔法の部類だ。
(創造魔法を覚えれば戦闘や野宿、いろんな状況でも対応出来る応用能力と簡易支援、そして後衛の究極魔法【支援魔法】に辿りつける。
この二つの魔法と、もう覚えた治癒魔法があればこの先どんな時でも力になれる!
仲間を家族を、皆を護る力を身につけてみせる!)
月穂は強く願い、想い、望み、誓った。
その時、目の前がブワッ! と銀色に包まれた。
「きゃっ! 何!?」
あまりに急な出来事につい声を出してしまった。
(あっ! これ⋯⋯本がキラキラしてた魔瞳術の話の時の)
世界が銀色の粒子に包まれ、月穂の碧い瞳には銀色の粒子が小波の様に流れている。
(凄い⋯⋯キレイ⋯⋯)
ふと十三達の方を見ると、銀色の粒子がゆっくりと静かに二人の身体に吸収されていっているのが見える。
(もしかして⋯⋯これって魔素?)
自分の手を見て水属性を指に灯してみる。
身体を巡る銀色の粒子が指へと流れて指先へ集まり、小さな水の輪を作り出した。
(間違いない、魔素だこの光る粒子!
あの時、本が光ってたのはたぶん本自体に何らかの魔法がかけられてたんだ)
今度は指に光の属性を灯してみる。
同じように指へと粒子が集まり、指先に光を灯した。
(あ、色が違う! さっきの水は少し水色だったけどこれは白。属性によって色が有るんだ)
何も使用されてない状態の魔素は銀色、水色は水属性、白色は光属性のようだ。
(これ、相手の使う魔法の属性とか種類が見分けられるんじゃないかな?
たぶん魔素の可視化。これが私の魔瞳術⋯⋯?)
発動したきっかけは恐らく《皆を護りたい》という強い意思、強い想い。
とりあえず感覚を忘れることの無いように色々と魔素の流れや他の特徴が無いか試し始めた。
夢中であれこれと魔瞳術を試している内に、コンがモゾモゾと起き上がりその様子をボーッと見ていた。
「あ、コンちゃん起きたんだね、おはよう」
ボーッとしながらも手を上げて応えるコン。
(余りにも人間味ありすぎるから気にしてなかったけど、⋯⋯魔物も眠るんだ。
夢⋯⋯見るのかな?)
脳と身体を休める睡眠。
魔物や大根に脳や記憶の整理、体力の回復、夢、それらがあるのかは不明だが、寝ていたところを見ると必要なのだろう。
ふと思い立ち、月穂は練習していた魔瞳術でコンを観察してみた。
その身体には力強く魔素が秘められている。そして薄っすらとその魔素が額の辺りに集中しているのが見える。
(何だろ? あそこを中心に魔素が活動してるみたいだけど⋯⋯魔臓器⋯⋯かな?
でも十三には見えないし⋯⋯)
コンが首を傾げる。何でじっと見られてるんだろう? と。
十三はまだ横で眠っている。
「十三まだ寝てるから起こさない様にしようね」
小声で伝えるとフラフラと月穂の方へ歩いてきたコンは、ビタン! とコケた。
そのままの態勢と眠そうな目で親指をグッとあげる。
「ははは⋯⋯気をつけようね」
コンは面倒くさそうに起き上がると月穂の横まできて座る。
「コンちゃんありがとうね、一緒に戦ってくれて。本当に凄く強いんだね」
当たり前じゃん! とでも言ってるように胸を張るコン。
「私ね、まだまだ皆を後ろから護れる程強くないんだ。この先いっぱい心配といっぱい迷惑かけると思う。
だから何かこうしたら良いとか、コレはダメだよってことがあったら遠慮なく伝えて欲しいんだ。
言葉じゃなくても身振り手振りでもなんでもいいからね。
やれる事、力になれる事は何でもやっていくよ。
後悔する前に!」
ゆっくり月穂を見据えてグッ! とコンは左右の親指をたてた。
そこから月穂はコンにさっき身につけた魔瞳術の事、魔素の流れや色が分かるようになった事、コンの額部分に強い魔素が集まる箇所がある事を伝えた。
コンは額を撫でてから、よく分からないや、とでも言うように肩(?)をすくめた、余り興味は無いようだ。
しばらく月穂から一方的になるが、会話を続けているうちにモゾモゾと十三が起きてきた。
「おはよう十三。身体の調子はどう?」
「おはよう月穂、コン。だいぶスッキリしたよ、固い地面で痛むのを除けば」
「ははは、ソレはどうしようも無いよね」
飲む用の水を魔法で出して二人は喉を潤し、コンは手と足を濡らして水を吸収した。
二人はコンを見て思った。
((水で食事が済むの⋯⋯羨ましすぎる!!))
そんな二人の視線に気付かずに満足そうに身震いするコン。
二人にはとりあえずの食料も無いのでそのまま出発の準備を始め、月穂はその間に、さっき発現した魔瞳術の件を掻い摘んで十三に伝えた。
「おぉ、凄い月穂! 魔法戦闘でかなりのアドバンテージになるんじゃないか!?」
「うん、魔法に発生する弱点の溜め。
その間の魔素の流れや色でどんな魔法で何をしようとしてくるか読めるようになるかも」
「それが分かれば相手の先制魔法にやられることも減るし、後ろから指示してくれればカウンターも入れられそうだ」
「まだ魔法による魔素の違いとか情報が少なすぎるから、やっぱり経験を積んでいくしかないけど、二人の力には絶対になれると思う!」
今まで頼りなく不甲斐ない自分に負い目を感じていた分、本当に心から嬉しそうに話している。
「あれ? 魔瞳術っていえば俺にも反応あったよな確か、瞳に銀色のモヤが流れてるって言われて⋯⋯」
「そういえばそうだったね、十三の魔瞳術は何なんだろうね?」
「どうやって使うの? 魔瞳術」
「んー、私のは前回と今回の両方とも《皆を護りたい》って気持ちがトリガーになってたと思う。
分かってからは意識すると発動するようにはなったよ」
「なる程、皆を護りたい気持ちか⋯⋯
よし! 月穂! コン! 俺はお前たちを何があっても必ず護る!!」
十三は魔瞳術を発動させようと目にグッと力を入れ、心から叫んで宣誓した。
「⋯⋯どう? 出た?」
「⋯⋯えっと⋯⋯出てない上に目が怖い」
「そんな⋯⋯皆を護りたい気持ちは本物のはずだ⋯⋯」
「う、うん。それは信じてるよ、大丈夫」
コンが少し怯えて月穂の後ろに隠れてしまっていた。
「そんな怖い目してたのか俺⋯⋯」
「うん⋯⋯ここに子供がいたら泣いてると思う」
「⋯⋯」
目はどうにしろ、月穂と同じ方法では発動しないようだ。
「あの時どうやって発動したんだっけ⋯⋯?
魔素を取り込んで循環の循環がうまくいかなくて、真呼吸に加えて皮膚からの真呼吸と思いつきで内気功も練り混ぜて⋯⋯」
最後まで言いかけて止まった。そして叫んだ。
「混 ぜ たー!!」
急に叫んだ十三に驚いて月穂とコンがビクッとなった。
「循環が上手くいかなくて内気功を混ぜ込んだんだ! そしたらオーラと一緒に発動してた!」
すぐに内気功を練り込み、魔素に溶けるように練り込み、それらを意識して目に集中させる。
「うわ!」
目の前が一瞬銀色に染まる。
一度目を閉じて開け直した。
「おぉ!?、なんか全部がハッキリ見える」
十三は嬉しそうに周りを見渡す。
「ん? ハッキリっていうかどうなってるんだこれ? 自分の周りが、後ろも全部見えてる?
いや見えてるんじゃない⋯⋯知覚できてるのか?」
どうやら発現した魔瞳術は視界にかなり変化があるようだ。
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