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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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一泊目とそれぞれの次の目標

 十三の赤黒い砂とオーラを纏った拳と、コンの黒みがかったオレンジのオーラを纏った蹴りが、獲物を見失っていた蟻地獄の脳天に同時に炸裂した。


 バリバリバリッ!


 と、赤、黒、オレンジの三色が混ざったオーラが雷撃のようなエフェクトを伴った。


「おおお!? 何だ!?」

「凄い、何あれ?」


 蟻地獄の全身にバリバリと伝達された三色のオーラはそのまま地面の砂に消えていった。


 ブスブスと煙をあげて動かない蟻地獄の額に紫の石の欠片が浮き出てきている。


「倒したのか、良かった⋯⋯一撃で決まって」 


 十三は地面に寝転がっているコンの方へ歩いて行き、手を差し伸べた。


「凄えなコン、さっきの一撃は最高だったな」


 力を出し切ったコンは寝転がったまま手も出さずクデッとして動けないアピールをしている。


「しょーがないな全く」


 グッとコンの身体を持ち上げて腕に抱いて月穂の元へと歩いて行く。

 コンは驚いた顔をしながらも十三にしがみついている。


「月穂、コンを頼む、欠片取ってくるから」

「分かった」


 月穂は受け取ったコンを見る。じっと十三を見ているつぶらな目には少し涙が浮かんでいるようにもみえた。


「お疲れ様でした。凄いんだねコンちゃんは。一緒に戦ってくれてありがとうね」


 そのままギュッと抱いているとコンは安心したのかスースーと寝息をたて始めた。


「取ってきたぞ欠片、ってあれ? コンは寝ちゃったのか。

 まぁいい時間だしここで一泊目にしようか? 疲れがピークになる前に」 

「そうだね、魔法ももう使えないし向こうに見える扉の前で交代で仮眠にしよう」


 十三はサラサラした砂をベットの様に盛ってコンをその上に寝かせた。


「月穂が先に寝て魔力回復させといて、俺は後で仮眠とるよ」

「ありがとう、じゃあ先に休ませてもらうね」


 月穂はコンの横に添い寝する形で十三の上着を枕にして眠りに就く。


「とんでもない一日目だったな」


 探索開始から振り返ってみると中々に濃い一日だった。

 初めてのモンスターとの遭遇と戦闘

 いわゆる魔石と思われる欠片と経験値的現象

 大根のコンとの出会い

 初めての階層ボスとの戦闘

 月穂とコンの苦手な昆虫階層

 反射魔法により荷物ロスト

 二度目のボス戦


 そして一日目が終わろうとしている。


(この先、何階まであるんだろ? 三日はかかるみたいだから単純計算で最大七層くらいかな? 最下層は何が待ってるんだろう?)


 このまま順調に進むと一日で二層から三層の探索スピードだ。

 よっぽどの事が無い限りは三日で最下層に辿り着けるのだろう。


(何にせよここから先は食料の確保だな、もし次の階層で食料が得られない様なら一階や二階に戻る事も考えないと。)


 後退は避けたいが食料が無いことには進むのは厳しい。次の階層に期待をかける。


(後は戦闘か、月穂の魔法はタイミングも威力も問題ない。

 でも詠唱と魔法陣でどうしても発動するまでに時間ロスがあるから、俺かコンが常に敵を引きつけておかないといけない。

 確実に敵に前衛へと目を向けさせて後衛に意識が向かないようするスタイルと戦い方を考えないとな)


 戦闘における攻撃発動までの溜めとは、隙だ。テレビの変身ヒーローみたいに敵が待ってくれるわけは無い。

 敵に考える時間を与え、攻撃される機会までわざわざ与える通常あってはならない時間。

 熟達した相手なら態勢、筋肉や目の動きで読まれたり、魔法ならば詠唱内容、魔法陣の文字や形態で全てを読まれる可能性もある。

 それを最大限させない為、前衛が基本全てを担い、周りへ意識を向けさせず、信頼の元に時には後衛をも欺く必要もある。

 厳しい相手になればなる程それは難しくなっていく。

 実戦経験がほぼ無い二人にはとんでもなく高い壁だが、今の所は三人目のコンという意外性の塊がいることで回っている。

 

(いつまでもコンを頼りにはできないし、自分一人でも担えるように少しでも経験を積んで目と戦闘思考を養わないとな。

 今の俺達には何よりも圧倒的に実戦が足りない。

 でも、モンスターはたぶんお互いにも戦い、駆け引きをし、戦略を練り、経験を奪い合い、成長し、生き抜いてきている。

 この違いはとんでもなく大きい。

 今の所、倒せないレベルの敵には遭遇していないけど、これからは身を削って命を削らないと勝てない相手ばかりかもしれない。

 戦闘を安定させる為にも前衛である俺がまずスタイルを確立させないと⋯⋯)


 戦いに絶対は無いが少しでもリスクは減らすべきだろう。

 そして、前衛に必要な敵を引きつける存在感を示す技には心当たりがあった。


(やっぱりさっきの戦闘でのコンのオレンジオーラかな。

 吹き出した瞬間に増した威圧感と存在感。

 前衛にピッタリな必須能力だよな、あれを絶対身につける! それに空中も蹴ってたしな!

 コンが起きたら聞いてみよう、教えてくれるって親指立ててたし。

 どうやって身につけるのか、そもそも身につくのかも分からないけど、あんな理想の能力を教わらない訳にはいかないよな)


 コンの強さ、技、戦闘経験、そして説明できない人間味溢れるキャラクターについては思考停止することに決めていた十三。

 何故、どうやってあんな技を身に着けているのかは意識的に考えないようにしていたが、オレンジオーラの技を教えて貰っている間に少しだけ聞いてみようかという気持ちがムクムクと湧いてきていた。


(後は戦闘中に発動出来なかった地魔法の熟練上げかな。

 属性を灯す粒子を纏う事は出来たけどまだ決定打を与える様なものじゃない。

 今後の戦闘に魔法は不可欠になるだろうし、毎回発動するかどうか分からないものを命のやり取り中になんて怖くて使えないしな。

 コンに教えてもらうオレンジオーラと平行で鍛え上げていかないと)



 その後も戦闘パターンや連携イメージ等を色々と考えつつ五時間程経ったところで月穂が起きてきた。


「もう起きたのか? もう少し寝てていいのに」

「ううん、大丈夫。砂とは言ってもこれ以上固い地面で寝るのは体も痛いし」

「そうだよなー、簡易寝袋もロストしちゃったしどうしようもないよな」

「でもだいぶスッキリしたよ」

「それは良かった」

「コンちゃんはまだ寝てるね」

「大根だから地面はベットみたいなもんなのかも」

「かもね、羨ましいな」

「全くだよ」

「じゃあ十三も休んで、見張りはちゃんとするから安心してね」

「何か少しでも異変があれば遠慮なく起こして」

「うん、分かった」

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみー」


 十三は月穂の寝ていた砂のベットに転がり、コンの横で目をつむった。


(うわ、早い! もう寝息たててるよ⋯⋯

 まぁ大変だったもんね、ゆっくりとは言えないけどしっかり体を休めてね)


 秒で寝た十三にちょっとビックリしながらも、度重なる戦闘で心も身体も疲れきっていたのだろうと思い、二人に優しく回復魔法をかけておいた。


(十三もコンちゃんも凄かったなー、アクションアニメなみたい戦いは目の前で見ると圧巻だったよほんと。

 私⋯⋯ちゃんと力になれてるかな?

 見たくない為に虫軍団に出会い頭で殲滅してたのはいいけど、大事な所で魔力が尽きかけるなんて⋯⋯)


 月穂の魔法の威力、攻撃範囲、支援、回復はどれも初心者とは思えないほどに凄いものだ。

 しかし、魔力が尽きた途端に全く何も出来なくなってしまい、ただの標的、弱点と化してしまう。

 そうなると後は守ってもらうだけの存在。

 戦闘を後ろから支持してコントロールできるならまだいいが、とてもまだそんな経験とレベルではない。


(ゲームみたいに数値で見えたら分かりやすいんだけどなー。

 十三がステータスオープン! とかやってたけど今なら分かるよ、後衛としては特に欲しい能力だもんね)


 自身の魔法管理、前衛の状態管理が目に見えてできる。それに頼りきってはいけないが戦闘がどれだけ安全にそして楽になることか。

 残念ながら魔法はあれどそんな都合の良い機能や能力は無いようだ。


 その時ふとある事を思い出した。


(あ、そういえばちょっと気になってたあれ忘れてた。

 魔素の鍛錬の時、私の目に光が流れて本がキラキラして見えたやつ、正源さんが魔瞳術って言ってた。

 魔素が見えたり、事象の解析が出来たり、色々と種類があるみたいだけど、世界が凄くキラキラしてキレイだったなー。

 私の魔瞳術って何なんだろ? これが使えたら二人をもっとサポートできるかな?)


 二人の力になれるなら何でもやろうと目に力を込めたり、瞬きを止めてみたり、色々と試し始めた。

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