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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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魔法適正と重複属性

 座学の為に地下で座っていた十三はふと気になって唐突に尋ねる。


「あのさ⋯⋯この髪の毛の色って魔素が循環してる限りこれなのかな?」

「さー?」


 と無責任な返事を十和呼に返された。歴史的イレギュラーだ、答えが帰って来るはずもない。


「私はそうですよ、ここで魔素を循環してる限りはこの色のままです」

「流石にずっとこのままっていうのはなんか⋯⋯切り替えれないものかな?」

「どうでしょう? まだ考えたことも無かったですけど」

「これも練習してみるか、切り替え出来るようになるかもしれないし」

「そうてすね、やれる事はやってみましょう!」


 一つ新しい目標が出来たのは良いが、楽しい(?)座学という壁が立ちはだかっている。目標クリアは当面かなり難しそうだ。


 座学は二人の進度が違う為、別々に行うことになったので中央の三角錐のゲート石を堺に別れて座っている。

 月穂は多重複合魔法の座学。その横で柘榴が興味深そうに一緒に本をのぞき込んでいる。

 十三は基礎の属性魔法の勉強。ウンディーネのアクアは水属性の内容が出てくる度にご機嫌に手を叩いている。


 十三はまず基本の属性を頭に入れた後、魔素を属性に変換して指に灯す練習を始めた。まずはアクアもいることだし水属性に挑戦をする。


 魔素を循環させイメージを高める、指先に小さい水の玉が出来るように。

 今はウンディーネと貸与とはいえ契約をしているので水属性の適正が上がっていた為、意外と苦労せずに水の玉ができた。


「おおー! ちょっと感動! 意外と簡単なんじゃ?」


 の発言も束の間、続いて火に挑戦したがピクリとも反応がない。


「イメージならアニメやゲームで必要以上にあるのに、火を使えるキャラいっぱいいるじゃないか! イメージ! イメージ!」


 ⋯⋯煙も出ない。


「次⋯⋯次いってみよー! 切り替えはスパッといかないと。風! 風属性結構好きなんだ、有名な忍者とかの」


 ⋯⋯何も起こらない。鼻息で起こる風のみがたゆたう。


「そんな⋯⋯螺旋的な渦巻く玉が撃てるようになるはずなのに」


 先程の水属性での「意外と簡単なんじゃ」発言がとんでもなく恥ずかしい。


「次は地属性⋯⋯か。地面からトゲとか石礫とか、地味目なのしか思いつかない⋯⋯一応やってみるけど」


 一気にテンションが下がった十三だが、指先に灯すためイメージを固めて魔素を流すと小さい砂が指の周囲に生成された。


「おっ!? 使えた!」

「十三は地に適正ありか。後は光と闇、精と無を試してね。光と闇はイメージし安いと思うけど残りの二つはコツを教えるわ。

 精は精神に関わる魔法属性、イメージし安いのは紫の小さい渦、相手の目を回すイメージよ。

 無は虚無、無限、そして何にも属さない無属性。イメージはガラス玉、何も写らない鏡」

「分かった、やってみる」


 まずは光をイメージ、小さな光を指に灯すイメージ⋯⋯

 ポッ⋯⋯と小さくも光が灯る。


「よしキター!! ビーム属性!!」

「そっち!? それしか無いの? 十三君の頭の中?」


 と美沙が呆れたようにツッコミをいれるが、嬉しさのあまり聞こえていないようだ。高いテンションのまま次に進む。


「次! 中二属性の闇!」


 ズズッ⋯⋯と指先が闇に包まれる。


「よし! 中二もゲット!」


 テンション上がっててちょっと痛い子になっているのには気づいていないようだ。


「精! 目を回すイメージ! ハイ!」


 何故か自分が少しフラフラしてきた。こちらも指先には反応なし。


「ウップ⋯⋯オッケー⋯⋯最後は無。効果は低めだがオールマイティにダメージが通る無属性!」


 ついに解説しだした。

 十三は全てに染まり全てに染まらない透明なガラスのイメージを指に灯す。


 ブゥン⋯⋯


 指先に小さいガラス玉が生成される。

中は見えてるのか見えてないのか分からない空間がある。


「おぉ⋯⋯ガラス玉できた。

 地、光と闇、無属性か。これ、中どうなってるんだ? 見えてるけど見えない。

 ⋯⋯そこを見た時だけ盲目になったような感覚だ」

「なんか見てると不安になってくるわねそのガラス玉。無属性ってそんな反応でたかしら? ガラス玉イメージだとガラス玉が出来るだけだった気がするけど」

「ちょっと月穂、無属性灯せたわよね。やってみてくれる?」

「いいよ」


 指先にイメージを集中させると小さいガラス玉ができたが中は透き通っている。


「やっぱりそうよね、十三のがちょっと変わってる。イメージの問題かしら?」

「う⋯⋯見つめてると目が離せなくなる」


 見てると目がどんどんおかしくなってしまいそうなので皆見るのをやめた。


「十三それもう消して、目と頭がおかしなことになりそう」

「分かったよ」


 キュン!


 と音がしてガラス玉は消えた。


「さて、最後のガラス玉の事はとりあえず置いといて、再確認。

 地、光、闇、無、の四つね適正は。髪色の変化があったから月穂さんと同じように魔法適正が異常に高いかと思ったらそうでもないのね、まあ普通が二、三種類だからそれよりは少しあるけど。

 何か違う特性があるのかしら?」


 月穂同様、魔素で髪色等が変化したが、魔法適正に特化してるわけではないようだ。


「はーっ⋯⋯やっぱり月穂さんと一緒でイレギュラーは考えても無駄ね、情報がなさすぎるわ」


 正源も言ってたように、「なるようにしかならん」なので一旦思考を止める。


「さ、切り替えて座学再開よ。知識を目一杯詰め込んでね」


 真呼吸と魔素循環をキープしつつ座学に入る二人。

 十三は気功も練り続け皮膚呼吸を維持している。

 それぞれの横には柘榴とアクアがちょこんと座って一緒に勉強している、読めているのかは分からないが、共に行動し感情を共感し合うのは良いことだ。

 十三はひたすら古代語の暗記と書き取り、月穂は多重複合属性の勉強と、難関であるその発動練習。


 初級から中級の壁、才能とセンスがある月穂でも中々苦労している重複属性の発動。

 左右同時に違う文字を違う言語で縦と横に書いていけ、と言われて頭でやる事は分かっているけど出来ないものにチャレンジしている感覚。


(そういえば夢の中の私は全指に灯してたな⋯⋯ありえない。今なら分かる、普通の人間の脳の構造と処理能力じゃない)


 夢の中の人物の努力と才能に脱帽する。

でもとにかくまずは重複発動を一つだけでもクリアすること。

 まだ自分は入り口に立ったばかり。全てはこれからだ、と鼓舞して前を向き直した。


 一方、十三は意外と順調に進んでいる。元々の古代大好きぶりが古代語への壁を少し低くしているようだ。


(ヒエログリフ系の文字が読めるとか凄い。古代、魔法、ここ最近の生活は夢でも見てるみたいだ)


 必死に古代語を読み書きし始めて五分後、さっきまで一緒に本を読んでいたウンディーネのアクアをチラリと見る。


(寝てる⋯⋯早くね?)


 ちょっと羨ましいと思いながら、その寝姿を写メに撮っておく。


(後で自分の寝姿を見せてやろう)


 ふと後ろを見ると女性陣三人が凄い眼力でこっちを見ている。

 ビクッ! とした十三はその視線の先に気付いた。携帯だ。


(あー、写真後でよこせよ! ってことね⋯⋯)


 静かに小さく頷くと女性陣は静かに視線を外し座学へと姿勢を正す。


(皆のアクアへの嫉妬が怖い⋯⋯代わりに今度あのカーバンクルをモフモフさせて貰おうかな)




† † † † † † † †




 二人はそこから必死に勉強し、祠最深部探索の2日前。ついに目標に到達する。


 十三は3日間の真呼吸維持、無意識下でも発動したまま過ごせた。魔法も適正ある種類は、威力はともかく、初級魔法の発動はできるようになった。


 月穂は古武術の型と体幹訓練の基本はクリア。そして適正のある魔法の発動、そしてついに一つの重複属性を指に灯すことに成功。

 しかしその属性の発動はまだできていない。まだ失敗とムラはあるがひとまずは及第点クリア。


 そして二人とも順調に従魔との絆は深め、今はかなり仲良しだ。





 その日の鍛錬が終わると正源は地下に降りてきた。


「爺ちゃん久しぶり、最近見なかったけどどっか行ってたの?」

「あぁ、ちと野暮用で外へ繰り出しとった。が、十和呼さんから連絡があっての、お主らが目標をクリアしたと」

「そっか、でも爺ちゃんなんでそんなボロボロに疲れきってるの?」


 ビクリとなる正源。


「聞かんでくれ⋯⋯今は思い出したくもない。とりあえず風呂に入った後に客間に行くから1時間後に集まってくれ」


 と、フラフラしながら風呂場へ消えていった。

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