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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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覚醒とビームとスライム系少女

 ヒュオッ!


 と十三は真呼吸を発動させると同時に新しく会得した皮膚呼吸も使った。

 肺と皮膚から魔素が吸い込まれ、身体を満たしていく。

 最初、循環させようとしたがうまくいかなかったので、とっさに内気功を練り込み一緒に循環させようと思いつき実行した。

 循環が始まった瞬間、体の周りにバチバチと音が鳴り始める。

 さらに循環が進むと今度は別の変化が現れ始めた。髪が赤、いや、赤黒く染まり始めたのだ。そしてそのまま体から同じような色のオーラが立ちのぼる。

 集中する為に閉じていた目を開くとそこには赤く光る瞳があった。瞳には金色のモヤのようなものが流れている。


「ち! ちょっと! あなたもなの!? どうなってるのよあなた達!?」


 十和呼が叫ぶ。それもそうだろう、過去の歴史に残るイレギュラーな変化、それがここに二人もいるからだ。


「何だこれ? 視界がとんでもなくクリアだ⋯⋯何かの流れが見えてる。それにこの力、熱くて冷たい力が湧いてくる」


 身体の中をかけ巡る内気功、それと溶け合うように流れる魔素。温かい気と冷たい魔素が絡み合い不思議な感覚が身体を覆う。

 そして下腹の丹田近くには今まで感じた事の無い感覚がある。

 前回ここに来た時はゲートは閉じており、微量の魔素が漏れていただけだったが、今回は全身で魔素を取り込んだ為、魔臓器が覚醒したのだ。


「十三、あなた大丈夫なの?」

「大丈夫。身体も気分も最高だよ! 自分に足りていなかった部分が埋まった感じがする」

「十三さん⋯⋯」


 月穂は驚きながらも少し納得する。


(やっぱり⋯⋯夢も⋯⋯出会いも⋯⋯必然だったのかな)


 自分と同じような変化が現れた一族の人が目の前に、そして夢の共鳴とでも呼ぶべき先日の共通体験。

 不安が大きくなる⋯⋯そう⋯⋯第五の太陽の⋯⋯破滅。


「全く、二人揃って魔法少女と魔法少年だなんて⋯⋯なんて親孝行な子達なのよ!」

「え!? そっち!?」


 美沙が十和呼にツッコむ。


「俺、魔法使えるかわからないからまだ魔法少年じゃないし。

 あ、でも目からビーム出るかな? 母さん後で教えてビームの出し方」

「しょうがない子ね、いいわよ」

「ヤッター!! 母さん大好き!」


 そのまま変に盛り上がり始めてる親子を月穂と美沙は死んだ魚のような目で見つめていた。





 五分後、正座をしている十三と十和呼がいた。頭に湯気の出ているコブが一つづつついている。


「何をしとるんじゃお主らは?」


 正源はその絵面からは何があったのか全く汲み取れない。


「変な気を感じたから来てみれば⋯⋯いったいどうしたらそんな事になっとるんじゃ?」


「えっと⋯⋯従魔の貸与の為に十三に魔素を取り込ませたら月穂さんみたいに覚醒して赤黒い魔法少年になっちゃって⋯⋯」

「⋯⋯」

「それでつい興奮してはしゃいじゃって⋯⋯エヘヘ」

「爺ちゃんこれ凄いよ、力が溢れてくる。今なら目からビーム打てる気がするんだよ!」

「撃たんでええわいそんなもん!」

「お主にしろ月穂さんにしろビームになんぞこだわりでもあるのか? 人生でこんなにビームという単語使ったのはここ数日が初めてじゃわい」


 半ば呆れながら正源はぼやく、が気を取り直して状況を見つめる。


「とりあえずビームは置いといてじゃ。

十三、何があってそうなったんじゃ?」

「えっと⋯⋯最初に魔素を取り込もうと思ったらうまくいかなくて、月穂さんに教えてもらってたヨガでの真呼吸を先日会得したからさ、内気功と一緒にやってみたらこうなった」

「⋯⋯ふむ、確かに魔素と気が混じり合っておるようじゃな。

 まぁ、前にも月穂さんに言った通り、基本静観する以外何の対処もできん。そのまま予定通り貸与召喚をしなさい。正直なるようにしかならんわい」


 半ば投げやりのようだが、時間をかけて調べたところで答えが出るとも思えない。ならば今後の変化に対応する為に監視役をつけるしかないと判断した。


「分かったわ、じゃあ早速、貸与契約しちゃいましょう。

『契約者 十和呼の名の元に顕現せよ⋯⋯《アクア》』」


 十和呼の前の地面に現れた魔法陣からブワリと水が沸き起こり、それが次第に形を成していく。

 収まるころにはが地面に15cmほどの大きさをしたスライムのような質感の女の子座りをした小さい少女かいた。


 ヨイショと言わんばかりに立ち上がりお辞儀をして微笑む。


 その仕草と笑みに女性陣が一撃で沈んだ。


「「「可愛いー!」」」


 と黄色い声で叫ぶ。


「水の龍みたいなのが出てくると思ってた、こんな小さな女の子だったんだなウンディーネって」

「こら十三! ちゃんと挨拶しなさい!」

「あ、ごめんなさい、初めまして十和呼の息子の十三です。母がいつもお世話になってます、いや⋯⋯母がいつもご迷惑をかけてすみません」

「ち、ちょっと!? 何で知ってるの? あなたにそんなエピソード話した事なんてないわよ!?」

「やっぱりか、話聞いてなくても想像つくよ⋯⋯」


 アクアが汗(水滴)をたらして苦笑いしている。


「うわーん! お義父さん十三がいじめるー!」

「はぁ、お主ら親子は⋯⋯いや、ええわい⋯⋯もう皆まで言わん」


 正源はなるべく絡まないようにした。

そしてアクアに向き直る。


「アクア殿、美沙さんと十和呼からは聞いておると思うが宜しいかな? 十三と月穂さんの件」


 アクアは迷わすコクリと頷く。


「ありがたい、迷惑をかけるやもしれぬが宜しく頼みます」


 小さな手を胸に当てて叩くアクア。


「じゃあ始めるわよ貸与契約、片膝をついて左の手の平を上にして地面に置きなさい」


 言われた通りに手を置くとアクアがちょこちょこと歩いて手のひらに乗る。


(足の裏の感触がひんやり気持ちいい⋯⋯)


「では貸与契約を結ぶわよ、二人とも額を近づけてね」


『召喚者 美沙の名の元に召喚されしもの、その身を宿す仮初の器へと名を記す⋯⋯《貸与契約》』


 月穂の時と同様に十三とウンディーネの額の間に何枚もの四角い紙のような魔法陣が現れ、お互いの額に吸い込まれていく。

 全て吸い込まれると今度はそこに丸い魔法陣が現れ、二人の額の間でグルグルと回転を始める。徐々に魔法陣の光が強くなり光が二人を優しく包み込む。


「⋯⋯改めて宜しくアクア」


 アクアはコクリと頷いて両手を十三の頬にあてて微笑む。


「「「あー! いいなー!」」」


 三人の女性陣からの嫉妬がすごい。三姉妹に知れたらどうなるんだろうか⋯⋯? 考えただけでゾクリと寒気を感じた。


 そんな十三を見ていてふと美沙は気付いた。


「正源さん、十三君、真呼吸が順調にいってるようだから魔素の鍛錬を始めてもいいのでは?」

「あぁ、そうじゃな構わんぞ。どうせ従魔との絆も構築せねばならんから地下に滞在は必須じゃしの」

「じゃあこれからは十三君の鍛錬もココでしてね、月穂と一緒に楽しい楽しーい魔素と魔法のお勉強よ」

「楽しいって言葉を楽しそうって感じないんだけど⋯⋯なんでだろう?」

「十三君、その感覚は間違っていないわ」


 と首をフルフルと振る月穂の目はどこか憐れんでいるように見えた。


(だ、大丈夫だよな⋯⋯)


 晴れて十三の楽しい楽しい座学が幕を開けた。




 その後、正源は自分の書斎にある専用回線で電話をかけていた。


「儂じゃ、アイツはおるか?」

「正源様! 少々お待ちください」


 三分程待つと受話器越しに少ししわがれた声が聞こえた。


「おやまぁ、随分と珍しいとこからかかってきたもんやなー。まだ生きとったんかいなこの回線。何年ぶりやろね?」

「覚えとらんのー、紫暮(しぐれ)。実は報告事項の優先度が高い出来事があっての」

「あら、それはお茶を共に飲みながらゆっくり出来る話ではなさそうやねー」

「じゃな、その出来事とは儂の孫達の事じゃ」


 正源はゆっくりと起こった事態を分かりやすく掻い摘みながら話し始めた。


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