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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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貸与契約

 十和呼の頭から降りてテクテクと歩いてきた柘榴(ざくろ)は月穂を見上げている。


「月穂、片膝をついて左の手のひらを上にして地面に置きなさい」


 言われる通り膝をつき左手を差し出す。すると柘榴は少し手のひらの匂いを嗅いでからちょこんと上に乗った。


(うわー⋯⋯柔らかくて軽い)


「ゆっくり手を顔の目の前に持って行きなさい」


 ドキドキしながらゆっくり手を待ちあげて目前まで持ってくる。

 月穂と柘榴の互いの青い瞳が交差した。


(キレイな瞳と宝石、吸い込まれそう⋯⋯)


「では貸与契約を結ぶわよ、二人とも額を近づけて」



『召喚者 十和呼の名の元に召喚されしもの その身を宿す仮初の器へと名を記す⋯⋯《貸与契約》』



 魔法を発動した十和呼、と同時に月穂と柘榴の額の間に何枚もの四角い紙のような魔法陣が現れ、それぞれがお互いの額に吸い込まれてゆく。

 全て吸い込まれると今度はそこに丸い魔法陣が現れる。二人の額の間でグルグルと回転を始めた。徐々に魔法陣の光が強くなり二人を優しく包む。

 光が収まると目を閉じて額を互いにくっつけている両者がいた。


「完了よ、お互い契約内容は頭に入ったわね。

 不明点や変更希望があれば言って、契約内容に入ってると思うけど術後2日は互いの同意の元に変更可能点は当人同士で書き換えできるわ」

「うん、ちゃんと頭に入ってきたよ。

 では改めて柘榴さん、宜しくお願いします」

「クィ」


 と短く返事を返す柘榴は月穂の肩に乗った。


「あ、すごい! 何となく意思が伝わってくる⋯⋯」

「そうよ、今、契約魔法を通じてあなた達は繋がっているわ。

 言葉が通じることはないけれど、ある程度の意思疎通はできるはずよ」

「そうなんだ、良かった。これで少しお話もできそう」


 肩に乗った柘榴も目を細めて、


「クィ」


 と答える。


「召喚魔法の詠唱と陣は後で教えるわね。

 あと地下にいる間は召喚してお互い絆を深めなさい」

「はい!」「クィー!」

「いい返事ね二人共」


 月穂は柘榴と目を合わせて少し笑う。


「十三には後でこっちに来てもらって貸与契約を交わすわ、ついでに魔素のレクチャーもしたいし」

「月穂はそのまま少し回復するまで座学、勉強っぷりを柘榴に見てもらいなさい」

「うん! 柘榴さん私これからまだ読み終えてない属性、重複魔法の本を読まないといけないの。

 退屈かもしれないけどごめんなさい、大事なことなんだ」


 それを聞いた柘榴は一緒に読むと言わんばかりに本の横に陣取った。


「フフッ、じゃあ一緒に読んでください」

「クゥ」

「ありがとうごさまいます、優しいんですね」

「クァー」


それを見ていた美沙と十和呼が安心したように微笑んで見ていた。





 二日前、とうとう皮膚呼吸鍛錬のキッカケを掴んだ十三は、体内の気を練りつつ皮膚にある気孔の開放に意識を集中し真呼吸を繰り返していた。一度に取り込む皮膚からの吸気を高める為だ。そしてその効果は大きく現れた。

 格段に肺への負担が軽減され持続時間もグングン伸びている。まだ無意識下では維持できていないが、ここまで負担が減ると今後可能になってくるだろう。


 以前も気を練りながら真呼吸は使っていた。気を使うと気孔は覚醒し通常よりも開く、しかし意識して開放し、さらに呼気吸気をそこからするのは別技術。正源さえ知り得なかった呼吸技術だ。

 月穂は気功は使えない。自力で気を練らず無意識に気孔だけを開いて体得している。自分で何を行っているかなんて微塵も気づいていない。


 十三はその日、丸一日の真呼吸維持が可能になっていた。


(この調子で維持をあと二日伸ばすのと、無意識下での呼吸維持か⋯⋯イケるぞこれは!)


 翌日もひたすら皮膚呼吸に費やし維持時間はさらに40%ほと伸びた。使い始めるとグングンとスピードと時間が長くなる。あとは全力で使って絶対値を増やすのみ。




 その次の日の朝、稽古の前に十和呼から声がかかった。


「15分後に地下の祠入り口にいらっしゃい、重要事項を伝えるわ」


 そう言われて15分後に地下に行ってみるとそこには母と美沙、そして月穂が待っていた。


「いきなり呼び出してどうしたの?」

「鍛錬はどう? 順調かしら」

「ん? あぁ、順調だよ昨日から」

「あら、じゃあ丁度タイミング的に良かったのかしら。あなたを地下に読んだのは今後について追加事項ができたからよ」

「追加事項?」

「えぇ、あなたも月穂さんの魔素の鍛錬で色々あったのは聞いてるわよね?」

「うん、魔法天使ロボになったとかなってないとか」

「なってません!」

「そうよ、そのイレギュラーな変化や才覚などでやはり懸念が出てね、お義父さんとも話して決まったの。

あなたたち二人に私と美沙さんの従魔をイレギュラー対策の為に貸し出す事がね」

「十和呼さん! ロボのところ否定してくださいちゃんと!」

「だって事実も多々含まれてるし良いんじゃない?」

「良くないです!」


 やはりまだビームとロボ要素は受け入れがたいようだ。


「ロボカッコ良いのに⋯⋯」


 十三がポツリとつぶやく。


「カッコ良さの問題じゃないんです!」

「そうよねー、可愛さの問題だものね」

「そっちでもないです!」


 フーッ!フーッ! と息を荒くして否定する月穂。



(月穂さんこんなキャラだっけな⋯⋯?)


 と、ふと考えていると十和呼が


「と、まぁそんなこんなで従魔を貸し出すことになったのよ」


(うわー、無理やり雑にまとめて流したよこの母⋯⋯あー、月穂さん可哀想に、絶望を味わったような顔して⋯⋯ん? そういやさっきから言ってる従魔って何だ?)


「十三君はまだ魔素の鍛錬も何もしてないし、知識もまだないから理解し辛いと思うけど頑張って飲み込んでね」


(美沙さんはなんかノリで理解してねみたいなこと言ってるし⋯⋯大丈夫なのか?)


 この状況に疑念を持っていると


「見たほうが早いわね。月穂、柘榴ちゃん呼んで」


(柘榴ちゃん? 何だ、何が始まるんだ?)


 全く理解が追いついてない十三を放ったらかしたまま、月穂が柘榴を呼ぶ。


『契約者 宝生 月穂 の名の元に顕現せよ⋯⋯《柘榴》』


 詠唱の途中から月穂髪や爪かブワリと銀色に染まり、目はさらに鮮やかな青色に微かに光る。


「!?」


 十三は話に聞いていたものの、やはり驚く。

 美しくも妖しく銀色のオーラを纏っている月穂はこの世の理を超えているように見えた。


 そして地に描かれた魔法陣から額に赤い石がついた白金のキツネのようなものが現れる。

 目まぐるしく起こる変化に頭がついていかない。そんな十三を他所に現れた動物は一声鳴いて月穂の肩に駆け上がった。


「十和呼さんからお借りしている召喚獣、カーバンクルの柘榴さんです」


 と月穂が説明するが十三はピクリとも反応しない。暫く待っていると、


「おおー! カッケー! 召喚カッケー! 銀色の月穂さんカッケーっす!」


 と小学生の様なテンションで目をギラつかせ鼻を鳴らしている。どうやらビーム同様に彼の琴線に触れたようだ。


「落ち着きなさい! ゲーム好きにはこっち系は刺激が強すぎるのかしら⋯⋯」


 いきなりゲームと夢の世界が目の前に現れたのだ、興奮するのも無理はないとはいえなんともウザイ感じでテンションが高い。


「十三、聞きなさい。これは私の従魔を月穂さんに貸しているのよ。主に月穂さんの周りに起こるイレギュラーに対応する為にね。

 祠への探索に同行するけれど干渉するのはイレギュラーの時のみ。そして、貴方にも貸し出す。

美沙さんの召喚獣 ウンディーネをね」

「俺にも!? ってか俺、魔法使えるの!?」

「あなたはまだ魔法の基礎も知らない。でもこの貸与の契約《仮宿契約》は呼び出す魔法陣も貸し出されるわ。あなたは魔素の循環を覚えれば詠唱をするだけで召喚魔法が発動する」

「おぉ! 早く教えてよ母さん! 循環! 頑張って何でも循環させるよ俺!」

「落ち着きなさいってば、何でも循環って何よ?」


 食い気味に前のめりな十三を落ち着かせるのは無理なようだと悟った十和呼は美沙に目配せする。


「十三君、ここはゲートが今開かれていて魔素が充満しているわ。真呼吸で魔素を取り込んで下腹あたりから足、手、頭、体の隅々まで血液や気功の気のように循環させてみて」

「分かった! 循環!」


 いつも美沙に使う敬語も忘れている、よっぽど興奮しているらしい。

 何にせよ十三の魔素レクチャーが始まった。

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