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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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伝承とパートナー

 「爺ちゃん! ち、ちょっと待った!」


 軽いジャブも無いいきなりの初手右ストレートと思わせての目からのレーザー攻撃。

 会話スタートから1分そこらで周囲は焼け野原だ。


「最深部の祠??  いや、じゃなくて地下にヒエログリフ!? でもなくて⋯⋯いやそこか!

 ヒエログリフでの伝承が読めるの!? いやいや、ヒエログリフに似たって言ってなかった? ここ日本だよな?

 いや、でも、都会は都会語の外国扱いだって母さんが言ってたし合ってるか。

 いや合ってない! 合ってない!!」


 十三はいきなりの焼け野原に全裸で仁王立ちで立っている気分だ。

 いわゆるパニックである。


「落ち着け十三⋯⋯ん? 都会語? なんじゃそれは⋯⋯いや、とにかくまず落ち着け、【真呼吸】!」


 正源は都会語なる謎の単語に反応するも十三を落ち着かせようとする。

 ()呼吸ではなく()呼吸。

 十石神社に伝わる呼吸法、深呼吸よりも深い、生物が持つ通常では開放出来ない潜在能力に触れる覚醒呼吸法。


ヒュオッ!!


 と低いのか高いのか分からない空気音が道場内に微かに響く。


「落ち着いたか?」

「ふぅ……落ち着くわけないでしょ、頭の中はまだクエスチョンマークだらけだよ」

「かまわん、続けるぞ。

 さっきの伝承のとおり、語り部は子々孫々途切れる事なく引き継がれ、その最後尾におるのがお前じゃ」

「考古学は好きだからある程度は知識はあるけど、アステカやマヤ、インドやオーストラリア、世界各地の遺跡や伝承で語られる滅びた古代の神々の世界。

 今は【第五の太陽の時代】とか言われてるんだよな。トンデモ本を含めても第一の世界なんて四万年以上前で語られたりする話だよ?」

「なんじゃ分かっとるなら話は早いわい。

 世界各地で語られる古代の大洪水や聖人や離れた地の伝承、お互い干渉出来ない文化文明、なのに同じような人物や神々が出てくる伝承。

 多くの学者が分かっているのに認めたがらないそれらの歴史。

 古代の人々も冗談や空想で数千年も数万年も伝承を伝えてきたわけではない。かさ増しや時代による変更はあれど根本は変わらん。

 そしてうちはその数少ない伝承語り部の一族じゃよ」

「マジで?」

「マジじゃ」


 考古学大好き少年としてオカルトも含めて数多くの書物や遺跡探訪をしてきた十三。

 その世界が突然目の前に現実として現れた。

 爺ちゃんによって。

 十三は正直ワクワクが弾けそうな一方、混乱と一緒に不安が湧いてきている。そう、先の内容の《悲しくも繰り返される歴史》。

 正源の話を少しでも飲み込もうとするが飲み込めるようなものじゃない。


(ん? 急展開に忘れかけたけてたけど俺の夢の話じゃなかったっけ?)


「なぁ爺ちゃん、俺の夢の話じゃなかった?」


 十三はとりあえず混乱前の初手の状態にもどそうと夢の話に振り戻す。


「そうじゃよ、この話はお前の夢に繋がる。

 考古学好きのお前なら少しは想像はできとるかもしれんが、現実に超古代文明が存在し、優れた文明が幾度か栄えては消え、戦争があり、破滅と創造を繰り返した」

「ま、まぁ⋯⋯オカルト部類にはなるけど超古代文明は色々な物や伝承を見てるとその存在は無視出来ないとは思ってたよ」

「その失われた文明は伝承を絶やさないために人々に記憶と伝承を刻み込んだ。


 古代の先祖が目をつけたのはDNAと⋯⋯


 【ミトコンドリア】だ」


「!?」


「DNAに刻み込んだ彼らは年月と変異で失われる可能性があることを恐れ、生物の起源から手を組んでいる我らが体内の異物にしてパートナー。

 生体エネルギーの製造器、ミトコンドリアに世代と時代を超えて永遠に近い時間を伝承と共に旅してもらうよう契約した。

 1度目の生命としての進化の時から、億の時を超えて結んだ2度目のミトコンドリアとの生存契約だ。これがお前が古代の戦争を夢見る理由じゃよ」


「古代の記憶⋯⋯」

「一族により多少の個体差があるが、まぁほぼ同じじゃ」

「古代の戦争って⋯⋯夢の中で異種族やら魔法っぽいのやらやらメチャクチャだったぞ!」

「古代の文明技術、能力、それらの夢の力は過去存在したものじゃ」

「夢の中はファンタジーと科学? なのかは分からないけど確かに今にはない技術と能力が存在してた」

「継承への全ての鍵、ミトコンドリアとは【女系遺伝】する。

 常に母方に受け継がれ進化していくわけじゃ。

 なのでお主の姉妹達が婿を迎え女の子が少なくとも二人生まれるまで子を作り、一族の紡ぐ糸を増やしてゆく。 決して絶えないようにな」


 十三は自分の三人の姉妹のことを考える。


「妹達はこの先この村から出れないのか? 」

「出れないことはない、が、いずれ誰かが戻ってもらうことにはなる」

「重いな⋯⋯紡がれた年月も、夢も⋯⋯」

「すまんな、遺伝子レベルで刻まれてしまっていてはどうにもならん。子孫への遺産や希望ではなく、もはやある種の呪いじゃよ」

「呪いか⋯⋯とんでもない家に生まれたもんだ」


 今朝までの日常生活から突然の爺ちゃんからの驚愕の話の内容で、全裸仁王立ち一面焼け野原からそのまま漆黒の穴の中に突き落とされた十三は、さてどこに手を伸ばしたらいいものか? と半ば諦め気味に思案を巡らせ始めた。


「分からない事だらけだけど、結局どうすればいいんだ? ただ伝承を次の世代に伝えていけば⋯⋯ってそれは女系、姉妹達の役目か」

「お前は何故、祠のある神社に古武術道場があると思う?

 幼少の頃から毎日鍛錬してきた。それは今、この時代に来るかわからん破滅に備えてじゃ。

 男児は武を継承する」

「⋯⋯武の継承」

「お主はもう基本から応用は修めておる、後は⋯⋯」


 ゴクリ⋯⋯と十三は唾を飲み込む。


(知りたい。でも知った後はどうなるんだろう? 正源と同じく次の世代へと全てを伝える為に人生をここで過ごすんだろうか? 拒否は⋯⋯まあ無理だな、DNA囲われてるし)


「お主には祠へと潜ってもらう。ただし来月じゃ」

「来月?」

「これから先は祠とその最深部に潜ることが不可欠じゃ。が、そこへたどり着くには真呼吸ができなくば到達できん」

「え? 真呼吸ならもう出来るのになんで」

「確かに使えとるが、継続時間は現在どのくらいじゃ?」

「切らさずになら半日くらいかな」

「最深部に行くなら無意識で3日はできんと無理じゃ」

「3日!? 寝てるときは?」

「もちろん寝てる時もじゃ」

「んな無茶な!! あの呼吸どれだけ負担がかかると思ってんだよ!?」

「十三よ、真呼吸は身体能力の底上げができるが、祠までの入り口の鍵でもある。

 祠への道を開いたと同時に始まる鍛錬は今までとは別世界、別次元の鍛錬となる。心して1ヶ月入り口までの鍵を鍛え上げろ」


(幼少からの鍛錬が入り口までの鍵に過ぎない? 嘘だろ? あの過酷な訓練がただの鍵扱いなんて.)


 過去の壮絶な鍛錬を思い出して少し青ざめる。


「もう情報も心も今日はキャパオーバーだよ爺ちゃん、休ませてくれ」

「あぁ、かまわん。じゃが明日からは改めて呼吸法の鍛錬開始じゃからの」

「わ、分かったよ」


 フラフラと道場を後にし、部屋へ戻ると顔からベットに突っ込んだ。


(今日の朝、風呂に入ってからそんな時間たってないよな⋯⋯なんかもう気分的に一日は経ったような気がする)


チラリと時計を見ても一時間も経っていない。


(そういや多くの一族に伝承とか言ってたな、他にもかなりいるんだろうか?)


ふと思い出してフラフラする頭で机に向かい、ネットで検索してみる。


【超古代、伝承、繰り返し見る夢】


 オカルト系サイトや遺跡ブログ、夢占いなどがヒットしてズラズラと出てくる。目ぼしいところをクリックして見ていくが期待するものは出てこない。


(一族秘伝、伝承、まぁ公な場には情報出さないよな普通⋯⋯夢の触り程度だけ掲示板にでも書き込んでおこうかな)


 オカルト系考古学板、夢分析板に超古代のファンタジー戦争の夢を繰り返し見る旨を書き込んで昼寝、ならぬ朝寝をする。


(あー疲れた、頭が重い⋯⋯少し脳を休めないと今は超古代ファンタジー夢見ませんように)


 誰に祈るでもなく願望を込めるとすぐに意識は手放された。

 願いが聞き届けられたのか、夢を見ることなく昼まで眠る事が出来た。

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