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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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重複属性と従魔の柘榴(ざくろ)

少し溜まったので連続投稿です。

 頬に感じる冷たい地面の感触で目が覚めた月穂。

 何故地下で寝ているのか、何をしていてのか、一瞬状況が分からなかった。周りを見渡すと十和呼と美沙が話している。


「この先、月穂さんは十三と祠へ向かう事になってるけどどうにも心配なのよね。

 危険が伴うのは分かりきった事だけどそうじゃ無くて、月穂さんの適正、そして変化を見てると何かイレギュラーが起こる可能性が頭から離れないの」

「その不安は私も感じています、それに関して一つ提案がおるんですけど⋯⋯」

「何かしら?」

「私達の従魔の貸与です」

「あー、なるほど。それはありね」

「もちろん試練には手を貸さないように貸与契約は結びます。後で正源さんに相談してみましょう」


(従魔⋯⋯?)


 月穂はそこまで聞こえたところで、魔臓器の酷使によって引き起こされる二日酔いのような朦朧とした症状に顔を歪めながら上半身を起こす。


「うぅ⋯⋯気分最悪」

「あら月穂早かったわね、30分は起きてこないと思ってたのに」

「どれくらい経ったの?」

「15分くらいよ。どう?気分は」

「最悪だよ⋯⋯」

「よねー、それは何度なっても辛いわよ」

「これを何度も繰り返す⋯⋯の?」

「そうよ、経験を積んで魔素を扱い絶対量と総量を増やしていく。それ以外の方法はあまり現実的ではないわ」

「うぅ⋯⋯キツイ」

「可哀想だけど頑張ってとしか言えないわね、なんせ普通は不可能な人体の内臓器官である魔臓器の強化鍛錬。内蔵が病む感覚、何度味わっても慣れるものじゃないわ」


 これからの鍛錬の現実を知って月穂は青ざめている。


「ちゃんと寝ればほぼ回復はするんだけどそれまで待ってなんかいられないわ。少し回復するまで座学と、その後に重複属性の鍛錬よ」

「はい⋯⋯」


 気力だけで返事する月穂。それから暫く落ち着くまでの間、美沙と十和呼はゆっくりと座学を進める。


「重複属性についてだけど、本は読んだ?」

「読んでる最中だよ、余りにも内容が多すぎて⋯⋯」

「よろしい。その文字通り異なる属性を同時に重複させて発動して新たな属性を作り出す技術よ。

 この紙をみて。


雷(風地)、氷(水風)、幻(光水)、創(精無)、重(地無)、時(重光)、治癒(水精)、召喚(時創)、影(光闇)、支援(創精)、破壊(闇無)、死霊(闇創)、etc⋯⋯


 基本属性を組み合わせるもの、組み合わせて作られた重複属性にさらに属性を与えて新しい属性を作り出す多重属性などがあるわ。

 上に書いているものが全てではないわよ、化学のように様々な組み合わせで様々な属性と効果が魔法には現れるわ」

「本を読んでてあまりの数と応用の多さに気が遠くなりそうになったよ⋯⋯」

「魔法を扱うにはセンスはもちろん、頭脳が必要よ。誰にでもポンッと扱える訳ではないわ」

「うちの十三、頭は別段悪くないんだけど格闘バカだからこっちのセンスはたぶん無いわ。属性発動といいとこ初級で限界」


 知らないところで低評価を食らう十三。


「頭で理解できてれば後は実際に使って経験を積むのみ。こつちも自転車と似たような感覚かしら、覚えれば忘れない。

 でも難しいわよ、右手と左手で違う事しながら魔法陣の計算式を編み込み詠唱して発動する感じ。

 まあやってみれば分かるわ。今は魔力が少ないから属性の同時発動を左右の人差し指に灯す練習よ。得意な水と光でやってみなさい」



 ふぅーっ、と長く息を吐いて気持ちと体調を落ち着かせ、左の人差し指に光、右の人差し指に水の属性を灯してみる。


「うっ⋯⋯これ⋯⋯」

「ね、頭で分かってても難しいでしょ? 違う事を同時にするの」


 少しでも片方を灯すのに意識を費やすと片方はピクリともしない。


「うー⋯⋯っプハ!」


 結局一つの属性しか灯らなかった。


(これ、コツを掴むのに相当苦労する上に、下手したら一生コツが掴めないタイプのやつだ⋯⋯)


「コツとか教えてあげたいんだけど、自分で感覚掴むしかないのよねー。

 言葉にしても、右見ながら左斜め後ろ見て、みたいな事だから。

 ちなみに私と十和呼さんは重複属性はクリア済み、多重属性は十和呼さんだけ。その上の螺旋属性は十和呼さんでも一つのみ。頑張ってねー」


(ひたすらに自分に合う方法を試行錯誤して感覚を掴まないといけないわけか⋯⋯)


 何をとっかかりに始めていいか分からないので数をこなして鍛錬していくしかないようだ。


(これからは本当に時間との勝負、本もまだまだ読まないといけないし、時間を無駄にせずにやれる事を順番に潰していくしかない)


「あ、徹夜禁止ね。ちゃんと寝ないと魔力と魔臓器回復しないわよ」

「やっぱりダメだよねー⋯⋯分かってた」


 徹夜を敢行しようと考えてたしい。






 月穂はそこから丸二日、ひたすらに試行錯誤を繰り返しているが何の進歩も無かった。


「通常鍛錬に加えてニ日間丸々費やしたけど流石に苦労してるわね。探索開始の期限もあることだから時間ギリギリになる前に一つ先にやっておく事があるわ」

「?」

「地下探索に向けての方向性で正源さんとも一緒に話し合ったんだけど。

 月穂、あなたには高い魔法適正と数々のイレギュラーがある。そのイレギュラーに対応する為に先日話して決まったことを伝えるわ。

 貴方と十三さん双方に私達の召喚従魔をイレギュラー対応のみに使用できる制約で貸し出す事になったわ」


(あ、こないだチラリと聞こえてたやつだ、従魔って貸したりできるんだ)


「貴方には私のとっておき、【カーバンクル】の柘榴(ざくろ)ちゃん。十三君には十和呼さんの【精霊種ウンディーネ】のアクアちゃんよ」


(カーバンクルってなんだろう? ウンディーネって物語とかに出てくる魔物か水の精霊だよね確か)


「地下に潜る前の今、貸与契約を交わすのには理由があるの。

 通常、従魔が召喚に応じて従うのは契約を交わした本人だけ。さらに断られることが多々あるのが他人への貸与契約なの。

 貸与に応じて契約を承諾してくれるかは術者本人の絆と、本人と貸与契約の対象との関係性もあるわ。そしてその二つはクリア済み。

 残るは貸与契約者との絆の構築。一定期間を共に行動し、魔力を与え、相性を確認、一時的にとはいえ危険を共にするんだから彼らからすると必須事項。

 まぁ、私達も同じよね、知らない人達といきなり命の危険がある場所へ行って来いと言われても不安と恐怖しかないわ」

「うん、確かに。私も十三さんに同じ事したわ。一ヶ月後までに信頼関係を築こうって」

「しっかりしてるわね月穂、なら心配ないわ、私の柘榴ちゃんは貴方を信頼し好きになってくれると思うわよ。ねぇ、柘榴ちゃん?」

「クィ、クァー」

「?」


 何も無い十和呼の頭上から声が聞こえた。

 スゥ⋯⋯と頭上の景色がブレたと思ったらそこに小さな動物がいた。


「精霊亜種 カーバンクル原種 ガーネット(柘榴石)の柘榴(ざくろ)ちゃんよ、先に呼んでおいたの」


 20cmくらいの大きさ、白いフワフワの短めの体毛に金色の毛がファーのように首から胸元を覆っている。フサフサの太めのしっぽ、長めの三角の耳、クリッとした青い目、そして額に輝く真紅の宝石のような石。

 フェネックキツネを思わせる容姿をした柘榴が、ピンッと背中を張って月穂を見つめている。

 愛らしく神々しさすら感じるその姿に見とれそうになるが、気を引き締めて話しかける。


「はじめまして柘榴さん、美沙の娘の月穂と申します。

 お母さんから聞いてるかと思いますが、約半月後にここの地下の祠へともう一人のパートナーの十三君と潜ります。

 私にイレギュラーが現れた際に助力して頂けるそうで。もしかしたらとんでもないご迷惑をかけるかもしれませんか、全力で頑張りますので短い間ですがどうか宜しくお願いします!」


 まずはビシッと挨拶を決めた月穂。反応はどうくるだろうかと目を離さない。


 柘榴は十和呼の頭からストッと降りて月穂の方へ歩き始めた。

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