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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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夢と桶の妖怪?

 その夜、月穂は夢の続きをみていた。



†  † † † † † † † 



 ▲●■は石のソファに座っている。

 厳密にはソファは石を弾力性のある柔らかい特性に加工したもので出来ている。

 手には古代文字の模様が入ったガラスのコップを持っている。


(ふぅ⋯⋯長い探索じゃなかったからあまり疲れてないはずだけど少し体が重いなー。魔素遮断使ったからかな?)


 僅かな体の気だるさを気にしながらソファでゆっくりする。

 部屋には木や石で出来た少しオリエンタル風なインテリアが各所に散りばめられている。

 白とオリーブ色の壁がその調度品達を際立たせて上手く調和をとっている。

 手にしている飲み物からは沸々と泡が上がっている、炭酸水だろうか? 色はついていない。

 前にある丸い木のテーブルにはブドウと思われる緑の果物が置かれており、その上をフワフワと丸い拳大の石が浮かんでいる。


 ▲●■は人心地ついたところで虚空に指を動かす。するとどういう原理か眼前にディスプレイのようなものが浮かびあがる。

 浮いている石の表面にチカチカと光が流れていた、映像機器なのか。

 さらに指を動かすとその虚空のディスプレイに映像が流れ始めた。▲●■が今日、最下層で見た映像だ。



 黒髪の少年と栗色の髪の少女がキレイな自然の中を歩いている。不自然にマッチした赤い石の門が立ち並ぶ不思議な場所。

 髪が風に揺れて何かに気づいたように二人が振り返り、こちらを暫く見つめてからまた歩いてゆく。

 短い映像だ。これは一体何なのか?  何故深層にこんなものが? この映像の意味は? この世界? 外国?

 余りにも突飛な映像すぎて答えの片鱗も分かる気がしない。ただ一つ、感じた事。


(この少女⋯⋯なんだか私に似ている?)


 家族や他の一族にこのような知り合いは居ない、だとすると誰なのか?


(んー、さっぱりだよ。オババにでも聞いてみようかな?)


 んー! と背伸びをして映像を切る。


 指をくるりと回すと耳の横にピンク色の魔法陣が現れ回転する。そして暫くすると回転が止まった。と、同時に声が聞こえてくる。


「おぉ、▲●■やどうしたんじゃ?  オババに会いたくなったんかいな?」


 と、しわがれた優しい声が聞こえてくる。


「こんにちは、オババ。元気してる?  私はいつでも会いたいよー」

「優しい子じゃなー、オババはいつでも持っとるよ。して、どうしたんじゃ?」

「あのね、今日●▲■の調査していたダンジョンの最下層へ再調査で同行してたんだけどね、そこである映像を見つけたの」

「ほう、最下層で映像じゃと? 珍しいの」

「そうなんだよ、そして内容も変わっててね、ちょっと機密障壁かけて送るね。見た感想を欲しいの」

「なるほどな、分かったちと見てみるわい」


 恐らく三回ほど再生したのだろう、五分ちょっとくらいで声が帰ってきた。


「なんじゃこれは? よーわからん土地のカップルの映像かの? 意図も重要性も全く分からんわい。なんでこんなもんが最下層に⋯⋯」

「やっぱりオババでも分かんないか」

「メッセージ性もないただのカップルの風景映像にしか見えんわい。場所や服装や持ってるものは気になるが、儂の知るものはないの」

「どうしよ⋯⋯これ」

「まぁ一応は最下層から出てきたものじゃ、協会に報告しておくのが吉じゃろう」

「だよね、うん、分かった。後で報告だけ行ってくるよ、ありがとうねオババ、大好き! 近々遊びにいくねー」

「待っとるぞー、いつでもおいで」


 ブンッと耳元の魔法陣が消えると声はしなくなった。


(協会か、面倒くさいよー⋯⋯でも行くしかないよね)


 ▲●■はあまり協会が好きではないようだ。飲み物を飲み干して外へ出かけ準備をしている。


(あっ、戦闘用の服のままだ⋯⋯ま、いっか、このまま行っちゃお)



† † † † † † † †



 月穂はゆっくり目を開けた。


(そうか、なんだか気になってたけどあの人、私に似てるんだ。直接のご先祖様なのかな?

 後やっぱりあの映像⋯⋯私と十三さんだよね。

 なんで超古代の映像に私達が? ただ夢と現実と混ざっただけ? 今までと夢の質は変わってない。

 普通に見る夢とは違ってハッキリと鮮明に覚えている、現実のようなあの感覚⋯⋯)


 月穂は考えれば考えるほど分からないくなっていった。

 自分達が過去の人物に見られている理由、それもつい数日前のワンシーン、夢の中の自分も困惑していた、何故⋯⋯と。


(夢の中の自分も相談していたし、後で正源さん達に聞いてみよう)


 まだ夜中だ、もう一度眠ろうと目を閉じる。それ以降の夢は今日はもう見なかった。





 翌朝、十三は昨日の夜にふと思い立って気になるある物を持って道場に来ていた。

 それはお香、竹の香りのするやつだ。

 月穂の鍛錬方法、ヨガ in 湯気。

 画期的な皮膚呼吸による真呼吸の練習方法だが、風呂でしか出来ない。それを何とか解決してどこでも出来ないかと考えたのがこのお香である。

 体の周りに数本囲むように立てて上半身裸で皮膚呼吸トレーニングを行う。

 うまくいけば煙の動きが肌に吸い付くような動きをするはず。

 我ながら中々良いアイデアだと自画自賛する十三は早速お香を焚き始めた。

 準備できたところで中央に座り、ヒュオッ! と真呼吸をする。


 瞬間、大量の竹の香りがする煙が肺に吸入され盛大に咳き込む。


「ガッハ! ゴホゴホゲホ! ッグホ!」


(バカか俺は、皮膚呼吸のことしか考えてなかつたから煙が肺に入る事を忘れてた⋯⋯)


 激しく咳き込んた十三は息も絶え絶えに涙を流しながら倒れこむ。


(くそ⋯⋯名案だと思ったのに、⋯⋯いやこれからだ、まだ諦めないぞ、考えろ十三!)


 月穂のトレーニング方法は正しいと思う。認知出来ない皮膚呼吸を物理的に可視化してイメージトレーニングする。

 ヨガによるその呼吸法は場所限定なのは確かに効率が良くない。それを補おうと煙を湯気に見立てたトレーニング方法は良い着眼点だが詰めが甘かった。


(煙はアウト。他に代用出来そうなのは⋯⋯んー、あぁ、アレならいけるかな)


 十三は思い立って村に一軒だけ、魚や肉を街から仕入れて村の食を豊かにしている生鮮食品と酒の店《万津屋》に電話をかける。


(あそこならアレがあるはずだ)


「あー、おっちゃん十三だけど。あのさ、お願いがあるんだけど⋯⋯」

「⋯⋯へ? 何につかうんだあんなもん?まぁ余ってるから構わんが」

「鍛錬だよ、鍛錬」

「今から二件配送するからついでに持ってってやるよ」

「流石おっちゃん! 男が出来てる人は違うなー! ありがとう!」

「おだてても何もやらんぞ、礼はいいから出来るものなら俺の嫁候補でも見つけてこい」

「難易度高すぎるよそれ。じゃあ道場にいるから着いたらクラクション鳴らして」


 家に戻って三十分後、クラクションが外で鳴るとすぐに神社の入り口のほうへ向かう。


「おーい、持ってきたぞ十三」


 そう言って地面に三つほど発泡スチロールを置いて立っている。


「ありがとおっちゃん! 助かるよ! これで鍛錬が進む」

「何かわからんが頑張れやー、次の配送があるからいくわ、じゃあな」

「今度手伝いにいくよ!」

「おう!」


 走り去る車に手を振って見送ると箱三つを一気に持ち上げて道場へ向かう。


(よし、あとは納屋にあるあの馬鹿でかい木桶とトングと水か、あ、小さい桶もいくつかいるな)


 ガタガタと納屋を物色し、お目当てのものをすべて見つけると道場へ運び込んだ。


「よっしゃ! できた!」


 人が座って入れるほどの巨大桶に三つの小さい桶を入れる。その小さい桶にもらってきた発泡スチロールの中身をトングで入れ、水をかける。

 するとすぐにパキパキと音を鳴らしつつ白いモヤが流れ始めた。

 そう、ドライアイスだ。


(これなら肺に入っても大丈夫な上、風呂以外でもできる。さらに涼しい! フハハハ! 勝った! 天才だ!)


 そこに短パン1枚で入り座禅を組む。


(おー、ヒンヤリ感最高! 冷房いらずの夏になるくらい肌から皮膚呼吸で吸い込んでやる!)


 道場にポツンと佇む巨大桶から冷気がモヤモヤと出ている異常な光景を見て、様子を見に入ってきた春菜が「ヒッ!」と声を漏らした。


(よ、妖怪でも産まれようとしてるの⋯⋯?)


 あまりの異様さに近づけないでいると


「へーップシ!」


 と聞き慣れたくしゃみが桶から聞こえた。


「そんなとこで何してるのバカ兄⋯⋯.」

「あ、何だいたのか。見ればわかるだろ見れぱ、鍛錬だ」

「⋯⋯病院行ってこい」


 春菜はそのまま踵を返して行ってしまった。


(風邪の心配してくれたのか? 優しいとこあるな春菜も、今度小遣いをやろう)


 バカ兄呼ばわりしたのに何故か評価が上がった朱莉はどう皆に報告したらいいか歩きながら真剣に悩んでいた⋯⋯

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