表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
15/120

ビームと湯気と魔法概要

 その日の鍛錬は終わり、夕食後のヨガタイムが始まろうとしている。

 先程まで先日と変わらないワイワイと賑やかな食卓だった。


「月穂さん目が光ったんだって!? 目からビームとか? ふっといビームとか出るの?」

「ビームが出せるとなると⋯⋯魔導機械天使? いやオートマタ? メイド機能はありますか!?」

「えー、ロボ系だと実写特撮の現実味が遠のくなー」


 朱莉と春菜、そして那波がそれぞれのテンションで発言する。


「ビームなんかでません! でないよねお母さん、そんな魔法ないよね?」


 優しい目で微笑み月穂を見つめる美沙。


「え? 出るの? 目からビーム出るようになるの私? お母さん! ねえ!? あの! 十和呼さん出ないですよね!?」


 十和呼は同じように優しく微笑み返す。


「うわぁああ! ヤダよそんなのー! せめて指にしてー! ロボはイヤだよー!!」

「全く騒がしい食卓じゃわい」


 気にもせず黙々と食事をする正源。その横で目をキラキラさせる十三がいた。


(魔法ロボ⋯⋯カッケー!! 月穂さんカッケーっす!!)


 段々自分のキャラが壊れていくような気がすると同時にこっちがもしかして素なのかと思い始める月穂、だいぶ疲れているのかもしれない。


 食事を終えてしばらくし、道場へ向かうと十三はすでに座禅を組んでいた。


「お待たせしました、どうですか? 十三さん、感覚掴めそうですか?」


 十三から皮膚呼吸のさらなる詳細を聞く前に聞いてくれたのでそのまま質問することにした。


「いえ、残念ながらまだ何も掴めてないです。月穂さんは真呼吸始めてからどれくらいで皮膚呼吸のコントロールに辿り着いたんですか?」

「んー、真呼吸ができるようになってヨガを始めて、最初は肺への負担が凄いじゃないですか、だから喉とかにも良いかなと思ってよくお風呂とかでもやってたんですけど⋯⋯」

「ふむふむ」

「熱湯出してサウナみたいにしてやってたんです。それである日、湯気の動きが皮膚にも吸い寄せられるようなのが見えたんです。

 たぶん真呼吸で活性化してたから目に見えるほどの動きが出たんだと思います。それでふと人も皮膚で呼吸してるんだったなーと思って」

「ふむふむふむ」

「湯気が肌に吸着するイメージを強く持ちながら真呼吸の練習を繰り返してたら、一月半後くらいした頃、スッと肌に入ったんです、湯気が。

 多分ですが水分自体は入ってないですけど吸気に引かれて肌に付いたんだと思います」

「⋯⋯」

「そこからは結構早かったです、一度覚えたら忘れないみたいで。真呼吸の肺負担が同時にガクンと減りました」

「目に見える動きをするものでイメージ、湯気か⋯⋯ではこれからはお風呂でやってみます!」


 それからは周りの物を肌が吸着するイメージで真呼吸の鍛錬を行うことにした。


(よし! 絶対に追いつくぞ!)


 心に強く誓いながらヨガを終え、明日に備えて少し早いが眠ることにした。

 月穂といえば、ブツブツと、


「あー⋯⋯目からビーム、やっぱり嫌だなー」


 と言いながら部屋へと帰って行った。相当イメージが嫌なんだろう。そんな後ろ姿を少し不憫に思いながら十三も部屋へと帰った。






 翌朝、いつも通り目覚まし前に起きた十三は朝風呂に向かう。熱湯を出して湯気を充満させてから真呼吸を発動する。一気に肺に湯気が入り込み激しく咳き込む。


(月穂さん、湯気でむせかえらなかったのか? できれば教えておいて欲しかった⋯⋯)


 何とか咳き込みも収まったところで皮膚に神経を集中してみる。が、予想通り何の変化も無い。


(いきなりできるわけないよな、集中! 集中!)


 薄っすら目を開けながら腕の湯気を見つめ続けながら継続したが、やはり変化は何もなかった。

 その後、朝食へとキッチンに向かうと月穂と十和呼が既に座っていた。


「おはよう」

「「おはよう」」


 月穂はいつもと少し様子が違い笑顔に輝きが無い。心配になった十三が尋ねる。


「月穂さん大丈夫ですか? ちゃんと寝れました?」

「はい⋯⋯大丈夫です」


と笑うがやはり違う。


「あら、ビームの事が気になってるのかしら?」


十和呼が聞いた瞬間に月穂がビクリと震える。


「ごめんなさい、そんなに気になるほど嫌だったのね。安心して、ちゃんと覚えてコントロールすれば目から出さなくても済むわ」

「本当ですか!? 頑張ります! その為ならさらに座学頑張ります!」


 月穂が半泣きになりながら安堵の笑顔を灯す。これをキッカケに月穂の座学のスピードは格段に上がりそうだ。その横で十三が新たな目標を掲げる。


(目からビームは俺の物だ! 絶対に習得する! やるぞー! やってやる!」


 午前の型の反復を終え月穂は座学に入る。目は今までになく爛々とした意気込みに包まれている。


「月穂⋯⋯目が怖いよ」

「早く始めるわよお母さん! 時間が勿体無いわ! 必ず魔法をコントロールする! 全てを理解するわ!」


 鬼気迫る意気込みにたじろぐ二人。目からビームってそんなに嫌な物なんだと周りの認識も変わりそうな勢いだ。


「わ、分かったわ、アルファベットは覚えた?」

「完璧!」

「魔象形文字の基礎は?」

「完璧!」

「あなた、1日で基礎全部詰め込んだの!?」

「すごっ! 他言語の基礎を1日で⋯⋯ビームを嫌がる力ってすごいのね」


 十和呼は認識を改めようと思った。


「じ、じゃあ最初の段階はクリアね。次のステップよ一気に行くわよ、ついてきてね。

 まず、文字が分かれば陣を描けるわ、陣は魔法をさらに効率よく的確に補助する指示書と計算式。

 魔素は扱う者の持つイメージに強く働きかけるの。物理ではなく精神、気は物理側、魔素は精神側。

 故にその特性からイメージ創造、形成に特化しているわ。その特性を利用して魔素で陣をイメージし形成して魔法の直前に発動させるの。

 古代の神や賢者と言われる人達が魔法の汎用性と効率化、強化を目的に創り上げたと言われているものよ。

 魔法のイメージと同時に陣を形成して完成したら陣を発動。場所はどこでもかまわないわ。手、足元、眼前、頭上、背後。イメージを描く非物理だから空間に直接描けるわよ。

 最初は一番発動のイメージが強い場所で練習なさい。出来うる限り自分に近いほうが安定するわ」

「精神、イメージ⋯⋯」

「では、初級からね。

 地下で使った《浮遊》あれは体を少し浮かすだけの簡単な初級魔法。魔法の発動前にイメージと詠唱をしたのは覚えてるわよね。

 あ⋯⋯詠唱の説明を忘れてたわ。

 詠唱はイメージの方向性の固定をする為の補助よ。意思と言霊で目的の魔法を正しく発動させる為のプログラムコード」

「コード⋯⋯」

「そうね、言語や内容は実は何でも構わないの、必要なイメージが固定されるものならね。なんなら歌や動作でもOKよ。

 効率を考えると動作は非効率、歌は詠唱時間が長すぎるからあまり向いてはいないわね。

 私達が使っている詠唱は昔から研究され継承され、効率化が確立されたものを使っているだけ。

 もしあなたが他に自分に合う言葉や単語、方法を見つけたならそれでも全く構わないわ。

 分かりやすく言うと、アメリカだと同じ魔法でも詠唱は古代語か英語よ」

「自分のイメージにあったものか⋯⋯」

「まぁ、最初は頭も感覚も白紙の状態だから既存の日本語のものを使って練習なさい。

 かなり難しいけれど、将来もし古代語で発動させることができれば魔法の威力は格段に上がるわ。

 古代語は魔法言語とも呼ばれていて魔法の為に作られ編み込まれた神々の作った言語、魔素と融合する言語と言われているわ」

「イメージ、詠唱、陣⋯⋯魔法言語⋯⋯

 陣の大きさとかは関係あるの?」

「絵と一緒よ、大きい方が描きやすく分かりやすいけど大雑把になることが多いし魔素の消費が少し増えるわ。

 かといって小さく描くと緻密に細かく描かないといけないから時間がかかり、収まらずはみ出したり重複したりするの。だから自然と皆同じようなサイズ感覚になるわ。

 絵の得意な人はさらにコンパクトに分かりやすく、描く時間も短縮される。まあ、人によりけりだけど次第にそのサイズ感はつかめてくるわ」

「絵を描くイメージか、ちょっと楽しそう」

「月穂そういうの好きだもんね」

「うん、色々やってみたいな」

「よし、前向きな意見が聞けたところで始めるわよ、魔法の種類と定型文」


(早く覚えて色々試してみたい! 頑張るぞ!!)


 目の前に広がる新しく無限の可能性がある力への挑戦に、月穂は心が震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ