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古都

プライベートな事情により投稿が滞っておりました、申し訳ありません。

 正源(せいげん)による十三(じゅうぞう)月穂(ゆえ)の稽古、気と気のぶつかり合う音と衝撃が響いていた道場が静かになったと同時に正源は2人に尋ねた。


「お主ら、これまでに何回ここの祠に潜った?」

「何回だろ?」

「数えてないけど10回は越えたくらいかな?」

「この後はまた潜るんじゃろ?」

「ああ、そのつもりだけど何かあるの?」

「そろそろ他のダンジョンの経験も積んでおいて良い頃かと思っての、ワシは何も聞いとらんが『夢袖(ゆめつぐみ)』からはなんか指示はきとるのか?」

「いや何にも」

「ならここはワシ等に任せておいて京都に暫く行ってこい、あそこはえぇ修行になる」

「京都⋯⋯」


 十三は陰陽師の総司に負けた事を思い出す。


「紫暮さんの所ですか?」


 ほぼ答えの分かっていた疑問を月穂が尋ねた。


「そうじゃ、伏見稲荷の祠じゃ」

「向こうにある組織の支部で食事や寝床はあるから話を通しておくわい」

「京都まではどうやって?」

「迎えをよこしてもらう」

「迎えっていうと⋯⋯総司の時の例だと⋯⋯ヘリ?」

「じゃろうな」

「すげー! 初めてだよヘリ!」

「私は少し怖いな⋯⋯」

「大丈夫だって! なんせヘリだぜヘリ!」

「説明になってないし大丈夫の意味がわからないよ」

「日時が決まったら伝えるわい」

「オッケー分かったよ爺ちゃん」

「⋯⋯大丈夫かなー」


 自分達がトラブル体質なのを理解している月穂は楽観的な十三と正源を見て少し心配になった。


 その後ダンジョンの定期調査に潜ってから夕食時、正源から連絡が来たと伝えられた。


「京都の件じゃが明日の朝迎えが来るぞ」

「早っ! 数日後くらいだと思ってたよ」

「え、お兄ちゃん達京都行くの?」

「あぁ、修行だ修行」

「良いなー京都! 私も都会行きたーい!」


 朱里が頬を膨らませて羨ましがっている。


「遊びに行く暇なんぞありゃせんぞ、向こうの祠にほぼ潜りっぱなしになるんじゃからの」

「え? 何それ聞いてない⋯⋯潜りっぱなし?」

「修行じゃからのー」

「潜りっぱなしって⋯⋯何層まであるんですか京都の祠?」

「知らん」

「え?」

「最下層は過去の記述の中でも確認されておらんのじゃよ」

「今は何層まで確認されてるんですか?」

「んー、確か50階層ちょっとじゃったかな?」

「ごじゅ⋯⋯」

「まぁ頑張ってこい」

「⋯⋯」

「お土産よろしくねー」


 春菜が投げた言葉は2人の耳にもう入っていなかった。




 翌日、朝食を済ませて京都への準備をし終えるとそれを知っていたかのようにヘリコプターが迎えに現れた。


「しっかり学んで来るんじゃぞ」

「「はい⋯⋯」」


 新しいチャレンジ、2人ともダンジョン探索は嫌いではない。

 だが知らないダンジョンに潜りっぱなしになるだろう未来を考えると2人共どうにもテンションが上がらない。

 皆に見送られながら荷物を担いでヘリコプターに乗り込むと直ぐに離陸して京都は伏見稲荷へと飛び立った。

 気はあまりノっていなかった十三だったがヘリコプターの乗り心地と景色に直ぐにも上機嫌となる。

 月穂は自分でコントロール出来ない浮遊感にほぼ目を瞑って十三のハイテンションに相槌を打っていた。

 ヘリコプターは四国の深い山々を見下ろし、鳴門大橋を越えて大阪城を通り目的地京都へと到着する。


「月穂、月穂! 着いたぞ」

「え、あ、⋯⋯うん」


 降りると月穂はグラリとフラつく。


「大丈夫か?」

「大丈夫⋯⋯フワフワしてるだけ」

「まだ飛んでるみたいだよな! あー楽しかった!」


 月穂は浮遊感を思い出さないよう質問に答えず荷物を持ち直して前方に見える神社へと歩き始めた。


「お邪魔しまーす、十石神社からきましたー」


 すると目の前にあった門の影からズルリと顔に札を貼った和装の少女が姿を現した。


「お主らが気仙様のとこからの客人か、付いて来い」


 くるりと後ろを向いて足を動かさずに滑るように進み始めた。


「人⋯⋯か⋯⋯?」

「分からない⋯⋯魔素は感じない⋯⋯見た目の年齢なのかも微妙だね」

「とりあえず付いていくしかないか」


 2人は得体のしれない少女の後を歩いていく。

 少し進むと赤い鳥居連なって見えた。


「神社の建物の中に鳥居?」


 荘厳な鳥居を潜って歩いていくといつの間にか庭のような所に出ていた。


「神社の中?」

「外に出たのかな?」

「社の中であり外」

「?」

「中なのに外? なぞなぞかな」

「連なる鳥居を潜ってきたろう? ほぼ面で異界へ繋がる結界や次元の隙間と違って潜る毎に徐々に異界へと段階的に繋がるトンネルの様なものだ」

「そんなのあるんだね」

「なんでそんな作りになってるんだ?」

「単純にスペースの問題、施設や門徒が多いから」


 遠くには城、通りには様々な店や住居、灯籠、行灯、桜が並ぶ大通り。

 気がつけば辺りには時代劇を思わせる古都の風景が広がっていた。


「キレイ⋯⋯」

「時代劇の世界そのまんまだ」


 2人は懐かしさすら感じるような古都の風景に魅せられていた。


「美しかろう? 全ては紫暮様の力のなせる技」

「どうすればこんな事が出来るのか想像もつかない」

「ピッタリ合う言葉か見つからないね」

「ここは『裏京都』そこを曲がれば宿舎だ」

「裏⋯⋯京都⋯⋯」


 美味しそうな団子の置いてある茶屋の角を曲がると竹林道があり、その奥には立派な旅館が佇んでいた。


「うーわ、高そうな旅館⋯⋯」

「気仙様の関係から金銭は取らない」

「金額聞くの怖いな」

「気にするところではない、さあ中に入れ」


 2人が玄関に入ると案内してくれた札をつけた少女が8人、通路の左右に並んでいた。

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