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Los † Angels 【AI魔石とミトコンドリア】  作者: Amber Jack
第一章 紡がれた夢の祠へ
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魔法天使?

 月穂は今見ているのが現実なのかどうか一瞬で分からなくなった。


「お母さん手に狐が⋯⋯可愛い⋯⋯

 じゃなくて火がついてるよ! 熱いでしょ? 危ないよ?

 あれ? お母さんどうやって⋯⋯あれ?」


 先程からの情報過多、思考停止、頭の中はもう大混乱である。


「そうじゃったな、美沙さんは契約者としていくつか従魔がおったの」

「えぇ、久しぶりですよ召喚したのは、ふふっ」

「んー、じゃあ私は違うのを」


 と、十和呼が少し離れて目を瞑る。


『星央との楔を解き放て⋯⋯《天翔》』


 同じく青く光る陣が足元に表れたと思ったら足裏に収束し体が浮き上がり、十和呼の体は1mほど浮いたところで止まっている。

 そのまま身体を横たえてリラックスしているような体勢をとり浮遊している。


 月穂は時が止まったかのように浮遊する十和呼を見つめる。

 そんな月穂を他所に母親二人は魔法なんて普通の現象かのように話し出す。


「色々と便利なんだけど魔素のない外だとほぼ使えないのよねー」

「ですよね、たまにふとした時に使えたらと思うときはありますよね」

「まぁ、使えるようになった時点で外は異形、異能で大混乱でしょうけど」

「たまにでいいから焔ちゃん達に会いたいんですよー」

「確かに自分の従魔達には会いたいわねー。後でまた呼んじゃおっと」


 十和呼と美沙が異次元な会話でキャッキャしているのを月穂はただ呼吸をするのも忘れてみるだけだった。


「気持ちは分かるがこれから月穂さんの鍛錬じゃからその後にしてくれ。

 さて、月穂さん」

「はい……」


 上の空で焔狐を見つめながら返事をする。


「今見ているのが現実じゃ、魔素を使ったいわゆる魔法というやつじゃよ。

 月穂さんにはこれからまだ身体に備わったことのない力を大きく取り込み、循環させ、行使してもらう。

 まずはその取り込みからじゃな。呼吸法を使える時点でそう難しいもんではないが、取り込んだ場合、この間話をした魔臓器が体内で覚醒する。

 丹田と同じく現代科学では通常まだ認識されておらん臓器じゃ。

 初めて使うときには違和感かあるかもしれんし、文献では稀に副作用がでることがある。

 とあるが命に関わるものではないので安心しなさい。

 ただ、異変を感じたらすぐ言いなさい」

「⋯⋯分かりました」


(違和感、副作用⋯⋯安心できる単語じゃないよ⋯⋯)


 少し不安を覚えるが実際に魔法を使っている美沙や十和呼もいるので心強いのは心強い。


「では少し門を開くぞ、ここに静かに漂っているのは魔素の漏れカスじゃ、まずは本物を全身で感じてみなさい」


 正源が中心の三角錐に手を触れると天井に法陣が現れ、そのまま下に降りてきた。方陣の通った後には見えているのか見えていないのか分からない薄暗い空間がある。

 地下への入り口なのだろうが入れそうな気がしない。

 その空間から少し冷たく重いほのかに甘いような匂いの空気が流れてくる。


「分かるか? 冷気のような薄甘い空気が」

「はい、これが魔素⋯⋯何だか知ってるような味がする空気です」

「うむ、それが魔素を含んだ空気じゃ。まだここには満ちておらんが少し経てば満たされる。

 それまで真呼吸は止めて普通の呼吸に戻しなさい。月穂さんの魔臓器は前回の漏れカスの魔素を取り込んだことで半覚醒しておる、これからはゆっくり体内になじませるんじゃ」


 言われて真呼吸を止め、ゆっくりと息を吸い直して魔素を体内に取り込んでゆく。


(あ、なんか目の前が少しチカチカしてきた、なんかキレイ⋯⋯)


「どうじゃ? 何か違和感はあるかの?」

「目の前が少しチカチカしてます」

「他には?」

「今は他には何も変化はないです」

「ではこのまま半刻程様子を見るぞ、その間に次の手順の説明じゃ」


 ひとまず大きな変化は無かったので少し落ち着いた月穂は軽く頷いて説明に耳を傾ける。正源は月穂が少し落ち着いたのを見て話し始める。


「次の手順は呼吸を真呼吸に戻すこと。 取り込む魔素の量が桁違いに増えることによって短時間で強制的に覚醒へと導く。

 体内の細胞、内臓、丹田、全てに魔素が充填され、眠っていた魔臓器が覚醒し魔素が循環を始める。

 月穂さんはその取り込んだ魔素が体の中に行き渡り流れるイメージを強く持って真呼吸を保ち続けなさい。次第に馴染んでくるはずじゃ」

「真呼吸⋯⋯循環⋯⋯」


 目を薄く開けたまま身体の隅々に酸素が行き渡るイメージを保つ。少しチカチカが増えた気がする。そのまま意識を集中してゆく。


「うむ、そのまま続けなさい」


 月穂を待つ間、十和呼と美沙は召喚獣の炎狐と戯れていた。

 30分たった頃、正源は月穂に声をかける。


「頃合いかの。月穂さん、魔臓器は眠りからほぼ覚醒した状態にあるはずじゃ。真呼吸へと切り替えなさい。

 大丈夫、儂らが周りにおる」

「はい、いきます⋯⋯」


 ヒュオッ!


 ためらい無く真呼吸へと切り替えた月穂。肺に薄甘い魔素を含んだ空気が一気に充満する。


 目の前が一気に銀色のチカチカで包まれる。

 お腹の下が熱いが嫌な感じはしない、むしろ気持ちが満たされる感覚、真呼吸だけの時よりも身体が充実している感覚だ。

 そのまま循環をイメージする。

 下腹から足、つま先から上へ、手の指先を通って頭へ⋯⋯一周ぐるりと巡ったイメージができたその瞬間⋯⋯


 バチッ! と音がなった。


「月穂!?」


 美沙が驚いて声をあげた。月穂を止めようとした美沙を正源が止める。


「待つんじゃ!」


 月穂の身体を少しずつ青銀の湯気が覆うように徐々に変化が現れ始める。


 バチッ! とたまに弾ける音と蒸気。


 それに伴い月穂の栗色の髪の毛が色素を失うように銀色に染まる。

 青い輪郭を持った茶色い瞳はその青色に侵食されていく。色の変化が収まると同時に蒸気も少しづつ収まってゆく。


 そこに立っているのは銀髪、碧眼、青銀のオーラを纏った月穂。

 皆が驚きに目を見開いて見つめている。


 月穂が口を開く。


「凄い、世界がキラキラしてる⋯⋯なんだか懐かしい。そして少し⋯⋯悲しい⋯⋯?」


 月穂の目からは涙が零れている。


 懐かしさからなのか、破滅を経験した先祖の記憶からなのか、月穂にも分からないまま涙は零れる。


「月穂!? 大丈夫なの? 月穂なのよね!?」


 余りの変化に美沙が狼狽える。無理もない、娘が目の前でいきなりオーラを纏った銀髪碧眼に変わったのだから。


「大丈夫だよお母さん、私は月穂だよ。何をそんなに驚いてるの?」


 自分の容姿の変化に気付いていない月穂がキョトンとする。


「だってあなた髪と目の色!」

「何言ってるのお母さん、色ってなにが⋯⋯ッ!?」


 月穂は自分の髪を指ですくって動きが止まる。


「え? 何これ?」


 鏡が無いから目の変化はは見れないがセミロングの自分の髪が銀髪に輝いている。


「あな本当に大丈夫なの? 何か身体に異変はない?」


 美沙が心配そうに尋ねてくるが、今の所は心身に不調はない、むしろ気分が良い。

 今まで足りてなかった身体の一部が今満たされた気分だ。


「本当に大丈夫だよ、むしろ気分が良いくらい」


 よく見ると爪の色も少し銀色に変色している。自分では見えないが眉毛やまつ毛もだ。


「ちと驚いたが、身体に不調が無いならええじゃろう。まさかこんな副作用がおこるとは⋯⋯」


 正源は何かしらの副作用が現れることを念頭に入れていたものの、ここまでの変化が現れるとは思ってもいなかった。


「月穂さん⋯⋯あなた⋯⋯

 魔法少女だったのね」


 ポツリと十和呼が呟く。


「「「え!?」」」


 三人が思いもかけていなかった単語に固まる。

 キラキラオーラを纏って変身、カラーチェンジ。

 言われてみればそう見えないこともない。コスチュームと武器がないだけだ。


「え?⋯⋯え!?  私そんなんじゃないよ! と思う⋯⋯」


 この変化を見ると完全否定も出来ない。


「ねえ! 定番の可愛いマスコットはどこ!? 隠さないでいいのよ月穂さん!」

「か、隠してないです!」


 どうやら十和呼は魔法少女系アニメが好物なようだ。


「残念⋯⋯いや、これからかもしれないし⋯⋯」


 ブツブツと思案しながら妄想を膨らまそうとしている。そんな十和呼はそっとしておこうと生暖かい目で正源は見ながら事を進め始めることにした。

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